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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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予感的中

車が留置所に到着し小学生の少年をしっかりと送り届けるまで、静希達は大きな緊張を強いられた


自分達の同類とも言える能力者を搬送するということと、能力者を見張る、そして外部からの何かも警戒するという三重苦を解くと全員から大きく息が吐き出される


「後もう一人を搬送すれば峠は越せそうね、明利、具合は平気?」


「うん、まだ大丈夫」


明利もさすがに少し慣れたのか顔色はそこまで悪くはなさそうだった


だが万全とも言えない


できるならしっかりと休ませてやりたいところだがそうもいかない


静希達は来た道を戻り休憩所までやってきていた


もう一人、今度は中学生を搬送しなくてはいけないのだ


やることが決まっているだけにシンプルなのだがどうにも気が重い


休憩所で待機している間明利に外の空気を吸わせているのだが、一向に目標が来ない


道でも渋滞しているのだろうかと予定の時刻を過ぎても待機を続けているが来る気配はない


どうしたのだろうかと心配になっていると護衛車両に設置されている無線から何度か連絡が入る


「はぁ!?どこで!?」


無線をとった警察官が驚きの声を上げると同時にあわてだした


何やら問題が発生したようで静希達もその様子を不安げに眺めている


「あぁ・・・わかった、すぐそちらに行く」


「どうしたんですか?事故でも起きたんですか?」


もし護送車や護衛車両が事故を起こした場合面倒になる、仮にも警察と能力者学校の合同の実習だ、マスコミに何と叩かれることやらと思案していたがどうやらその心配はないようだった


「護衛対象・・・いや、搬送者の中学生能力者が脱走した」


その言葉に静希達は唖然とし、鏡花は僅かに舌打ちをした


自分の中の勘が当たってしまったと悔いているようだった


「はぁ!?だって護送車内には監督者が付いてたんじゃ・・・」


今回の搬送には能力者も搬送し、なおかつ学校との合同ということで軍から一名能力者の監督役が派遣されていると資料にはあった


たかが中学生の能力者に監督役が遅れをとるとも考えにくい


「詳しくは現場に行ってからだ、全員車に乗ってくれ」


静希達は慌ただしく車に乗り込み移動を開始する


面倒事が起きるのは全員半ば予想していたが、まさか護衛対象が逃げるとは思っていなかった


一体何を考えているのか


能力者である以上自らの行いに対しての処罰はある程度覚悟しているはず


そして一度の拘留だけならばまださしたる問題ではない、だがそこから脱走したとなると話は変わってくる


いくら中学生とはいえ危険対象として能力者用の監獄に入れられても何ら不思議はない行動だ


なにより能力者全体の風当たりを強くしかねない


同じ能力者として絶対に止めなくてはならないことでもある


静希は携帯を取り出して城島に電話をかけていた


『五十嵐か、どうした?』


「問題発生しました、前半ルートで搬送者の中学生が脱走、今現場に向かっています」


報告する義務があるので一応伝えるのだが城島はさほど驚いている様子はなかった


予想していたのかどうかは知らないが、この落ち着きようは経験の差から来るものだろうか


『わかった、お前達は現場に到着次第、状況把握、中坊を捕獲することに専念しろ、私も現場に向かう』


了解しましたと通話をきって全員に今の会話内容を無線で伝える


やらなくてはならないことが増えたわけだが、それでも全員冷静だった


「鏡花、どう思う?」


無線の向こう側にいる鏡花に意見を求めると返答はすぐに、ため息交じりに聞こえてきた


『正直に言えば、嫌な予感的中、だけどちょっと想定外だったかも・・・警察が護衛してるときに面倒が起きるってのは予想できたけど・・・』


鏡花自身、ただの中学生が監督者と警察の護衛両方を振り切るとは思わなかったのだろう


少しだけ予想とは異なっているようだったが、こうなることを半ば勘づいていたのだろう


「どういう能力なら大人相手に切りぬけられるか・・・発現か・・・転移か・・・」


『でも同級生との喧嘩でも相手に軽傷しか負わせられなかったって資料にはあったわよね?そこまで強い能力とは思えないんだけど』


確かに、資料によれば同級生相手に軽傷を負わせたとしか書いていなかった

感情的になった喧嘩で手加減をすることができるならそもそも喧嘩などしない


何か決定的に抜けているように思う、何かが足りない


「現場を見ればはっきりするんだろうけど・・・どうにも腑に落ちないな・・・今回」


『そうね、気は抜かないようにしてたけど・・・いや、万全じゃなかったからこういうことが起こったっていうことね』


『これならコース前半部分にも索敵しておけばよかったね・・・』


無線の向こうから聞こえる明利の申し訳なさそうな声に静希はため息をつきながら否定する


「明利の負担をあれ以上増やしたらそれこそぶっ倒れてもおかしくなかっただろ、今回ばかりはしょうがない」


「そうだぞ、お前のせいじゃないんだからそんな声出すなって」


静希と陽太からの激励に明利は僅かに励まされたのか嬉しそうに声を返してきた


とはいえ明利の言う通り、前半部分にも索敵をしておけばすぐにでも異常に気付くことができたのも確かだ


初動も早くなる上にどの方向に逃走したのかも容易にわかる


そして鏡花の言う万全ではなかったというのもうなずける


もしいつものように万全を期していたのなら二つの搬送車両内に明利の種をしのばせるべきだった


その程度の余裕はあったのにそれをしなかったのは静希達の油断に他ならない


山岳地帯での行動は何度もやってきたが公道に近い場所での散策は全員が未経験


少し厄介かもしれないなと思いながら静希達は現場へと急いだ


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