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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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尾行 テクニック 接触

数分間走って静希達は明利が確認した地点までやってきていた


ここからさらに陽太に投擲してもらい周囲への索敵を広げていく


軽く周囲の状況を観察してみると草木が妙な形で折れていたり倒れているところがある


どうやらこの辺りを移動したらしい


その近くには足跡らしきくぼみもある


「普段人が入らない山だと追跡が楽ね」


「不幸中の幸いだな、このまま追うぞ」


一列縦隊の形を保ちながら静希達は全速力で足跡の主を追い掛ける


足元に気をつけながら移動し続けていると先頭を走っていた陽太が足を止めた


「どうした?」


「・・・足跡がなくなってる」


陽太の言葉に静希達は周囲の地面を注視する


先ほどまであった地面のくぼみや通過した形跡などが完全になくなってしまっているのだ


「どういうことだ?明利、さっき投げた石に通過した反応はあったか?」


「えっと、この先百メートルくらいにある石に反応はなし、通過した形跡もないよ」


自分達よりも先行していたのにもかかわらず突然形跡が消える


人が通る以上必ずできる歩くという形跡、その程度を見逃すほど陽太の目は衰えていない


仮面を外してしっかりと周囲を確認してみるも続いている形跡は確認できなかった


「どうなってんだ?空でも飛んだか?」


「能力的にはおかしくないでしょうけど・・・だとしても近くの植物に全く触れずに?」


地面だけでなく少し高いところにある植物の枝などにも注意を向けてみても折れたりしているような異常は見受けられない


完全に忽然と痕跡が消えてしまっているのだ


「・・・バックトラックでも使ったのかな?」


「なんだ?トラック?」


「バックトラックよ、野生動物が尾行の目を欺くテクニックの一つ」


明利の言葉に陽太は目を白黒させているが、静希と鏡花は状況を整理し始めていた


バックトラック


鏡花の説明通りこれは動物が尾行の目を欺くテクニックの一つである


自分が歩いた足跡の上に正確に足を置きながら後退する技である


そしてある程度後退してから跳躍し突然痕跡が消えたように見せかけるものだ


巣の場所を天敵などにばれないようにするために野生動物などが行う習性である


山や森のように足跡が明確に残る反面、落ち葉や枝などでその深さが確認しにくい状態では非常に有効な手ではある


「だけど足跡に不審なところは無かったぞ、近くに別ルートで枝が折れてるところもなかったし」


足跡に集中していた陽太と違い静希はどちらかと言えば木々の異常に目を向けていた


途中で進路の変更があってもおかしくないために左右の方向にある枝には特に気を使っていたのだ


結果、途中で進路を変えたような形跡はなく、ここまでまっすぐの道だった


しかも明利が目標の姿を捕らえてから静希達はかなりの速度でここまで来た、多少バックして方向を変えるには少々時間が足りないように思える


「しょうがねえな、もう一回あたりに石を投げてみるわ、明利、種くれ」


陽太は鏡花に仮面を預け、明利の種を受け取ると軽く能力を発動し木々のない上空を目指して跳躍する


せっかくの手掛かりがなくなってしまった以上また明利の索敵に頼らなくてはならない


全くどういうことなのだろうかと悩んでいると頭上から陽太の驚いたような悲鳴が聞こえる


三人が上を見ると能力を解除した陽太が真直ぐに落下してきているのが見えた

鏡花はすぐさま能力を発動し落下してくる陽太を土の腕でキャッチし地面に投げた


「あんた一体何やってんの!」


危ないでしょうがと続ける前にもう一つ、何かが落下してきた


全員がその方向に目を向けると、そこには資料にあった江本高貴がいた


どうやらバックトラックを使ったわけでも跳躍したわけでもなく、木の上に登って隠れていたらしい


どうやったのかと聞きたくなるところだが、近くには木々が山ほどある、上りやすい木を選択して上ったのだろうか、彼の手はかなり汚れていた


身長は百五十半ばと言ったところだろうか、そこまで高い身長ではないが、恐らくまだ成長期が来ていないのだろう、そしてかなり細身だ


どうやら肉弾戦が得意なタイプではないと見受けられる


一瞬全員の思考が止まる中、陽太だけが勢いよく立ちあがり怒りを燃やしていた


「あの野郎・・・!いきなり殴ってきやがって!」


陽太の顔を見るとその頬は僅かに赤くなっている


どうやら突然目の前に現れた江本を傷つけまいと能力を解除した隙に顔面を殴られたらしい


「陽太落ちつけ、鏡花、捕縛するぞ、明利は近くの植物にマーキングしながら後退してくれ」


オルビアを引き抜きながら静希は江本を囲むように少しずつ散開する


「・・・あんたたち・・・能力者だろ」


江本から聞こえてきた声は随分と幼い


男子中学生にしては少し高すぎる、変声期もまだなのだろうか


どちらにせよ暴行を加えてしまった以上捕らえるしか道はない


「お前がやった事の意味はわかってるな?今この場で拘束する、下手に暴れるなよ?怪我はさせたくない」


静希の言葉に江本はつまらなそうな顔をしてため息をつく


そのあと大きく笑ってみせた


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