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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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明利の対策

「うぅ・・・何で私がこんな目に・・・!」


「雪奈さん重いです・・・そんなに寄りかからないで下さいよ」


「まったく、こんな目に合わされるとは・・・あの人は本当に教師か・・・?」


戻ってきた三人をしり目に静希たちは会話を切り上げとりあえず足をしびれさせている雪奈にちょっかいを出しながらその場に座らせる


「明利が怒られるっていうのは新鮮だな、特に騒いでてってのは初めてじゃないか?」


「もう、静希君がふざけるからだよ!」


もとはと言えば静希が二人の会話を陽太に教えようとしたのが発端とはいえ、そこから鏡花に雪奈が現れてしまったことが原因だろう


間が悪かったといえばそこまでだが、不運は重なるものである


「そうだ、今のうちに渡しておくぞ、すいみんやく~」


たらりらったらーという効果音とともに静希が明利にダミ声で渡す小瓶には粉状の物体が入っている


以前陽太と雪奈に使ったのもこれだ


「飲むときは水に溶かすか、または水で流して飲んでくれ、水に溶かせば大体数分、粉から飲めば十分から十数分くらいで効いてくる」


その薬を見て明利は安心しているのだが、それと同時に静希をわずかににらんでいる


「静希君、私だってもう高校生だよ?幽霊くらい見たって寝られるんだよ?」


「・・・数年前の夏の話でも蒸し返そうか?」


静希の言葉に反論の言葉が見つからないのかうぅぅぅと唸りながら明利は小瓶を持って雪奈の近くに行ってしまう


「なんだ、幹原は幽霊が苦手なのか?」


「幽霊っていうか、怖いものが全体的に苦手だ、一応雪姉にも頼んであるけど、もし面倒が起きたらフォロー頼む」


いざとなれば勇気を振り絞れる明利でも苦手なものはたくさんある


特に幽霊やら妖怪やら、誰もいないはずなのに聞こえるラップ音や足跡など、夏の定番ともいえる怪談話が明利は大の苦手だ


動物などには平然と対応できるのにそれが幽霊かもしれないと思うだけで明利はダメダメになる


「まぁ・・・彼女はその・・・確かに庇護欲をそそるものがあるが、睡眠薬を使うほどか?彼女も言っていたが仮にも高校生だろう?」


「明利を侮るなよ?不安が不安を呼んでずっと何かを抱きしめたまま、結局不眠状態で朝を迎えることもあったくらいだ、あったほうが何かと便利なんだよ」


抱きしめられたのがその時静希だっただけに鮮明に覚えている


恐怖のせいで目がさえてしまい、寝るに寝られず、話し相手はいない状態でずっと震えながら静希に抱き着いていた


その状態を雪奈が見てさらに覆いかぶさるように抱きしめていたのだが、それでも寝られずにずっと音や暗闇に耐えていたのだという


さすがにそれは幼いころの話だが、今もその癖があるかもわからない


今回は雪奈が近くにいてくれるが、見る対象はテレビではなく実物だ


寝られないなどと言う程度で済めばいいが、もし万が一、大勢の前で失禁するようなことがあれば不登校になりかねない


理想としては深夜になる前に睡眠薬を使って寝ておくことだ、そうすれば怖い思いをしなくて済む


「そういえば石動はこういう話は平気なのか?怖いものとか、幽霊とか」


「あぁ、その類は正直あまり信じていないというのが正直なところだ、精霊などと違って私は今まで見たことがないからな」


要するに見たことがないものは信じないということでもあるが、おそらく石動は見たところでまったく動じないだろう


静希程ではないにせよ彼女もまた人外をその身に宿している


人外への対処法というとまた別の意味になってしまうが、ある程度の知識は持っているかもしれない


思えばこの家に神格、悪魔、精霊、霊装、幽霊という人外が大量にそろっているのだ


かなり貴重なことなのだろうが、確実に悪い意味だと断言できる


ここに妖怪や天使などでもいたらまさに人外パーティーでも開けただろうに


天使や妖怪がいるかどうかは定かではないが


「じゃあそろそろ部屋に引っこみましょ、なんかあったら電話で連絡するから、暇つぶしておいて」


「了解、明利気をつけろよ?」


にやにやと笑いながらそういう静希に少しだけ不機嫌になった明利はプイッと視線をそらしてお休みとだけ言って走って行ってしまう


「なんだ静希、今回やたらいじわるじゃんか」


「まぁな、これでさっさと寝てくれればこっちとしては助かるよ・・・何せ怖がった明利は近くのものを離そうとしないからな・・・」


昔眠れなくなった時の明利の話は徹夜をしただけでは終わらなかった


徹夜してさすがに眠くなりすぎて昼過ぎごろにようやく眠りについたのだがそれまでずっと静希の服の裾をつかみ、眠った後も数十分その手を離せなかったのだ


どれだけ強い力でつかんでいるんだと不思議に思うほどに強く握られた手に辟易したほどだ


「あぁなるほど、雪さんを連れてきたのはそのためか」


「その通り、事情を知ってて明利には寛容で、時間の都合もつく、抱き枕代わりってわけだ、雪姉からすりゃご褒美だろ」


もし怖い思いをしたのなら面倒になる、その面倒は明利自身なのだ


一日手を離すことを許さないというのは結構大変だ


特にトイレや着替えなどには非常に苦労した


静希が男だったからこその苦労だが、その点雪奈ならば同じ女性、多少の融通は利くのである


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