始まる護衛
部屋に運ばれてきた食事を食べながら静希達は城島に先ほどの事の顛末を説明していた
ある意味部屋の中で武装をしていたということで説明を求められたのである
「アホか、そういうのは使用者が一番使いやすい形で使えばいいんだ、礼法作法なんぞはもっと歳食ってから考えろ」
なんとも城島らしい言い草に静希達は苦笑する
今までの話全てをぶった切るような内容なだけにどう反応したらいいものかと悩んでしまうのだ
「明日はノンストップで動くことになる、七時までには起床しろ、朝食は八時、九時にお前達が乗る護衛車両がこちらに届くことになる」
どうやら今回は静希達と警察、合計四台の護衛車両を使用するらしい
その方がタイムラグがないということなのだろうがなんとも豪勢なものだ
口にものを含みながらも返事をする四人の中で陽太がハッとあることに気付く
「そういや今回って見張りたてなくていいんじゃん!ぐっすり寝れるぞ!」
「ん・・・そういえばそうね、日をまたぐ実習じゃエルフの村以来かしら?」
確かに今まで日をまたぐ実習では内容のせいで見張りを立てることを余儀なくされたが今回は一定時間のみ対象を護衛すればよいだけ
自由時間が保障され、なおかつゆっくり寝ることができるとは何と有り難いことだろうか
「じゃああれだな、修学旅行的な内緒話でもするか?先生のいないところで」
「鉄板だよね、あとはまくら投げとか?」
今まで物語でしか見た事のない普通の学生のような内容の夜
こういった外泊行動は極稀にしかできないせいでほとんどかなうことはないと思っていたが思わぬところで可能性が巡ってきたものである
「はしゃぐのはいいが、明日の行動に支障が出ないようにしろよ?あと宿に迷惑をかけるようなバカ騒ぎはするな」
城島の言葉に全員が元気よく返事をする
彼女も能力者であるが故にこういった外の活動で気を張る必要のない時間が貴重であることは理解している
本来なら実習中であるために教師として気の緩みを注意するべきなのだろうが、今日だけはいいだろうと見逃すつもりでいた
教師である前に経験者であるが故に、城島は僅かな懐かしさを含めた目で静希達を眺めていた
その日は長めに入浴しゆっくりと疲れを癒し、夜は少しだけ明かりをつけて談笑し、床に就いた
実習中でありながら緊張感がないと言われそうだが静希達は一時の和やかな時間を過ごしていた
そして夜が明け、実習の本番とも言える搬送開始当日
静希達は早めに起きて軽く目を覚ますと同時に準備運動をして各々準備を進めていた
九月の頭とはいえまだ暑いが流石に山頂付近の午前中ということで多少は涼しさが勝っている
そんな中静希達は休憩所の駐車場で待機していた
全員が仮面を片手に持ち、戦闘を行えるだけの体勢を整えてある
静希は腰に鞘を装着し、その中にはオルビアが収まっている
間もなく城島の言っていた護衛車両到着となる九時となろうという時、車が二台ほどやってくる
黒塗りの高さの低い車両だ、これといって特徴は無いが、シンプルであるが故に妥当であると言えるだろう
二台並行して停車すると中から二人ずつスーツ姿の男女が出てくる
静希達が駆け寄るとスーツ姿の男性達は姿勢を正し軽く敬礼する
「君達が今回護衛役をしてくれる学生だね?」
「はい、喜吉学園一年B組一班、本日より護衛の任に就かせていただきます、至らぬところもあるかと思いますがどうかよろしくお願いします」
鏡花が代表して挨拶し、全員でよろしくお願いしますと復唱する
そして静希達に遅れて城島もその場にやってくる
「時間通り、こいつらをよろしくお願いします」
「わかりました、それで一号車と二号車、どのように振り分けますか?」
男性の質問に静希達はその場で二つに分かれる
男女ペアで分かれたことですぐに内容を理解したのか男性は僅かに微笑む
「向こうが一号車、先頭を走る、こっちの二号車は護送車に追従する、今日からよろしくね、あとこれが君達用の無線だ、自由に使ってくれ」
各自無線を受け取り、それぞれが乗車する車両に近づき内部を確認する
中はいたって普通の車だ、特別な何かがあるわけでもない
鏡花が能力を使い構造を理解しても特に変わったところは無いらしく首を横に振っていた
「ところで先生から言われたかもだけど、顔を隠すことはできる?」
一人の女性の言葉に全員が持っていた仮面を装着し、収納してあった仮面部分を露出させ顔を隠す
その様子に全員がおぉと感嘆の声を漏らす
流石に全員が同時に仮面を装着したのには驚いたのだろうか
それぞれが仮面を着用した状態での無線の使用に問題が出ないように鏡花が微調整を行い、それを確認したうえでその場に整列する
「こいつらは犯罪者相手は二度目なので心配はありませんよ・・・目標はいつ頃こちらに?」
「第一陣は十時頃に到着します、そこからはノンストップなので今のうちに昼食を購入しておくとよいでしょう、車内でも食べられるものが好ましいですね」
男性の言葉に城島は聞いていたなと言葉を飛ばし全員に呼び掛ける
これから一時間の間に昼食を買って来いということだ
了解しましたと告げて静希達は一旦仮面を外し休憩所内にある売店へと向かった
私事により予約投稿させていただきます
反応が遅れるかもしれませんがどうかご容赦ください
これからもお楽しみいただければ幸いです




