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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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姉弟の何某

「おい、そろそろいいか?」


襖が軽くノックされ向こう側から静希の声が聞こえてくる


二人で時間を潰すのも限界になってきたのかけだるそうな声音である


「お前ら一体何の話してんだよ・・・」


「ガールズトークよ、男子が入る隙間は無いの、女子は悩みがいっぱいあるんだから」


その口ぶりに静希は何とはなしに空気を察知したのか追求はしなかったが陽太はなにを話していたのか気になるようで何やら思案している


そして何かを思いついたのかハッと声を上げる


「わかった、生理でもきたんだろ!さっきも不機嫌そうな顔してたからぐぼはぁ!」


最後まで言葉を紡ぐ前に鏡花の拳が陽太の腹部に突き刺さる


完全に鳩尾をとらえた拳は鈍い痛みを与え続け僅かな呼吸困難を引き起こしていた


「あんたね!女子相手にそういうこと言う!?もっとオブラートに包みなさいよ!」


「うぐぐ・・・す、すまんかった・・・なんだ違うのかよ・・・」


さっきまではなしていた内容が内容だけに明利が僅かに顔を赤くしているが全くの見当違いである


「ていうかあんたそういうの分かるわけ?身近に明利しか女子いないくせに」


「女兄弟がいるとそういうの分かるんだよ・・・!姉貴は決まって俺に報告してきたからうざいのなんのって・・・!」


陽太の口から出た事実に鏡花は驚愕を隠せなかった


陽太の姉実月ははっきり言って重度のブラコンである


一度しか会った事のない鏡花でもその程度は理解できる


そしてブラコンだからと言って自分の月経の状況など教えるだろうか?自分なら絶対に教えないと断言できる


ある意味狂気じみているなと僅かに身震いした


「あんたはよくても、この場には静希もいるのよ?ちょっとは自重しなさい」


「なに言ってんだ・・・!静希に至っては周期計算をしてたことがあるんだぞ・・・!」


またも発せられた驚愕の事実に鏡花は耳を疑う


いや疑う前に聞かなくてはいけないことが大量に増えた


「は?え!?どういう事!?静希あんた実は女だったとかそういうオチ?」


「違うわバカたれ、どっかのダメな姉貴分が面倒くさがってやらなかったから代わりにやらされたんだよ、小学校五年くらいの時かな?途中から明利と交代したけど」


それは小学校の頃、雪奈に初潮が訪れた際に保健の先生から出された宿題だったそうだ


性教育の一環でこれから女性として生きていく上で必要不可欠な事なのだ


毎日体温を測ってノートに記録するということを大雑把で適当な雪奈が続けられるはずもなく、幼馴染で姉弟分ということで静希が毎日雪奈の家に行き、起こすついでに体温を測りノートに記録していったのだ


習慣づけするという意味でも毎日やることが大事だったのに三日と持たずに投げだした雪奈を見るに見かねた行動だったのだが、今になって思えばもう少し厳しく接するべきだったかもしれないと後悔している最中である


結局明利に引き継いである程度習慣づくまでは毎日のように明利の世話になっていたのはいうまでもない


「あの人は本当にもう・・・そんなことを男子に任せるなんて・・・いくら弟分でもやらせないわよそんなこと・・・!」


流石の鏡花ももはや許容できるレベルではないらしく、彼女の中での雪奈の株価が大暴落している


今までもそこまで高い値ではなかったが今は相当評価が下がってしまっているようでもはや呆れを通り越して僅かな偏頭痛すら生まれている


「ていうかあんたもそういう事をやるんじゃないわよ・・・普通やらないわよ?」


「しょうがないだろ、当時はそういう事知らなかったんだから、だいたい計算しようとなにしようと変わらねえよ、ちょっと知識が増えるくらいで」


昔から雪奈と関わってきた静希は無駄に女性に対する知識が豊富だ


化粧などのやり方、髪の梳かし方、セットの仕方、以前雪奈に聞いた話では肌荒れのケアに必要な薬品などの使い方まで心得ているという


雪奈に覚えさせられた、より正確に言うならやろうとしない雪奈に変わり静希が自分で調べて身につけたというべきだろうか


兄弟でどちらかが優秀だとどちらかはダメになるということは聞いたことがある


目の前の静希と陽太を見ているとそれはあながち間違っていないように思える


響家の姉弟は姉が非常に優秀だ、そして弟は言うまでもない


血のつながりはないが姉弟分の静希と雪奈、弟分がそれなりにできることが多い代わりに姉貴分である雪奈は結構ずぼらである


こういうところで釣り合いが取れているのだなと鏡花は納得する


ある意味一人っ子で良かったかもしれないと心の中で安堵していた


「でさ、結局二人でなに話してたんだ?生理でもないなら女子だけで話すことなんてないだろ?」


「バカね、女の子は男に隠れてやることがたくさんあるのよ、それこそ山ほどね」


鏡花の言い分に陽太は納得していないようだったがならなんだろうとまた悩み始めてしまう


すると静希が足元に落ちている明利の書いたドイツ語のカルテを拾う


「あぁなるほど、明利に身体を診てもらってたのか」


「ちょ!ばらさないでよ!一応恥ずかしいんだから」


「ばらすもなにも俺らドイツ語読めないから何書いてあるか分からないけどな」


カルテを奪い取りさっさと隠してしまうが静希の言う通りこの中でドイツ語が読めるのは明利だけ


紙を読んでみてもなにが書いてあるのかは分からないが明利がドイツ語を使用するのは医学に関係することだけ、そう考えると身体を診てもらったとしか考えられない


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