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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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脅威と撤退

相手の能力を奪う


静希がその可能性と条件に気付いたのは鏡花が陽太に向けて押されたのを見た時だ


能力の発動条件は人によって異なる


例えば明利の場合、マーキングするためには必ず触れなくてはならない


ただし触れる部位は全く関係なくただ直接触れていればマーキングし、同調が可能となる


だが江本の能力は触れる部位が恐らく限定されている


頭部、または首から上の部分に直接触れること


どこに触れても能力を発動できるのならわざわざ頭部に狙いを集中する必要はない


仮に陽太の顔に受けた拳が偶然だったにしろ、投げる、押すと言った動作にわざわざ頭を触る必要性は無い


だからこそ警戒していたのだが、鏡花の能力を利用されては静希に勝ち目などない


恐らく、同級生と喧嘩した時も相手の能力を奪った状態から一方的に攻撃したのだろう


そして搬送車両から脱出する際、軍人男性は頭突きをされたと言っていた


彼はそのときすでに能力を奪われていたのだろう、だからこそ能力の発動ができなかった


そうなってくると持っている能力の性能が違いすぎる


現在江本が持っていると推測される能力は陽太の藍炎鬼炎、鏡花の万華鏡、そして監督役の軍人男性の所有していた斥力、江本の同級生で被害者の未確認能力、そして静希から奪った歪む切札


最低でも五つの能力を保有しているなど冗談ではない、能力を奪われた時点でほぼ勝敗が決定してしまったようなものだ


対能力者用の能力


はっきり言って危険な能力だ、これ以上ないほどに


あらかじめオルビアとスタンバトンだけでも取り出しておいて正解だった


明利を真っ先に逃がしたのは索敵の使える明利だけでも能力が奪われることを防ぎたかったからだ


山の中で目標をこれ以上見失うという事だけはあってはならない


剣を江本に向けながら静希も明利達が走って行った方向に少しずつ移動する


「不利と見たら逃げるんですか?結構情けないですね」


「勝てない相手には立ち向かわない、勝てそうなら策を講じる、実戦で生き残るための常套手段だよ」


静希が剣を向けているとその後方から白い球のようなものが江本に向けて高速で飛んでくる


突然の物体に江本は反応しきれずに手で防御するとその球が破裂し中から白い粉のようなものが飛散しだした


その隙を見て静希はオルビアを鞘にしまって一気に走りだす


どうやら静希の後方十mほどのところに隠れていた三人が何かを投擲したようだった


結果、江本の注意を一時的に逸らすことには成功した


「逃すか!」


江本が鏡花の万華鏡を発動する


周囲の地面が一斉に変換され静希達を追いたてる


それを見て少し後ろにいた陽太達も一斉に逃げ出す


「おい鏡花!お前の能力って効果範囲何mくらいだ!?」


「分かんないわよ!少なくとも二十や三十は余裕で届くわ!」


辺りの木々をなぎ倒しながら地面がまるで津波のように襲いかかってくる中静希達は全力でその場を離脱する


しばらく一心不乱に走っていると、やがて後方からの木々のなぎ倒される音が聞こえなくなる


諦めたのか、それとも万華鏡の効果範囲から遠ざかったのか


「にしても・・・油断したわ・・・能力を奪われるなんて・・・!」


「まったくだ・・・本当に全然使えねえぞ」


今まで経験した事のない能力をまったく使えない状態に陽太と鏡花はかなり落ち込んでいるようだった


以前魔素の少ない島に流された時も、多少の能力は使用できた


だが今回はまったく使えないのだ


今までの人生のほとんどを能力者としてすごしてきた彼らにとって失った物はあまりにも大きい


「そういえばさっきの粉なんだ?注意は引けて助かったけど」


「あれはキノコの胞子をハンカチで包んだの、マーキング済みで江本君の体に付着したから、もうどこにいても索敵できるよ」


どうやら明利もただ逃げたわけではなく、事前に用意していたものを使って自分にできることをしていたようだ


この状況で相手の居場所が確実にわかるというのは実際有り難い


その代わりに静希達は能力を奪われたわけだが


「どうする静希?居場所を特定できるなら後は警察に任せても問題ないと思うんだけど?」


「確かに、このまま突っ込むのは流石に無謀だと思うぜ、撤退しろとまでは言わねえけどさ、なんかねえの?」


能力を奪われたのは静希、陽太、鏡花


戦闘要員が全員戦闘不能状態になっているに等しい、はっきり言ってかなり危険な状態とも言える


「まずはおさらいだ、相手の能力はたぶん同調系統、頭部に触れることで触れた相手の能力を奪うことができる」


「軍の人は頭突きされたって言ってたんだっけ?そうすると触れる場所はどこでもいいわけじゃなくて頭限定?」


「だとしたらあいつ最強の能力者じゃねえか、能力使い放題だぞ、勝ち目ゼロじゃんか」


陽太の言葉に静希は首を振る


今わかっている情報だけでも読み取れることはたくさんある


何より静希は負けるとは思っていなかったし、まだ負けたとも思っていなかった


「少なくともあいつの能力は、誰かの能力をそのまま奪う事ができるってわけではないみたいだぞ?」


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