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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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明利の渾身の一撃

用を足し終えてトイレから出てきた明利を迎え、また元の部屋へと戻る最中も静希と明利はとりとめのない話を続ける


そうでもしていないと怖くて歩けなくなりそうだという明利に、さすがに怖がりすぎだとため息をつきながら静希は何事もなく明利を部屋へと送り届けた


部屋に戻った明利はまず自分の周りを再度確認する


寝息を立てる鏡花たちを見まわして近くの壁などにも何もないことを確認する


そして床に乱雑に散らばっている布団を一つ手に取って雪奈の体にかけてやる


いくら気温が高いとはいえ何もかけていないと風邪をひくかもしれない


ちょっとした気遣いを見せてもう早く寝てしまおうとため息をつきながら振り返る


するとそこに、先程まで何もなかった空間に何かがある


淡く白い、靄のような何か


木でできたタンスの近くに現れたそれは徐々に形を変えていき、やがて体が、顔が、表情が明利の目にもわかるように作られていく


あまりの恐怖に呼吸もできず、明利はその靄から目を離せない


離したらどうなるかわからない、何をされるかわからない


足を震わせながら少し後ずさると


その靄が、明利を見た


瞬間明利の意識は遠のき、完全に意識を失って倒れる


「ぐぉふ!」


明利が倒れた先には雪奈の体があり、うまいこと明利の頭が雪奈の腹部に直撃することで明利の頭部へのダメージはなかったが、寝ていた雪奈の腹部へのダメージはかなり大きかった


「うぅ・・・痛い・・・あれ?明ちゃんなんで私のお腹に頭突き・・・?って寝ちゃってたのか・・・いけないいけな・・・」


自分がいつの間にか意識をなくしていたということに気づいて周囲を見渡すと、雪奈は明利も見たその靄を見つける


顔がある、体がある、手も足もある、そして何より表情のあるそれを見て雪奈は絶叫を上げる


数秒間、思考と体を硬直させた後にナイフを構えて臨戦体勢に移行しながら明利の体を抱えて近くの鏡花と石動のもとへと移動していく


「二人とも起きて!異常事態だよ!出たよ!起きなさい!揉むぞ!弄るぞ!」


雪奈の大声に鏡花と石動は呻きながら周囲に異常が発生していることをわずかに認識するのだが、眠っていたところをいきなり起こされても全く頭が働かないようで体だけを起こしてボーっとしている


「おいどうした?なんかあったか?」


雪奈の絶叫を聞きつけたのか、先程まで明利と一緒にいた静希が引き返してきたのだろう、扉を軽くノックしながらこちらの安否を確認してくる


だがことはそうのんびりしていられる状況ではない


「静!入って!出た!幽霊出た!」


その言葉を聞いて静希は即座に扉を開けて内部を確認し、雪奈がナイフを向け続けている幽霊らしき靄を見つける


「うっわ・・・衝撃的だな・・・予想よりずっともやっとしてる」


静希はトランプを展開しながらまずはオルビアを引き抜く


雪奈の腕の中で意識を喪失したままの明利も気になるが、今は幽霊優先である


「さて、どうしたもんか・・・」


静希は警戒しながら少しずつ近づいていくが、幽霊は何の反応も見せない


よくよく観察してみるとその霊の顔を静希はどこかで見たことがある気がした


見た目年齢は二十半ばだろうか、てっきり老人や老婆の霊かと思っていたのだが当てが外れた


今まで静希が見たことのないような服を着ている


服の肩の部分に刺繍にも似た何かがついており、服のあちこちにポケットがある、ベルトには何かがつけられているのだが靄が強くて判別できない


とりあえずトランプの中に入れようとカードを一つ手に取って幽霊に近づけていくと、あと少しというところで幽霊は霧散して消えてしまう


いきなり消えたことでどこかに移動したのではと思いあたりを見渡すのだが、周囲に幽霊らしき姿も靄も全く確認できなくなってしまった


携帯で時刻を確認すると、深夜二時十五分、この時間に現れたということが分かっただけましだろうか


「い・・・いなくなった・・・?」


「みたいだな・・・やっちゃったな、できれば一発で終わらせたかったんだけど」


まさか近づくだけで消えるとは思わなかっただけに静希は悔しそうにオルビアをトランプの中にしまう


「ところで、明利はどうしたんだ?さっきまで起きてたのに」


「わ、わかんないよ、いきなり明ちゃんがヘッドバッドしてきて起こされたんだ」


「・・・あぁなるほど、幽霊見て気絶したんだな」


状況から察するにそういうことなのだろうと思いながら静希は部屋の明かりをつける


暗闇に包まれていた部屋は文明の力により照らされ、意識が微妙にはっきりしていなかった鏡花と石動がようやく頭を回転させ始めていた


「あれ・・・もう朝?」


「なんだ・・・まだこんな時間ではないか・・・」


まだ状況を正しく理解できていないのか、あたりを見回したり携帯を見たりしてなぜ起こされたのかを知ろうとしているようだった


「と、とりあえずどうするべき?もう出ないって思っていいのかな?」


「一度出て消えたんだ、今日は期待しないほうがいいかもな・・・それにしても・・・見ただけで気絶するかね普通」


顔面蒼白で意識を失っている明利の頬をつつきながら静希はあきれ返る


ここまで臆病というか怖いものに耐性がないのも考え物だ


今日も今日とて予約投稿


無防備な状態でのヘッドバッドは相手の腹部、および自分の首を痛める可能性がありますので良い子は真似しないでください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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