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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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勘違いの認識

本来身体能力強化がかかっている相手に簡単に投げられるような隙は無いに等しい


だが死角からの攻撃と体を支える足に激痛を与えることで、一瞬だがひるませることができる


石動の能力は体重を増やすような能力ではないために、力の向きを少しずらすだけで簡単に転倒させることはできる


問題はそのあとの攻撃が有効であるか否かだ


腹部に叩き込まれた打撃は、通常ならばかなり効果的な攻撃になっただろう


だが相手は身体能力の強化もかかっている、ただの打撃では致命打とはなりえないようですぐさま静希の手から逃れ軽々と体を操って距離をとっていく


足に走った痛みの原因を探り、即座に突き刺さっている釘を引き抜いて地面に投げ捨ててしまう


「乙女の柔肌に傷をつけるとは、紳士的ではないぞ五十嵐」


釘を抜いたはずの傷口からは本来流れるはずの血が一滴も流れていない


能力を使って血流を操作しているのだろう、血液の操作、硬化、形状の変化、そしてそこから得られる強化


静希との能力の相性は決して悪くない、だが殺さずに力を示せというのはなかなかに難しい


「そうか?催涙ガスを顔面にぶち込むか悩んでたんだけどな、それじゃお前が納得しないだろ?」


いくら血液を操れるといっても催涙ガスを目と鼻に浴びてしまえば数分間は強制的に視界を潰せる、あの仮面の機能にもよるが呼吸障害も起こせるだろう


傷を負わせずに取り押さえるなり、攻撃するなりではそれが一番の策だったのだが、今回の戦いの目的が石動が静希の実力を認めることだ


不意打ちや卑怯な手などいくらでも使えるが、それでは意味がないのだ


「性格が悪い俺としては、もっと卑怯な手を使いたいんだけどな」


「性格が悪いなどと、面白くない冗談を言うじゃないか、少なくともなかなかの人格者のように思えるが?」


静希と石動の言葉にその場で戦いを観戦している一班の人間と雪奈は苦笑いしてしまう


そう、石動はまだ静希の本性をほとんど知らないのだ


彼女が知る静希の姿は、年下に優しく、面倒であるはずの能力指導も、自分の持ってきた面倒事も快く引き受けてくれる懐の大きい人物


そしてなおかつ状況判断が的確で、思慮深く、神格に対処することができた班を指揮する優秀な能力者


一部分は正しい判断と言えるだろうが、人格面でははっきり言って真逆と言ってもいいほどに静希は性格が曲がっているだろう


「なんにせよ、お前の片足は封じられたぞ・・・さてどうする?」


血液を操作して血が流れないようにしてはいるものの、そこに傷があることは変わらない


静希が狙ったのは筋肉の存在する部分、体を動かすどころか足に体重を乗せただけで痛みを伴うような場所だ


片足だけでも十分に行動はできるだろうが、移動速度や攻撃に必要な踏ん張りはかけられないだろう


できるならここで終わりにしてほしいところである


「愚問だな、こんなところで終わりにできるほど、私は軟ではないぞ」


石動が能力を発動する瞬間、片腕に在った血の刃が体内に戻っていき、今度は足の傷から血液が噴き出してくる


次々と体外へと出ていく血液は足の周りに薄い膜を作り出し完全にコーティングしてしまう


その手があったか、とその現象と行為の意図を正しく理解したのは、現在進行形で石動と対峙している静希と変換系統に詳しい鏡花だけだ


彼女は血液を足に薄く纏い硬質化、今彼女の足は完全に脱力状態だろう


だがそれでも彼女の足は動く


何故なら内側の筋肉を駆動させて足を動かしているのではなく、外側に纏った血液でできた外殻を操って足を動かしているのだ


以前静希が戦った尾道と同じ能力の使用法だ


体に纏った物体を動かすことで体を強引に動かしている


先程のような身体能力強化状態ほどの脚力と俊敏性を得られるとは思えないが、それでも石動の実力ならばほぼ不自由なく動くことができるだろう


そして今度は腕にある傷口から少しずつ、足と同じように薄い膜を作り出していく


今度は刃による斬撃ではなく、こぶしによる打撃に切り替えたようだ


斬撃と打撃を切り替えられる前衛型というのは非常に便利だ、それこそ攻撃の種類から対応まで一気に変わる、今の静希との相性は最悪である


「さぁ五十嵐、私はまだまだやれるぞ?それとも白旗を上げるか?」


できるなら彼女の言う通り白旗を上げたいところではあるが、まだ静希にもできることはある


何より、まだダメージも受けていないのに降参するなど静希の性には合わない


「まだまだやるって、その血液量から察するに、もう一発か二発くらい足に負傷を負わせれば俺の勝ちだろ?」


「・・・さすがに気づいていたか」


石動は悔しそうに、そして少し嬉しそうに笑って見せる


静希が気づいたのは彼女の能力の弱点とでもいうべきものだ


それがある限り静希にはまだ戦えるだけの理由ができているのだ


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