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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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412/1032

現場の調査

現場に到着するとそこには路肩に駐車している二台の護衛車両と後部の扉が大きく破壊された搬送車両があった


静希達の乗っている車も路肩に停車させて全員急いで車から降りた


近くにはおそらく今回の監督役として派遣されていたであろう男性が応急処置を受けていた


「明利、治療を」


「うん、任せて」


即座に怪我人に駆け寄り明利の治療が始まる


それと同時に近くにいた警官がこちらにやってくるのが見えた


「来てくれたか・・・すまないこちらの不手際だ」


「構いません、それより一体何があったんですか?」


恐らく彼らは護衛車両に乗っていたのだろう、引き渡しの時に何度か顔を見ていたために全員がその事に気付けた


「分からない、私は後部車両にいたのだが、搬送車両が止まって少ししたら突然護送車の扉が破壊されて少年が飛び降りて行ったんだ・・・」


「逃げた方角はわかりますか?」


「詳しくは分からないが、山を下る方角に向かったよ・・・あのガードレールを飛び越えていった」


状況を聞いている間に明利の治療が終わったようで軍部の男性が警察官に肩を借りながらこちらにやってくる


足を引きずっているところをみると恐らくは骨折しているのだろう


明利の治療は骨折などの重傷などは完全には治せない、彼は残念だがここでリタイアだろう


「明利、立て続けで悪いが索敵頼む、ガードレールの向こう側だそうだ、鏡花は明利の種を投げられる様にしておいてくれ、陽太はできた種を近距離、中距離、遠距離にばらまいてくれ」


静希の指示に全員が了解と告げて作業にかかる


対して静希は軍部の人間の下に駆け寄っていた


「喜吉学園の五十嵐です、一体何があったんですか?」


「あぁ・・・私にも・・・なにがなんだか」


どうやら怪我の影響で僅かに記憶に混乱が見られるようだ


頭も強く打っているかもしれない、早めに救急車を呼んだ方がいいだろう


「ゆっくりでいいです、なにがあったか教えてくれませんか?」


「・・・あの時・・・少年が気分が悪いと言って一時車を止めたんだ・・・そして・・・エチケット袋と飲み物を渡そうとして・・・熱がないか確認しようとしたら・・・頭突きされて・・・」


後部車両にいた警官の話では停車してから少しして護衛車両の後部ドアが破壊されたらしい、そしてこの男性の言い分を聞く限り恐らく気分が悪いというのは演技だろう


まんまとしてやられたという訳だがそれにしては対応がお粗末だ


「能力を使用されたんですね?どんな能力でしたか?」


「発現系統・・・だとおもう、私の能力に似ていた・・・斥力を・・・操っているように見えた・・・」


斥力、ということは発現系統の念動力に似た力だ、もっとも念動力のように応用性は高くなく、ただ押しつける、あるいは叩きつけるなどと言った用途に限定される


だが、限定された用途なだけに強力な能力でもある


現に護送車の後部にある搬送者の出入り口ともなる扉は大きく損壊している

留め金が外れかけ、窓ガラスも割れ、フレームも少し歪んでいる


よほど強い力がかかったのだろう


事前の資料にあった情報と比べると随分と印象の違う状況だ


「能力で反撃はしなかったんですか?軍部の方ならそれくらい・・・」


「すまない・・・頭を強く打ちつけたせいか・・・使えなかった・・・まったく情けない・・・」


男性は非常に悔しそうに、そして情けなさそうに首を垂れて歯を食いしばっていた


痛みに耐えているのか、屈辱に耐えているのか


どちらにせよこの状態のままは危険だ


警官にすぐに救急車を手配してもらい状況を整理していると休憩所の方からけたたましい音を出しながら猛スピードでやってくる車両が一台


それは静希達にあてがわれた車両だった、運転席には城島が乗っている


大きくドリフトしながら縦列駐車して見せた城島はしたり顔をしながら車から降りてくる


本当にこの人に運転させないでよかったと思いながら静希は彼女の近くに駆け寄る


「五十嵐、状況を報告しろ」


「はい、搬送者は具合が悪くなったと監督者に告げ一時停車させ、その隙を見て能力を発動、監督者を攻撃し搬送車両後部ドアを破壊、後に山のふもとへ向かって逃走したようです、現在陽太、明利、鏡花が索敵準備を開始しています、目標の能力は恐らく発現系統斥力発生、被害者は監督役の男性、脚部に重度の負傷を負っているらしく今救急車を手配してもらったところです」


静希の報告に城島は御苦労とだけ告げて周囲の状況を観察していた


静希の認識に齟齬がないかを今一度確認しているようでもあった


「お前達はこれから脱走した男子中学生を追跡しろ、私はあの木偶に変わって監督役を務める、予定を繰り上げて一般搬送者を先に移動させておく」


「え・・・いいんですか?」


今回の実習に城島が協力するとは思わなかった、基本は監督するだけが城島の立場であるはずなのだが


もちろん手伝ってくれることは非常にありがたい


搬送者の護衛と脱走者の追跡、班を二つに分けることも覚悟していたために静希からすれば願ってもないことだった


「向こうのスケジュールを大きく変更するわけにもいかないからな・・・それに・・・」


負傷している能力者軍人を見て城島はため息をつく


「不意打ちとはいえ大人相手に負傷させられる能力者だ、全員で行った方が危険も少ないだろう」


「・・・はい、ありがとうございます!」


軽く頭を下げ静希は鏡花によって石でくるまれた種を投げている陽太達の下へと向かう


ここからは全員で行動できる、面倒でもあり、有り難くもあった


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