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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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エルフの能力

石動が姿勢を低くし、大きく息を吐き体に力を込めていく


静希は即座にオルビアを構えいつ襲い掛かってきてもいいように集中を始めていた


合図はなかった


石動が顔を上げた瞬間に、静希の知る人間のそれとはまったく異なる速度で静希めがけて襲い掛かる


振り下ろされた手刀をオルビアの刀身で受け止めることができたのは、偏に雪奈との特訓の賜物だろう


行動するうえで反射に近い反応速度で防御態勢に入った静希に、石動は口笛を吹きながら反撃を受けるより早く即座にその場から離脱する


その速度にその場にいた陽太と雪奈の顔色が変わる


自らの最高速よりも速いかもしれないその速度に、前衛としての血がうずいているのか


石動の一挙一動を見逃すまいと目を見開いていた


そして一時的に距離を置いた石動の手は、防御した際のオルビアの刃によってわずかに傷を作っていた


あれほどの速度で打ち付けてこの程度の怪我で済んだのは僥倖かもしれない

だが静希にとっては不幸でしかなかった


「反応はよし、防御も的確・・・では、これはどうだ?」


石動が自らの手から流れる血に、いや血の流れる傷口に口をつける

すると血液が見る見るうちに形を変えていく


薄く、鋭く、長く、その手から流れる血によって形成された刃


徐々に硬質化していく刃の切れ味を確かめるように近くの草木に向けて手をふるうと、まるで通過したかのように抵抗なく刃は吸い込まれ、植物をいともたやすく両断する


これが石動の能力


血に力を付与する、霊泉の使徒


自らの血に能力を付与することで形作られる刃や鎧、そして同時に効果を表す肉体強化


例え血液が体外に無くとも、体内に存在する血液に能力を発動することで身体能力の強化が可能なのだ


自ら傷を作るまでもなく、戦闘によって作られる傷で彼女は攻撃の選択肢を増やしていく


刃を静希に向け、先程と同じような高速での接近と同時に血の刃を静希めがけて振り下ろす


能力を全開にしたときの雪奈ほどの剣速ではないにせよ、静希のそれより圧倒的に速い


連続で繰り出される斬撃に静希は防戦一方となってしまっていた


静希のとって唯一救いなのは彼女が本気を出していない点だろう


人間にとって血の量は個人によって異なる、だが失血していい量というのは必ず存在する


石動の能力の場合で言えば、体外に出せる血の量は限られているということでもある


彼女が本気で戦う場合、事前に用意しておいた輸血用のパックなどを用いて血液の総量を増した状態で能力を発動する


だが今回はそもそも戦闘するために来ているのではないために、そういった類のものは持ってきていないようだ


激しい斬撃を受けながらも、その一つ一つを丁寧に捌いていく静希はどんどん集中力を高めていく


石動が足を止めて純粋な斬撃のみで打ち合ってくれるからこそ何とか反応できているが、これで彼女が足を使い出したら確実に防御できなくなるだろう


実力を見るというだけあって手加減はしてくれているようだった


血液でできているはずの刃はオルビアの刀身に触れても全く刃こぼれしていない


相当の硬度と練度を誇るものであることがうかがえるが、静希とてやられっぱなしでいるほど気は長くない


かといって石動に必要以上の負傷をさせるのもよくない


何故なら彼女の傷を増やすことは彼女の戦術の幅を広げることに直結するからである


ついでに言えば勝負を挑まれたとはいえ、特に恨みのないどころか恩さえある石動に容赦なく攻撃するのも憚られるのだ


さてどうしたものかと斬撃をさばきながら静希は思考を続ける


血の刃を用いての攻撃は確かに速いが、刃が形どられているのは片手のみ


最も手っ取り早い方法としては打撃を用いてダメージを積み重ねていく方法だが、この猛攻の前に自分の剣術のみで打撃を与えるだけの隙を作り出せるとは思っていなかった


幸いにして石動は油断とまではいかないまでも、目の前の静希に対し集中している


一対一という環境のために死角からの攻撃をまったく警戒していない状態だ


先程まで引きながら防戦一方だった静希は、意を決して石動めがけて踏み込む


石動の力のこもった斬撃を真正面から受け止め鍔迫り合いにも似た状況を作り出す


「何の真似だ?力で私に勝てるとでも思っているのか?」


身体能力強化のかかっている石動は女子とは思えないほどの膂力で静希の体を後ろへと押しのけていく


何の強化もかかっていない静希からすればただ押されるだけでも相当の重圧がかかっているのだ


「思ってねえよ、ただ目的は達成した」


「何を言って」


石動が状況を理解するよりも早く静希は能力を発動する


完全に動きを止めたその足めがけ、一本だけ釘が射出され石動の足へと深々と食い込む


唐突に訪れた痛みに苦悶の声を漏らすと同時に、足に力を籠められずにわずかにバランスが崩れ、こめていた力が抜けてしまう


それと同時に静希はオルビアを片手持ちに切り替えて軌道をそらしながら石動の腕を掴み、体重をうまく操りながら足をかけて石動を転倒させると同時にその腹部へとオルビアの柄を叩き込む


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