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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

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訓練と適材適所

アラームが鳴ると同時に二人は射撃をやめて銃をテーブルの上に置く


表示される得点を見ると明らかに明利のほうが高評価を得ている


静希が近距離から中距離に対しての小銃での射撃訓練に対して、明利は遠距離の狙撃訓練に終始している


もとよりここぞという時の集中力は高かったが、こういった場でもそれは発揮されるようだ


自らの能力による索敵と、それを利用しての狙撃ができるようになれば明利の戦略的な能力は飛躍的に高まるだろう


「かぁ・・・また明利に勝てなかったか」


「えへへ・・・でも前やった時よりずっと点数上がってるよね」


お互いの点数を見比べながら自分たちの成長を喜ぶのだが、静希からすれば少しだけ複雑だった


明利は何かを傷つけるのを極端に嫌う


ただ単にそういった技術を今まで使うような場面が少なかったということもあるのだが、明利自身の性格が優しすぎるというのもある


同調系統というだけあって誰かが傷ついているところを癒すことが多いために、その痛みがどのようなものであるかを正しく認識している


それ故にそれを与えることを極端に恐れるのだ


そんな明利が銃の扱いの才能があるというのが、何とも皮肉なものだった


「そういやお前ってまだ医学の勉強してるんだろ?いつまでやるんだ?」


「うん、軍医さんが教えてくれてる、医師免許取れるまで頑張るつもり」


医師免許


明利の今目指している目標でもある


能力者がとるのは非常に難しいが、才能もあるのだろうか、そこまで苦にはなっていないようだった


それどころか生き生きしているようにも見える


やはり明利は傷つけるよりも癒すことに全力を注ぐべきだなと静希はいまさらながらにそう思った


「でも静希君、そんなに銃の練習してるけど、雪奈さんとオルビアさんは何にも言ってないの?」


「ん・・・オルビアはともかく、雪姉は面白くないみたいだな、毎度射撃訓練に行くっていうと妙な顔するし」


自分が剣術を教えているというのに射撃に現を抜かすとは何事だとでもいうかのような表情だったと静希は語る


要するに不満そうな顔をするのだ


無論静希にとってその訓練が有益である以上、止める理由もないために致し方なく見送るしかない


姉貴分として非常に複雑なのだ


それに対してオルビアは自らの主が選んだことであるならば、それこそ至上であると確信しているようで何の文句も言わなかった


無論剣術の訓練も毎日欠かさず行っている故に何も言わないのだろう


主が自らを使うということに安心しているのか、使ってくれるということを信頼しているのか、どちらにしろ静希にとってはその対応がうれしいものだ


「今もずっと続けてるんだっけ、この前見せてもらったけど、まだ雪奈さんの許しはでないの?」


「いやいや、全然だめだ、本気になると全然反応できない、雪姉曰く上達してるらしいんだけど実感できない」


以前山崎の家に行ったときに、半ば見世物扱いで静希と雪奈の訓練の様子を見たが、あれはもはや素人という枠から超えた剣術であるように明利の目には映った


毎日のように雪奈からの剣撃を防いでいれば自分もあぁなったのだろうかと想像するのだが、如何せんまったく防ぐことができた光景が思い浮かばない

間違いなく一撃のもとにその首を叩き落とされるような状況が出来上がるだろう


ナイフでさえほとんど殺されてばかりだったのだ、剣など持ったところで瞬殺されるのが関の山である


「しかも射撃訓練した後はやたらと攻撃が重いんだよ、防ぐのが精一杯で反撃なんて絶対に無理だ」


「あはは・・・でもちゃんと手加減してくれてるみたいだね、そこまでひどい怪我はないみたいだったし」


定期的に明利は班員の体調などを能力を使わない範囲でチェックしているが、静希の体にも何の問題もなく、傷跡や痣などもあまり確認できなかった


雪奈の絶妙なる手加減あってのことだろうが、あれだけの速度で剣を振るいながらとっさに加減ができるあたりさすがというほかない


「私ももうちょっと前に出れればいいんだけど・・・」


「やめとけ、向き不向きはあるし、雪姉じゃないけど前衛の真似事はしないほうがいい、俺だって自衛目的以外では使わないようにしてるんだから」


必要でない限り剣術は使わない、使わなくてはならない場合は行使することも吝かではないが、静希だってなにも前衛になりたいわけではないのだ


ただそこに選択肢があったからそれを選んでみただけ、可能性が増えたから試しているだけ


手札はいくらあっても困ることはない、結局はそういうことなのである


射撃訓練場の後片付けをしてから、静希達は訓練場の使用終了を事務員に告げて帰路に就くことにする


その夜に雪奈とオルビアの少しきつめの訓練を強いられたのは言うまでもない


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