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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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その声を聞いて

江本が気絶するのを確認し、静希はすぐさま自らの能力を確認していた


先ほどまで自分達に猛威をふるっていた能力は、今や静希の制御下に戻っているようだった


右手を集中することでいつものようにトランプを顕現させることができる


どうやら江本を気絶させることでその能力から解放されたらしい、一度意識を絶たれるとマーキングや能力が解除される能力は珍しくないが、自身に能力の制御が戻ったことに安堵していた


『メフィ、邪薙、聞こえるか?』


確認の為にトランプの中にいる人外達に意識を飛ばすと彼らは平然と声を返してきた


『あら、その様子だと終わったみたいね、どうだった?』


『怪我などは無いようだな、どうやら杞憂に終わったようだ』


二人のいつもと変わらぬ様子に静希は苦笑しながらため息をつく


『こんなにお前達の声が聞けて良かったと思うのは初めてだよ、まったく・・・』


嬉しいこと言ってくれるじゃないと軽口を言ってはいるものの、はっきり言ってかなり危ない状況だった


静希の言っていた四割の負ける可能性、それは静希の所有する武装に江本が気付くかどうかだったのだ


静希のトランプが内包している中で、生き物を即死に至らせることが可能なものはいくつかある


硫化水素、光、拳銃


この中で万が一にも硫化水素をばらまかれた場合、静希達にはなす術がない

精々息を止める程度だろうか


それでももし静希の視界の外でトランプの中身を解放されたらそれこそ未曾有の惨状になっていただろうことは確定的に明らかである


危険なのは静希達だけではなく江本もである


さらにばれてはいけないものが二つ


悪魔メフィストフェレスと神格邪薙


この二つが存在している事が江本に知られればそれこそ事故に見せかけて命を奪う事も考えていた


「あぁもう・・・やたらめったらばらまきやがって・・・」


静希のトランプの中に入っていた雑貨や貴重品が辺りにばらまかれている中、静希は持っていた手錠で江本の両手を拘束する


「陽太、ロープでこいつを縛っておいてくれ、俺ちょい色々と回収してくる」


「了解、向こうには連絡付けとくぞ」


頼むと告げながら静希はあたりにばらまかれたままの物を回収し始める


もはやどこに入っていたかなど記憶していないが、雑貨ならまだしも貴重品は必ず回収しなくてはならない


近くに見えるものは即座に遠隔操作で回収し、僅かに土に埋もれてしまっているものは拾って土を軽く払ってからトランプの中へと収納していく


契約書やら通帳やら判子やら、なくしてはいけないものが大量にあったのに酷い有り様だ


二、三発殴っておけばよかったなと思いながら地面に落ちた物資を回収していくと静希の無線に待機していた二人から連絡が入る


『静希君、大丈夫?』


明利の声に少し安心しながら静希は安堵の息を吐く


「あぁ、俺も陽太も怪我はないよ、今から戻る」


『静希、目標はちゃんと拘束した?』


今度は鏡花の声が耳に響き、江本の身体を厳重に縛っている陽太を見て苦笑する


「あぁ、問題なく終わったよ、先生への連絡は任せてもいいか?」


『それはいいけど、早く戻って来なさい、気絶させたって何時目を覚ますか分からないんだから』


了解と告げながら静希はあたりにもうなにも落ちていないかを入念に調べ何もないことが確認できるとトランプの中からフィアをとりだし能力を発動させる


フィアの背に江本を乗せて落ちないように固定させ、少しずつ山を登って待機地点まで戻ることにする


明利と鏡花と合流した後、静希達はまた山を登り公道へと出ていた


ようやく確保できた目標に静希達はかなりの疲労を強いられていた


肉体的疲労よりも精神的疲労の方が大きい


何せ自分の能力が奪われたかもしれないという衝撃的な状況に陥っていたのだ


今はもう普通に能力を使えているために鏡花の能力を発動して江本の身体を岩で覆い、誰とも接触できないようにしていた


せめてもの情けで息ができるように穴だけは開いているがそれ以外は全く身動きできないような形になっている


「結局あんた、せっかく銃が手に入っても使えなかったわね」


「使わない方がいいって・・・でもまさか全く使えない状況になるとは思ってなかったよ、先にだしときゃよかったな」


トランプからの出し入れができなくなる状況というのは静希にとっては非常に珍しいものである


だからこそ油断していたのだが、これからはこんなことがないように一丁くらいはちゃんと装備しておいた方がいいのかもしれない


「ねえ鏡花さん、これちょっとかわいそうじゃないかな?」


「あぁん?いいのよ、私達にさんざん迷惑かけたんだからこのくらい当然なの!」


明利は岩に封じ込められている江本を見て同情しているようだったが鏡花としては有り余る怒りと不満をぶつけているようだった


力があるのにそれを発揮できないというのは多大なストレスだっただろう


特に鏡花の場合完全に油断していたからこそのこの結果である、恐らくは自分が許せないのだろう


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