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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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昔の話と今の見張り

「まぁ確かに、今のうちに寝ておけば、あとは本眠になるでしょうね、案外いい考えかもですね」


「案外とは何だね、私だっていろいろと考えているのだよ?」


ふふんと得意げに胸を張る、付き合いが長いだけではなく気を使うこともできる


今までの印象とはまた違う一面だ、いつも静希にバカにされているだけのダメな姉貴分というだけではないようだ


少し評価を改めたほうがいいかもしれないと思いながら鏡花は周囲をよくよく観察する


「じゃあどうしましょうか?見張りでも立てるって静希達には言ってあるんですけど」


「それなら今日は私が受け持つよ、もしなんかあったらセクハラして起こしてあげるから」


「全力で遠慮したいのだが・・・まぁそういってくれるのであれば任せるとします」


手をタコのように駆動させながら邪な笑みを浮かべてわずかに涎を垂らすその姿は上級生の女子とは思えない


まるっきりおっさんの反応だよこれと思いながら鏡花と石動は就寝の準備を進める


雪奈は鞄からナイフを二本取り出して両手で持ち胡坐をかいて壁に背を預ける


警戒状態とはいえまさか座ったまま待機するとは思わなかった


一昔前の侍のようだなと思いながら鏡花はお休みと言いながら部屋の明かりを消す


月明かりもなく暗闇に包まれる中、雨の音と時折響く雷の光と音が暗闇と静寂の中に自然の音楽を奏で続ける


「雪奈さん、聞いてもいいですか?」


「ん?なんだい?」


なんでもない雑談、少しだけ眠れなかったから話しかけただけの、本当にそれだけの話だ


「静希や陽太とはどれくらいの付き合いなんですか?明利より長いって聞いてますけど」


「んん、どれくらいだったかな・・・静とは私が三歳、静が二歳の時からの付き合いかな」


「それってすごい前ですね・・・ほとんど覚えてないんじゃないですか?」


二歳三歳というとほとんど自我などないような年齢だ、鏡花だってあまりその時のことは覚えていない


それ以前に二歳のころ自分がどんなことをしたのかの記憶さえも残っていないのだ


二歳三歳というのはそれほどに昔のことである


「うん、私も気づいたら静が一緒にいたってくらいしか覚えてないんだ、一緒にいるのが当たり前で、静も私をお姉ちゃんって呼ぶのが当たり前だったなぁ」


「ふぅん、陽太は?」


昔のことを懐かしみ、幼き日の静希を思い出しているのか雪奈は感慨深そうに遠い目をしている


彼女にとってその記憶は大切なものだろう


「陽は・・・確か静希と喧嘩してたのが発端だったかな?」


「静希と喧嘩?あの陽太が?」


今のあの二人の関係を見る限り喧嘩をするような間柄とは思えない


少なくともあの二人が喧嘩をしたところは見たことがないのだ


それにあの二人が喧嘩をしているところも想像ができない、口喧嘩というかちょっとした言い合いはしているとことは見かけるが殴り合いなどに発展するようなことがあるだろうか?


「確か・・・どれくらいの時だったかなぁ?私たちが公園で遊ぶ時に陽と実月さんと会ってね、遊具の取り合いで喧嘩、そのあと二人ともお姉ちゃんである私たちに怒られて両成敗、そしたら突然二人で協力し合って私たちに水かけてきたりいたずらしてくるんだもん、あの時のことは忘れないよ」


「うわぁ、なんというか、想像しやすいですね」


子供のころからやんちゃだっただろう陽太と、おそらくは子供のころから頭の回転の速かった静希、二人の相性はそのころから非常に良かったのだろう


今でも仲がいいわけだと思いながらその時のことを想像する


実姉と姉貴分に怒られた二人が少しふてくされながら説教を聞く中、アイコンタクトして同時に走り出して、水道の水を噴出させたり彼女たちのスカートをめくったりする二人の姿が目に浮かぶ


「ひょっとしてですけど、そのあと実月さんにこってりと怒られたりは?」


「よくわかったね、あの人は怒ると怖いよ、能力使わないと勝てる気がしないもん」


前衛型でありそれなりに戦闘経験があり、なおかつ身体能力の高い雪奈でさえ実月にはかなわないと思っているらしい


実際、以前陽太が逃げようとした時も一撃のもとに撃沈させていた、おそらく能力を使わない状態での肉弾戦での最強は実月なのだろう


「そこから仲良くなったんですね」


「そうだよ、それで遊ぶようになって、そこから明ちゃんも一緒になって、今も楽しいけど、あの時も楽しかったなぁ」


その中には苦い記憶もあるだろうが、今となっては楽しい記憶しか残っていないのだろう、懐かしそうに当時を思い出している雪奈は軽くため息をついて布団の中にいる鏡花に目を向ける


雪奈はあえて鏡花の過去は聞かない


自分から言いたい時に言うだろうし、わざわざ聞くこともないと思っていた


気を利かせたというよりは、ただそれが正しいことだと思っていたからこそ、そうしただけ


「そろそろ寝ますね、少し眠くなってきたし」


「うん、私も三時くらいになったら寝るよ、そのくらいなら幽霊もお休みするでしょ」


そうかもですねと言いながら鏡花は布団をかぶり、おやすみなさいと雪奈に告げる


目をつむって寝息を立て始める鏡花を目を細めて眺めてから、雪奈は視線を鋭くして周囲に気を張り始める


夜はまだ長い、そして本当の夜はここから始まろうとしていた


今日から16日まで、ちょっと所用で外出せざるを得ない状況なのでこの一週間予約投稿させていただきます


反応が遅れるかもしれませんがご容赦ください


投稿時間は午前六時で固定しておこうと思います


これからもお楽しみいただければ幸いです

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