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J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」

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入浴時の反省

「石動さんはもう平気なわけ?結構つらそうだったけど」


「あぁ、問題ない・・・と言いたいが、この様だ、情けないったらない」


身体に力を入れるのだが、まだうまく立つことができない


頭に正しく血が流れていないのか、それとも貧血にでもなっているのだろうか、平衡感覚が正常とはほど遠い状態になってしまっている


少し身体を動かす程度なら問題ないが、立ち上がったりはできなさそうだった


静希が頭の上に置いてくれた濡れタオルを手にとって首回りや腕を軽く拭いていく


汗などをぬぐいながら冷えたタオルで水分を適度に付着させたために、窓から入る僅かな風で十分に涼を得ることができた


「いやぁ、ダメダメになっちゃった明ちゃんも可愛いもんだね、こんなになるのは間違ってお酒を飲んだ時以来かな?」


「あまりいい話じゃないですね、未成年だってのに」


未成年で多種にわたる資格を取ることができる制度があっても、未成年での飲酒や喫煙は一部例外を除き固く禁じられていた


その一部とは能力で酒やタバコを使用する場合のみである


だがそれ以前に鏡花は明利が酒を飲んだことがあるという事実に驚いているようだった


「あれは事故だよ事故、何年か前の夏に辛い物の我慢大会してたんだけどさ、その時一緒に親達が飲み会しててさ、そのお酒が私らの水と混じっちゃったらしくて、明ちゃんが水と間違えて一気飲みして・・・」


数年前と言うと最悪小学生の時代にまでさかのぼる


そんな幼いころに一気飲みなど危険きわまる行為だ


アルコールによる後遺症がなくて何よりである


「あんときは酷かったよ、突然笑い出したり泣きだしたり、怒りはしなかったけど・・・なんというか・・・やきもち焼きさんになったり、あとは甘え出したり・・・あんなにダメダメになった明ちゃんはあの時限りだと思ったけど」


普段からおとなしい明利はそれほど強い感情を誰かにぶつけるということが少ない、誰かにぶつけるどころか表に出すこと自体珍しい


そんな明利が笑ったり泣いたり、やきもちを焼いたり甘えたり


あまり想像できない姿だった


だが見てみたい気もする


今度意図的に酒を飲ませてやろうかといくつか案を出すが、そんなことがばれたら静希に何をされるかわかったものではないと気付き全面的に撤廃する


「その時の被害者は主に静希ですか?」


「いんや、私と陽もだよ、私には泣きつくわ、陽には大爆笑して背中を叩くわ・・・終いにゃ静に突っかかって何か言ってそのまま眠っちゃうわ、大変だったよありゃあ」


普段感情をそこまで表に出そうとしない分、たまっていた物が一気に噴き出したのだろう


一気飲みとはいえ明利がそこまで酒に弱いとは予想外だった


同調などの能力を使っていくらでも分解できそうなものなのだが


当時はそれほど能力を使いこなせていなかったのだろうか


そんなことを思いながら明利の顔を覗き込んでいるとゆっくりと明利が目を開ける


「あれ?鏡花さん?静希君は・・・?」


「おはよう明利、静希達なら風呂に行ったわよ」


ようやく明利も回復してきたのか、鏡花の手を借りてゆっくりと体を起こす

まだ頭がふらふらするのか、視線を上下左右に動かしながら自分の身体の状況を確認しているようだった


「鏡花さん・・・水・・・飲みたい・・・」


「はいはい、今持ってくるわ」


明利の言葉に鏡花は立ち上がって台所へと向かう


思考のまとまらない頭でも最低限のことは把握できたのだろう、とりあえず水分が足りないと判断したのか、体内温度が高いと判断したのか、明利は水分を要求した


鏡花は急いで台所から水の入ったコップを二つほど持ってくる


「はい、石動さんも飲んだ方がいいわ、汗かいて水分抜けてるでしょうから」


「あぁ、ありがとう」


鏡花から受け取ったコップを傾け、二人はすぐに水を飲み干してしまった


それから数往復、明利達の喉が潤うまで水を飲ませる作業は続いた


「ふぅ・・・ありがとう鏡花さん、だいぶ楽になったよ」


「そう、それならもう、これから長湯はしないことね」


「う・・・うん、気をつけるね」


痛いところを突かれたのか、明利は気まずそうにしながら石動と同じように壁を背にして座り込む


外から入りこむ風と一緒に、小さい水滴が落ちる音が徐々に聞こえ始める


それはだんだんと多くなり、やがて雨の音へと変化していく


「あら、雨降ってきたわね・・・雨戸閉めるの手伝ってくれるかしら?」


「わかりました、雪奈さんいきましょう」


「はいよ、二人は休んでてね、動いちゃだめだよ」


二人がその場からいなくなるのを見送って明利と石動は僅かにため息をつく


しなくてはいけないことがあるのに手伝えない我が身がもどかしくて仕方がなかった


「すまなかったな、私のせいでお前までのぼせさせてしまった」


「ううん、こういう話って新鮮だったから・・・今度話す時は場所を考えなきゃね・・・」


その言葉に石動は少しだけ気が楽になったのか、苦笑しながらゆっくりと身体を横にして明利の方を向く


「そうだな・・・では次に猥談をするのはのぼせる事のない場所にでもするか」


「わいだ・・・・・・そ、そう・・・だね・・・」


少しだけ照れながら、明利もまんざらでもないようだった


女の子とはいえ、そういう話題にも興味があるのは仕方のないことだろう


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