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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

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二年生

そんな話をしていると静希の携帯に雪奈からのメールが届く


内容は静希の予想通り、先輩方の話を聞く内容に関してだ


今日は何人か都合が悪いそうだが、明日ならば放課後に時間をとれるとのことだった


その旨を鏡花に伝えると安心したのか自分が調べてきた資料を眺めてため息をついていた


「話を聞くにあたって状況をできる限りわかりやすくした方がいいかもね、樹海にいる奇形種の数とかわかればいいんだけど」


「それがわかりゃ苦労しないよ、俺らの進行方向も戦闘の有無も何もかも全部護衛対象が決めるんだ、はっきり言ってできることと言ったら装備点検と情報収集と気構えくらいだろ」


事実静希達が今できることは相当限られている


奇形種の巣窟に向かおうというのにできることは本当にない


静希はすでに装備の換装作業でかなり忙しい放課後を送っているのだが、ほかの班員は前準備と言われてもほとんどないに等しい


唯一明利が種をいくつか戦闘用のものを用意する程度で、陽太と鏡花は身一つで戦闘が可能だ


金曜日を含めて土曜日曜と三日間で行われる探索、どれほど戦闘が行われるかはわからないが、静希がいつも装備しているような数では全く足りない


貴重品や日用品の部分を削ってでも武装を詰め込む必要がある


単騎ならばまだいいのに、どれだけ戦うかわからないというのが心労を大きく、重くさせていく


「そういえばさ、雪奈さんって奇形種討伐の記録保持者なんでしょ?何体くらい討ち取ったの?」


「さぁ、たぶん本人も数えたことないだろ」


雪奈の性格と前衛としての性質上、そんな考えを持った状態で戦闘に挑むような事はしないということがわかっているだけに、カウントは他の誰かが行っていたのだろう


「複数奇形種と戦闘経験があるのって・・・雪奈さんが群れの観測についていった時なのかな」


「たぶんそうじゃない?もしかしたら他にもあるかもだけど、今にして思うと恐ろしいわね・・・」


静希達一班も奇形種との戦闘経験が少ないというわけではない


東雲のあの状況を奇形種とカウントするならば、合計で五回の戦闘経験があることになる


東雲風香、漂流した島で二回、六月のザリガニで一回、その実習でさらに一回


一年生でこれだけの戦闘経験があるというのは珍しいと他の班の人間から言われたものだ


今にして思えばかかわった実習のほとんどが戦闘を行うものばかりだ


唯一ダムの解体が戦闘のなかった回でもあるが、そう考えると静希達の班はほかの班に比べて実習の数が二回ほど多いことになる


一番危険な実習を回されるのも致し方なしということだろうか


そんなこんなで静希達はどんな話を聞けるのだろうかと思いをはせながらその日の授業と訓練を終えることになる


翌日の放課後、生徒の帰った二年生の教室に静希達は集まっていた


「おぉ静、待ってたよ」


教室の中にはすでに机を固めて座っている雪奈たちがいた


「遅れたかな?時間とってもらったのにすいません」


「いや構わん、というかお前たちは相変わらず面倒事を背負わされているようだな」


熊田が本当に気の毒そうにそういう中、静希は数度見たことのある人物が全員の顔を興味深そうに見ている


「とりあえず・・・まずは自己紹介からしようか、この子たちが私と熊田が担当した子たちだよ」


雪奈の紹介に一班の人間が全員頭を下げながら自分の名前を告げる


二年生というだけあってある種の圧力があるその人物、大柄の男子生徒が全員を品定めするように見つめている


「えっと・・・五十嵐静希君は初見じゃないよね、改めまして井谷紅葉だよ、よろしくね」


雪奈の話題にも出ていた女子生徒は朗らかに笑いながら緊張をほぐすかのように明るい声を出している


「こっちは初めましてだな、この班の班長の藤岡夏樹だ、噂には聞いているが・・・そこまですごい奴らには見えないな」


どのような噂があるかはわからないが、どうやらかなり尾鰭がついているようだ


こちらとしたらうれしい反面どう反応したものかと悩んでしまう


一番の大柄で班長ということは、と静希と陽太の頭の中にある情報が浮かび上がる


「あぁ・・・あなたが風呂を覗いた人っすか」


陽太がそう告げた瞬間に空気が凍る


「あ・・・あはは・・・何で知ってるんだ・・・?」


「熊田先輩が教えてくれたっす」


空気を読まずにあっさりとリークすることで藤岡の視線が熊田に向かう


飄々としてはいるものの、はっきり言って身内を売ったようなものだ、その視線には怨嗟にも似たものが込められているのがはっきりとわかる


「くくく・・・いや・・・あれは傑作だったなぁ・・・雪奈に思いきりやられてたもんね」


「あれはこの馬鹿が悪い、自業自得だよ・・・初めて戦った能力者がのぞき相手じゃ笑い話にもならないっての」


そういえば雪奈が怒って能力を使って成敗したと言っていた気がする


雪奈を怒らせてはいけないということなのだが、さすがに能力を使っての喧嘩はご法度だ


喧嘩というより制裁なのだろうが、それにしても雪奈の攻撃に耐えられるとは相当強固な能力の持ち主である


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