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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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捕獲

明利の案内の下、たどり着いたのは古びた社だった


社のそばで少女は傷口を舐めて癒そうとしている


その仕草は獣そのものだ


「さて、どうやって意識を奪うか・・・」


「薬物の類がないなら、首絞めておとすしかないでしょ、打撃じゃ危なすぎるわ」


「だよなぁ」


首を絞めて血流を乱し脳に届く酸素を断ち、物理的に意識を失わせる


もし打撃などで意識を奪うことになると腹部への攻撃はあの四足行動では難しい、となれば頭部への攻撃になる、そうすると一つ間違えれば殺してしまう可能性がある、首を絞めて意識を奪うしかない


「この中でそれができそうなのは」


陽太、能力的に接近すると大火傷のため不可


明利、筋力もその能力もない、不可


鏡花、接近戦派ではないため接近が難しい、不可


雪奈、攻撃手段は多いが攻撃的すぎる、一応可能ではある


熊田、接近戦派ではない、実力はあるかもしれないが難しい


静希、接近することは可能だろう、意識を奪えるかどうかは運


静希、雪奈、熊田、この三人の誰かが実行することになる


「雪姉は人を絞め落としたことはある?」


「ないわけじゃないけど、好みじゃないな」


「熊田さんは?」


「俺がやると首ごと落としてしまいそうだ」


恐ろしいことを簡単に言うなこの人はと思いながらため息をつく


「じゃあ俺がやるから全員で隙を作ってくれ、警戒が薄くなるように陽動作業よろしく」


「やり方は大丈夫か?」


「あぁ、落としたら即捕縛するから鏡花、準備はぬかりなく、ワイヤーとか作っておくといいかも、逃げられないように細工もよろしく」


全員がうなずいたのを確認して静希は静かに移動する


それを見て最初は陽太と雪奈が飛び出す


傷に集中していて気付けなかったのか陽太と雪奈の接近に驚いて躊躇なく咆哮をあげる


圧縮した空気を飛ばしているという性質上、能力の実態は見えにくい、だがそこは人間としての理性を失った少女の技、動作や軌道を読めば回避は容易い


同時に左右に飛びながらさらに接近、その間に鏡花はこれ以上逃げられないように周囲の木々に有刺鉄線を巻きつけ包囲していく、そして明利も刺を持つ茨を周囲の木々に巻きつけ、進めないように、逃げられないようにしていく


熊田は静希の位置を把握しながら音を使って陽太と雪奈に細かく指示を飛ばしていた


能力をかわしながら、それでいて傷つけないように避けやすい攻撃を繰り返す


本人達からすればフラストレーションのたまる行動だ、何せ相手は何の制約もなしに攻撃してくるのに自分達は当ててはいけない、避けやすい手を抜いた攻撃をしなくてはいけない


そもそもこの行動が時間稼ぎなのだから仕方ないが接近戦を身上とする二人にとってこのもどかしさは如何ともし難い


だが避けているということはそれだけ相手の動きを見ているということ、徐々にではあるが少女は目の前の二人に対して集中しだしている


周囲の音は熊田が完全にシャットアウトさせている、今少女には目の前の二人とその近くの空間しか見えていないし聞こえていない


そして少女の背後に静希の姿を確認した瞬間、作戦を決行する


二人が同時に襲いかかると少女は迎撃態勢に入る、姿勢を低く、力をため能力を放とうとする


だが、そこで熊田の能力が発動する


少女の耳に響く大音量、およそ森や山では聞くことのない爆音


急激な爆音が少女の耳を、脳を揺らし、平衡感覚を失くしてしまう


だが能力は止まらない、地面に向けて放たれた圧縮された空気はそのまま地面にめり込む


ふらついている少女の顔を雪奈が蹴りあげると後ろから飛び出した静希が首を締めあげる


少女は苦しそうにもがき、舌を出し、涎を垂らす


小さく震えながらやがて少女は動かなくなり、白目をむく


額につけていた仮面が落ち、完全に意識が喪失する


「鏡花!」


「任せなさい」


極太のワイヤーを持って即座に駆け付けた鏡花は構造変換を用いて少女をワイヤーで簀巻き状態に拘束する


「ようやく捕獲できた・・・」


「意識失ってるけど、死んでないよな・・・?」


「大丈夫、息もしてるし脈もある、しばらくすれば目も覚ますだろ、明利、同調頼む」


「はい」


少女の状況を知るために明利が駆け寄り少女の額に触れながら目を閉じる


「薬とかは投与されてないみたい・・・ただ軽度だけど栄養失調の症状が出始めてる、村に戻ってちゃんとご飯食べさせてあげないと」


同調すると同時に右腕の治療も始める、雑菌も少なかったようで血は見る見るうちに消えていく


そうだ、考えてみればこの少女は十日以上も山や森で過ごし、そこら辺の動物や野菜を食べて食いつないでいたのだ


育ち盛りで食べざかりの十歳がその程度で足りるはずがない


「さて、これで」


「任務完了、かな」


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