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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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賭けと確信

静希と陽太は明利の索敵によって得られた情報から、全速力で江本の下へと向かっていた


相手も同調系統に似たものである可能性がある以上、感知されるのは覚悟の上


剣を持った静希と明らかに殴るつもり満々の陽太が現れたことで江本は僅かに眉間にしわを寄せていた


「勝てない相手には立ち向かわないんじゃなかったっけ?」


「勝てそうなら策を講じて、とも言ったぞ」


その言葉に江本は周囲に視線を向ける


何か策があるのだろうかと窺っているのかもしれない


静希の装備はオルビアの剣、そして腰にスタンバトンを挿している、江本の方からは見えていないだろう


対して陽太は素手、装備など彼が持っているはずもなく拳の握りを確認しながら今か今かとタイミングをはかっている


「こちらに危害を加えた以上、悪いが腕の一本や二本は覚悟してもらう」


剣の切先を江本に向けて鋭い殺気を飛ばす、雪奈やオルビアには劣るが、静希も毎日のように彼女達と訓練を重ねその殺気を身体に浴びてきたのだ


再現まではいかずとも、真似事くらいならばできる


そして中学生で実戦をほとんど知らない江本にとっては十分な威嚇行為としての役割を果たしたらしい、その体の周りに静希のトランプを大量に展開する


静希は僅かに眉をひそめる


自らの考察内容があたっているか、それとも間違っているか、未だにその確証は得られていない


もう少し、もう少し必要だ


静希と陽太は互いに視線を交わし、同時に動き始める


陽太は右に逸れ木々を盾にしながら江本の背後へと、静希はまっすぐ、剣を振りかざしながら急接近する


「こっちくんな!」


江本の声と共にトランプの中からいくつもの物体が射出される


それは幾多もの静希の私物


判子、通帳、財布にいくつかの硬貨や書類


江本が前に出して中身をぶちまけたのはダイヤシリーズ、静希が貴重品などを入れておくトランプだった


そう、静希の能力は中身とその用法を正しく記憶していないとまったく意味がない


それこそ静希が呼ばれていた『引き出し』以上の意味がなくなるのだ


「なんだよこれ!?」


「残念!俺の能力はそこまで使い勝手がよくないんでな!」


大きく剣を振りかぶり江本の足に向けて斬りかかる


大きく体を捻り、転がるように何とかして回避する江本に背後に回ってきた陽太が襲いかかる


「く、くるなぁ!」


江本の悲鳴と同時に現れたトランプ、それはハートシリーズだった


「っ!陽太横に跳べ!」


「っ!?」


静希の怒声が陽太の耳に届き殴りかかるのを中断して横へ跳躍するのと同時にハートシリーズの中身が外部へと姿を現す


お湯、非常食、箸やフォーク、カップに紅茶葉、そして猛烈な勢いで二枚のトランプから大量の釘が射出された


静希の指摘がなければ陽太は釘まみれの姿になっていただろう、冷汗をかきながら木の陰に隠れながら釘の猛攻を防いでいる


「あ・・・あはは・・・なんだよ、こんな便利なのもあるのか!」


使える武器があったことに喜んでいる江本に対して静希は舌打ちしていた

できるならばあれに気付く前に倒しておきたかった、理想としては無傷でスタンバトンを当てることだがそれは難しいだろう


まずは足に攻撃して動きを奪い、そこから即座に決めるつもりだったのだが、武器に気付かれた


だが、今ので確証は得られた


「どうしたの?いきなり隠れたりしてさ!?策を講じるんじゃなかったの!?」


武器を手に入れてすっかり気を良くしたのか江本は立ちあがって喜々としながら周囲にトランプを飛翔させている


最初はぎこちなかったトランプの動きが徐々に滑らかになっていっている、少しずつ使用法を学んでいるのだろう


そんな中、木の影に隠れている静希は冷静だった


定期的に無線で連絡を入れながら残してきた鏡花達の位置をしきりに確認する


「高校生って言っても大したことないな!能力奪われればなにもできないのか!?」


江本の叫び声が木々に反響しながら静希と陽太の耳に入りこんでくる


僅かな不快感を覚えながらも二人は移動をやめない


今突っ込めば蜂の巣状態になってしまう


あんなに釘を入れておくんじゃなかったなと思いながら静希はため息をついた


そして僅かに視線を江本のトランプに向けながら心の中でカウントダウンを始める


それは少しずつ進む


確実に、江本が能力を使っていくたびに進む


カウントが一定以下になった時静希は木の陰に隠れ息を整えながら隣までやってきた陽太に視線で合図を送る


陽太もその内容を理解し頷いてから呼吸を整え始める


そして静希は動きだす、江本に向けて確信を投げかける


「お前の能力・・・相手の能力を奪うことじゃないな?」


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