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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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入浴後のひと騒ぎ

「へぇ、お前ら猥談してたのか」


突然の声に明利と石動はとっさに顔を上げる


そこには上気した頬をした静希が立っていた


「あーいい湯だった、あれ?明利と石動もう平気なのか?」


そしてその後ろには遅れて陽太もやってくる


女子と違い非常に早い入浴だ、だがまさかこのタイミングでやってくるとは思っていなかった為に明利と石動は震えながら思考を停止してしまっている


「んぁ?おい静希、こいつら何で固まってんの?」


「いやぁ聞いてくれよ陽太君、こいつら実はさっき」


「「ストォォォォォォップ!」」


静希が言葉を紡ぎ終える前に明利と石動が静希に飛びついて取り押さえる


身体の不調など何のその、自分の恥が晒されることに比べれば些細なことであるというかのように俊敏な動きを見せた二人は見事な連携を見せて静希にそれ以上の言葉を出させなかった


明利は口を、石動は身体を拘束し完全に身動きさえもできない状況に仕立て上げる


「こいつらさっき、なんだよ」


「なんでもない!なんでもないぞ!な!幹原!」


「う、うんそうだよ!なんでもないよ!」


静希を拘束した状態で必死に場を取り繕おうとしている二人は非常に怪しい、焦っているのが声に出ているうえに挙動も不審だ


陽太が深くものを考えないタイプでなければ一発で気づかれていただろう


「で、雪さんたちは?どっかいったのか?」


「あ、雪奈さんだったら雨戸閉めに行ったよ、結構雨が降り始めたから」


なるほどなと言いながら陽太は台所に水を飲みに行ってしまう


この間もずっと拘束され続けている静希はわずかに抵抗を見せているが、女子とはいえ二人がかりでのしかかられていては振りほどくことなどできなかった


「・・・五十嵐、いいな、あのことでもし口を滑らしてみろ、お前の五体をバラバラにしてやるぞ」


ずいぶん物騒な物言いだなと口をふさがれた状態でため息をつく


「お、お願いだから言わないで・・・わ、猥談って言ってもそんな大したものじゃないから!ね!?」


明利が涙ぐみながら説得しようと試みているものの口を押えられている静希としては肯定も否定もできない状況だ


せめて口から手を放してほしいのだがと思いながら唸るのだが、どうにも正しくこちらの意図が伝わっていないようでまったく拘束を解くつもりはなさそうだった


「・・・あんたたち何やってんの?」


不意に後ろから声がして静希に馬乗りになっている二人が振り返ると、そこには明らかに不審者を見る目を向ける鏡花がそこにいた


どうやら雨戸を閉める作業を終えて戻ってきたようなのだが、タイミングが最悪だ


「いやぁ、すごい雨だね、こりゃ明日も・・・ってどったの鏡花ちゃ・・・」


そしてその後ろから雪奈が居間に戻ってくる


その視線は鏡花から居間で静希に馬乗りになっている明利と石動に注がれる


この状況を見たら普通の人間はどう思うだろうか


明利は静希の胸部分に乗って口を両手でふさぎ、石動は静希の腹部分に乗って体の動きを封じている


「め、明ちゃん達が静を襲ってる!?」


体を震わせながら叫ぶ雪奈の驚愕の表情と声に明利と石動は一瞬目を合わせて再び雪奈のほうに目をやる


「ち!違います!雪奈さん!これにはわけが・・・!」


「どんな訳があればうら若き乙女が男子高校生に馬乗りになってるような状況ができるのさ!私だってそんなことしたことないよ!踏まれたりすることはたまにあるけど!」


さりげなく自分が静希から受けている事柄をばらしてしまっているのだがそんなことはさておき、確かにどんな事情があれ馬乗りになるような状況はあまりない


あわてまくる明利と石動、そして気が動転してしまっている雪奈をよそに鏡花は頭を抱えてしまっている


「お、二人とも戻ったのか・・・ってどうしたんだ?」


水の入ったコップを持って陽太がこの惨状に戻ってくるのだが、陽太が戻っていることにも気づけないようで雪奈はああだこうだと喚き、明利と石動が何とか釈明しようと奮闘している


「あぁちょうどいいところに、あれの説明してくれない?今戻ったばっかで状況が理解できないのよ」


比較的冷静な思考を保っている鏡花が状況を見ていたであろう陽太に声をかけるのだが、当の陽太は特にあわてた様子もなく水を飲む


「あぁあれ?静希がなんか話そうとしたらいきなりあの二人が襲い掛かったんだよ、それだけ」


陽太らしい簡素な説明に鏡花は頭を抱えてしまう


まったく状況がわからない、というか陽太も状況を正しく認識していないのではないだろうか


「・・・明利・・・石動さん、そういうことは家に帰ってからゆっくりしてくれると助かるわ」


「鏡花さんまで!?違うよ!誤解だよ!」


「これはなんだ!?一種の侮辱か!?何度違うといえば気が済むんだ!」


もはや考えることを放棄した鏡花の言葉に馬乗り状態のままの二人が強く反論する


だがその状態で何を言っても何の説得力もないというもの


結局、静希の口と体が解放されたのは騒ぎを聞きつけた城島が居間に戻ってきてからだった


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