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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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才能と才能

「どうする?このまま捕まえちゃう?」


目標地点まであと少しだが、少女の消耗もかなり大きいようで少し荒く息をついているのが見える


疲労困憊


山の中で何日も過ごしてしかもろくに栄養をとっていないのだ、体力が残っているとは考えにくい


「できるならそうしたいな、俺が突っ込むから捕獲チャレンジ、できんのかよ?」


「誰に物を言ってるの?あんたこそヘマしないでよ」


互いに鼻で笑いながら陽太は再度目標の少女に向けて突っ込む


それと同時に背後から土の腕が目標めがけて襲いかかる


同時攻撃、跳躍してもはたき落とす準備は万端


だが目標の動きは今までのそれと大きく異なるものだった


身体をひねり大きく回転して腕を振るう


瞬間的に、何も考えずに陽太は跳躍する


なぜそうしたのかわからない


接近していた土の腕は水平に両断され、地面に転がった


美しいと形容してもいいほどの断面図


陽太も跳躍していなければあの腕と同様になっていただろう


寒気を覚えながら陽太は口笛を吹く


陽太が着地すると目標は何ら変わらず威嚇をし敵意を放っている


「あれがフェンスを破壊した能力ね、広範囲な切断・・・」


「冗談じゃねえよ、あんなもん当たったら上半身と下半身がサヨナラバイバイしちまうよ」


陽太の能力は打撃などには強い防御と耐性がつくが、物理的な刃を除き、現象的な斬撃にはめっぽう弱い


無論、無強化状態よりはましになるが、それでも高が知れている


だがどうやらあの攻撃はずいぶん体力を消費したようで少女の息はどんどん荒くなっていく


「あれを何回か誘発させられれば捕獲もできるかもね、陽太突っ込みなさい」


「ふざけんな、俺の上半身はまだ下半身とは不仲になってねえんだよ、簡単に離れられるか」


一直線の打突や一定範囲の衝撃型の爆発などは陽太にとって回避は容易い


だが先ほどの攻撃を見る限り効果範囲がどれほどなのか分からないうえに、前後左右、ひょっとしたら上までカバーできるほどの広範囲の攻撃かもしれない


その場合陽太がその場所から攻撃を加えても確実に迎え撃たれる


一発なら避けられるが、連続して使われた場合、陽太は先ほどの土のように綺麗に両断されることだろう


現状二人での捕獲は難しい、熊田は無線で静希達とやり取りをしているため戦闘には参加できない


少女があの能力を見せたというのは、威嚇とけん制の意味を強く持っているのだろう


これ以上近付けば、攻撃をすればまたあの技を使う


獣において牙をむく行為と同じ、自分の力を見せて他者を圧倒しようとしている


あれほどの能力の多様性を見せている、発現系統で単一能力のはずなのにあの幼さで獣と化してしまっているこの状況で


エルフとはこういう生き物なのだろう


威力だけでなく、その技さえも洗練された能力使用のスペシャリスト


末恐ろしいの一言に尽きる


だが、牙をむくという行為は逆に言えばチャンスでもある


強い威嚇は自らが危険に陥った時にする行動でもあるのだ


つまり少女は、本能的に今の状況を危険と判断したということになる


「ねえ陽太、ちょっとだけ本気出していい?」


「本気?」


「えぇ、合図があるまで、それまで私にやらせて」


「援護はいるか?」


「たまに気を引いてくれればいいわ」


「わかった」


鏡花は掌をゆっくり地面について集中する


「鬼ごっこを始めましょうか?お嬢さん」


瞬間、目標を中心に大量の腕が作り出され、一気に襲いかかる


少女は跳躍し咆哮を放って土の腕複数に大規模な衝撃を与え破壊するが、破壊された分だけ腕を補充し休ませる気もなく襲いかかる


衝撃、跳躍、斬撃、着地、鏡花による攻撃と陽動


陽太が入る隙さえなかった


回避されてもお構いなしの物量攻撃


地面が陥没したらすぐに回避された土を元に戻し、再度腕や柱を作り出し少女に向ける


能力の使用頻度が高すぎる


一つ二つではない、何十と繰り返して制御、行使している


今まで鏡花が手加減していると静希が言っていた意味がようやくわかった


陽太にも静希にも明利にもない、確固たる才能と呼ばれるそれが鏡花にはある


天才


その言葉が陽太の頭をよぎった


ひと際大きな衝撃と風があたりを突き抜けて周囲にあった腕を一掃した瞬間、陽太が突っ込んで攻撃を繰り出すが大きく跳躍して簡単によけられてしまう


だが、それさえも鏡花にはお見通しだった


跳躍を見越して伸びた腕が目標に向かい、死角から少女を掴み捕縛する


「捕まえた!」


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