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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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攻撃と防御

「ほう・・・なるほど、彼女から直接指導を受けているのか・・・ならあの体捌きも剣術も納得だ、よい師を持ったな、うらやましいよ」


「はは、もう少し私生活を正してくれれば文句ないんだけどな」


実際には、静希の剣術の指導をしている人物はもう一人いる


だが自分の剣に指導されているなど、どう説明していいものかわからず静希はとりあえず言葉を濁した


「だが防御はかなり達者なのに攻撃は随分とお粗末だったな・・・何か訳でもあるのか?」


その言葉に静希は軽く頬を掻きながらどう答えたものかと悩んでしまう


基本、雪奈やオルビアとの鍛錬は実戦形式のものが多い


そうなると剣術で二人に敵うはずもなく、一方的に攻撃されるだけになってしまうのだ


この訓練方式は雪奈とオルビアが二人で話し合った結果考案されたもので、もし一撃でも二人のどちらかに入れることができればステップアップしてもいいという条件のもと、訓練に励んでいるのである


隙を見て反撃はしているものの、剣の達人である二人に掠ることすらなく空を切るだけなのだ


それどころか毎回毎回手痛い反撃をくらってしまう


無論静希も雪奈とオルビアに頼み込んで最低限の剣の握り方や振り方などは指導され、素人よりは少しまし程度の攻撃技術は持っている


だが石動のような前衛の人間からすればそれでも拙いと言えるレベルなのだ


「そこは俺の師匠に答えてもらおうか、雪姉、俺を防御特化にさせてる訳をお答えください」


「んぐ?・・・そりゃ当たり前だよ、だって静は前衛じゃないんだから」


口の中にあったものを飲み込んでからしゃべる雪奈のその言葉に、静希と石動は疑問符を浮かべる


前衛ではないから防御に特化させる


理由になっているようで理由になっていないような気がする


「・・・前にも聞いたけどさ、何で前衛じゃなかったら防御特化になるのさ」


「逆に聞こう・・・静よ、私が静に剣術を教えてるのは何でだと思う?」


珍しい雪奈からの切り返しに静希は少し食べるのをやめて考えてみる

なぜ彼女が自分に剣を教えるのか


自分が頼んだからだろうか、それとも剣を教えたいからだろうか


静希は雪奈ではないために、明確な正解のビジョンがうまく思いつかない


「答えは、そうしないと危ないから、道具や武器はちゃんと扱い方を覚えないと自分が怪我することだってある、ナイフの扱い方と同じだよ、素人が使うには危険すぎるから扱い方を教えるのさ」


「・・・それがどうして防御特化にすることに関係するんだ?」


どうにも要領を得ない雪奈の説明に静希は絶えず疑問符を飛ばし続けてしまう


だがそんな中で、石動は何とはなしにその理由を理解した


「なるほど、防御をメインにして攻撃の指導をしないのは、危険だからですか」


「そう、やっぱ前衛型なだけあって理解が早いね」


二人だけで理解している状況に静希はついていけず、二人の顔を見比べてしまう


前衛型にしかわからない何かがそこにあるのだろう、長く中衛に属している静希にはまったくもって理解できない


そんな静希の様子を見て仕方がないなぁと少し嬉しそうに呟いて静希の前に指を一本突き立てる


「いいかい静、使える武器が一つの時は攻撃も防御もそれでこなさなきゃいけない、そうなると攻撃するとき必ず無防備になるのさ、その証拠に静は私に攻撃したとき必ず反撃されるでしょ?」


「・・・まぁ、それはそうだけど」


真剣で行われる剣術指南で反撃というと必ず危険が付きまとうように思われるが、さすがに雪奈もそこまでバカではない


必ず攻撃が当たると思った瞬間に刃を返して峰打ちにしたり、柄を用いての打撃に変えたりとして工夫している


要するに攻撃を受けた回数がそのまま静希の死亡回数につながるわけである


「つまり、攻撃するときには同時に攻撃されるだけのリスクがあるの、回避、防御、攻撃、それぞれどれを選ぶか瞬時に判断しなきゃいけない、それが前衛なの、静はまだその判断が甘い」


確かに雪奈の言う通りに、意図的に作られた隙に食いついてカウンターを貰うことが多いがそれでも以前よりはまともになっているのだ


それにすべての前衛がそんなことを考えているとも思えない


「じゃあ陽太は?あいつ結構反撃受けたりしてるけど?」


以前もあったが、基本陽太は攻撃を体で受けることが多い


あまり防御をしているという姿も見かけない、そう考えると矛盾しているように思えるのだ


「陽みたいに耐久力も上がるタイプの能力なら多少のリスクも無視して攻撃もできるんだけどね、私みたいなのはそうもいかない、静は特にね・・・前衛にとって攻撃はもっとも重要ではあるけど、その為に自分がやられちゃうんじゃ採算が合わないよ」


攻撃重要だけどまずは我が身


そういう雪奈に静希はようやく理解した


なぜ雪奈が自分に攻撃を教えないのか


「要するに、防御とその判断もまともにできないようじゃ攻撃教えたってやられるのが関の山、だから教えないってことか?」


「簡単に言っちゃうとね、まぁ剣を教えるならまずは防御、そうじゃないと静自身が危ないから」


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