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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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策と切札

「でも、先生一人で足止めできるんですか?」


一個大隊は必要だと言った監査員一人でどれほど足止めできるだろうか


大群を前に一人で止める術などない、能力戦に相性があるとはいえ、あの悪魔が能力を使うとも、そしてどんな能力かもわからない


上等な策とは言えなかった


「正直数秒・・・一分持てばいい方だろう」


その言葉に全員言葉をなくす


監査員は通常教員と同じく軍所属経験を持つものが多く、なかでも精鋭と呼ばれるエリートでしかなれない程の実力を必要とする職業だ


その精鋭ですら、一分がせいぜい


「先生、俺らも何人か加勢に入ります」


「ダメだ!お前達の身の安全が第一だ!」


「今第一に考えるべきはこの女の子の身の安全です、この子があいつに渡ればまた身体を乗っ取られるかもしれない!それは避けるべきです」


この少女の体が乗っ取られれば、また村に被害が出るかもしれない、それどころか今度は別の村や町で被害が出るかもしれない


それだけは避けなくてはならない


「二手に分かれて、足止めをするチームとこの子を村に運ぶチームにして行動するべきです、少しはこの子の生存率は上がる」


「お前達の生存率が下がる、それは看過できない」


監査員として、教師として生徒が危険に及ぶのは見過ごせない


だが自分だけで生徒を守ることができないというのも、また事実


「先に戻った奴らが城島先生を呼べばさらに生存率も上がるはずです、そうすれば・・・」


「言っただろう、すでに小隊規模の話じゃないと、一人二人増えたところで何も変わらない」


「変わらないなら欠片でも多い方に賭けるべきです!」


静希の言い分はもっとも、だが監査員のいうことも正しい


どちらも正しい故に、引けないし曲げられない


「若いわねえ、そういう若さ嫌いじゃないわ」


聞いていたのか、悪魔はほほ笑みながらゆっくりと立ち上がる


「どうするの?シズキ可愛いし、その策にするなら、乗ってあげるわよ?シズキの言う欠片でも多い可能性とやらに」


明らかに見下した考えだ


それもそうかもしれない、津波で小石が流されない方に賭けているようなものだ


圧倒的に不利な状況は否めない、だがそこに隙があると静希は確信していた


「先生、お願いします」


「・・・!・・・お前達はいいのか」


全員の顔を見ても、同じだった、どうせならというやけくそ感が感じられる


「そうか、好きにしろ」


そういって監査員は悪魔と向かいあう


作戦はこちらで立てろということらしい


「で、どうするの静希、何か策でもあるの?」


「策ってほどじゃないから手短に話す、明利、雪姉、熊田先輩はこの子を背負って村までいって、村に着いたら熊田先輩は無線で報告を、そして城島先生を連れて戻ってくるか、その村で待機するか、先輩が判断してください」


「ちょっと待て、何で私達二年が回収なんだ、戦闘力のある方が」


「さっきの先生の口ぶりからすると、もう戦術とかどうこう言う段階じゃないみたいだ、能力的に戦いやすい奴で戦います、陽太は長年コンビ組んできたし、強化能力も入ってるから多少の攻撃も耐えられる、鏡花は万能な変換能力者、壁を作るのには事欠かない」


このわずかな状況で即座に頭を働かせて指示を送れる静希、これは才能か、いやこの状況だからこそ逆に頭がさえたのかもしれない


「それに対して二年生二人はナイフに音、攻撃や補助はよくても防御面に不安がある、明利は戦闘向きじゃないしこの子に付き添って適切な処置をしてほしいから村に戻るのは絶対だ、俺は陽太の能力を補助できるし遠隔攻撃もそれなりにできる、残るならこの三人だ」


合理的、その言葉が最も合う理由と指示だ


現段階で必要なのは生き残る能力の高い者


そのことを静希は理解していた


「わかった、絶対に無理はするなよ、できる限り早く戻る」


「俺らが生きている間にお願いします」


少女を運び出す準備に入る中、陽太と鏡花は静希に顔を近づける


「で、どうするんだよ静希、相手は悪魔だってよ、こっちはなんかないのかよ」


「正直相手になるとは思えないんだけど、先生でさえあんだけビビってるのに」


二人同時に聞かれ、静希は一枚のカードを取り出す


そのカードを見て、陽太の表情が変わる


「こいつを使う、そこで陽太と鏡花に協力してほしい」


そのカードは、スペードのQ


静希の持つ、最大の攻撃力を誇る『切札』


作戦を二人に話していると爆竹のような炸裂音があたりに響く


「はいはい、時間切れよ、五分たったから答えを聞くわ、どうするの?」


「二手に分かれて貴女を足止めする」


「いいわ、すごくいいわその眼、素敵よシズキ」


どうやら悪魔は静希が気に入ったのか、舌舐めずりをしながら這うような視線でその体を見ている


「一ついいか、メフィストフェレス」


「何かしら?」


「お前の今の目的はなんだ」


先ほどは巻き込まれただけと返答された、だが今の状況は違う


殺すためか、それとも遊ぶためか、それによって全員の生存率は急激に変動する


「そうねえ、さっきまではすっごく腹が立って暴れたかったけど、今はそうでもないわ、でも」


静希を見ながら邪な笑みを浮かべ指を顔に這わせる


「ちょっとだけ、八つ当たりがしたい気分かな」


最悪だと呟いて監査員は能力の発動準備にかかる


合図をすると熊田達は一斉に走り出した


そして残った全員が戦闘態勢に入る


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