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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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夕食時の提案

結局その後も静希と訓練を続け、一時間ほど経過してからまた鏡花の訓練に戻ることになった


何度も何度も殺されることで少しずつ体の動かし方と雪奈の振るうナイフの速度に慣れてきたのか、回避もなかなか上手になっているのだが、そこはやはり中衛の身体能力、五十回近く殺されてしまうことになる


それでも十分上手だよと雪奈は褒めてくれたが、一回も反撃できない上に、雪奈に打撃を使わせることもできなかったのだ


今まで大体のことはそつなくこなしてきた鏡花にとって、なかなかに困難な内容の訓練だった


そうこうしている間に日は暮れ、雲がかかりながらもわずかに色を変える空と落ち始めた気温にわずかな涼を感じながら、静希達は家の中に戻ることになった


「あら、もう運動はいいの?」


「あはは・・・お騒がせしました」


許可をとっていたとはいえ少々騒ぎすぎたかもしれないと反省しながら静希達は汗だくになった体をタオルで拭っていく


まだ夕飯時には少し早いのに部屋には食べ物のいいにおいが充満していた


「まだご飯ができるには時間がかかるから、今のうちにお風呂に入ったら?そんな汗まみれじゃ気持ち悪いでしょう?」


「でも、いいんですか?」


招かれている身としては一番風呂を家主より先にいただくというのは少し抵抗がある


それでもかまわないわよという山崎の笑みと回答に、静希達は急いで入浴の準備を進めていた


「今回も男子が後か?」


「どっちでもいいよ?私たち女子高生の汗の染み出た湯船につかるでもよし、自分たちの汗の染み出たお湯で私たちを汚すでもよし、お好きなほうを選ぶとよい」


「・・・その言い方何とかならんのか・・・?」


雪奈の少しゲスな発言に呆れつつ、またも男子は後で女子が先に入浴することになる


さすがに二日連続で長湯するということはなかったようで、男女合わせて一時間程度で入浴を終えていた


静希と陽太が入浴を終えた後、全員のいる居間に戻ると食卓には数多くの食事が用意されていた


先日のそれとは豪華さが違うことが一目でわかる、一つ一つ手間のかかった逸品であることが料理をよく行う静希には理解できた


「最後の夕食ですからね、少し奮発しちゃった、たくさん食べてね」


山崎のご厚意をいただくべく、静希達は手を合わせて号令とともに一気に料理に食らいついていく


「五十嵐君、一つ聞いてもいいかしら?」


「ん・・・はい、何ですか?」


優しい味が口の中に広がる中、口のものを飲み込んで山崎のほうを見る


彼女は何か考えているようだったが、読心術など持ち合わせていない静希には何を考えているのかなど全く分からなかった


「夫の霊のことなのだけれど、今日対処するのよね?」


「・・・はい、今夜に出たときに俺が対応します、実際に能力を使ってみないことにはどうなるかはわかりませんが」


静希の能力と事と次第によっては本当に静希の手に余ることになってしまう


その場合はメフィや邪薙に登場してもらうしかもはや静希にできることはない


「できるなら、それに立ち会わせてもらいたいのだけれど・・・だめかしら」


「それは・・・」


静希はわずかに表情を曇らせ、城島に視線を送る


その視線に気づきながらも城島はあえて何も反応しなかった


普段ならば首を振るなり目くばせするなりの反応を示すはずなのだが


そろそろ自分で考えろということか、さすがに静希も悪魔を引き連れて長い、どの対応をするべきかは自分で理解しているつもりだ


「出現までは一緒にいてくれて構いません、ですが対応する時は退室していてもらいます、危険な上に、俺の能力にもかかわってきますから」


この家の主であり、幽霊の妻であるとしても、悪魔の姿を見せる訳にはいかないし、何より自分の夫が消されるような場面は見たくないだろう


「五十嵐、まさか何の顛末も見せずに終わらせるつもりではないだろうな?」


石動の訝しげな声音に静希はため息をついて首を横に振る


「さすがにそれはな・・・来てもらっても問題ない状況になったら全員部屋に入ってもらうさ・・・出てもらうのは万が一の場合に備えてだ」


万が一


悪魔の力の行使を前提とした退室だが、おおむね正しい判断だろう


何せ静希自身どうなるかわからないのだ、もしかしたら幽霊が自然と成仏するかもしれないし、逆に活性化するかもしれない


そう考えると自分の能力が及ぼす作用について完全に把握できていないのが本当に痛いところだ


そもそも最善の状態にするなどと言っても、道具など特定の使用法があるものならまだしも幽霊など入れたことがない


そもそも見たのさえ昨夜が初めてだったというのにそのようなことがわかるはずもない


「でも霊が出るのは深夜一時過ぎですよ?平気ですか?」


「大丈夫ですよ、その為にお昼寝しましたから」


朗らかに笑う山崎に、たぶんこの人ダメだって言っても見に来るつもりだっただろうなと確信しながら静希は味噌汁を口の中に流し込む


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