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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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明利の健康診断

明利は同調しながら鏡花の身体の異常の有無をまず調べ始めた


栄養状態の変化や偏りによって異常をきたすのはよくあることだ


また精神状態によっても身体の調子は変化する、まずはこれらの異常を発見することが第一、詳しい状態を見るのは二の次だ


身体の隅から隅、髪の毛一本から細胞一つに至るまで集中に集中を重ね、同調を重ね、まったくもって健康体であることを確認できた明利はその身体の栄養状態を確かめていく


血中の酸素濃度や肝臓の稼働状況、そして各種栄養その補給が足りているかどうかを身体の各部位を調べることで判断していく


そして同調しながら次々と紙に書き記していく、だがその文字は日本語ではない


鏡花は読むことができなかったが、それは明利が医術関連の学問を学んだ際に習得したドイツ語、カルテなどを作成する時に自分なりに書きやすく、そしてわかりやすくした内容のものである


こうしてみると本当に医学に精通しているのだなと鏡花は感心するのだがそのカルテにはいくつかチェックマークが付けられている


なにが書かれているのか理解できない鏡花は僅かに不安を募らせた


「ど・・・どう?」


「ん・・・えっと結論から言うね、鏡花さんは基本健康体、病気があるわけでも問題があるわけでもありません」


明利は別の紙に日本語でいろいろと書き記し始める、自分で見るのではなく他人に見せる用のカルテを作成しているようだ


そこにはいくつかの項目が作られておりいくつものチェックが記されている、だが一つだけチェックのついていない項目があった


「栄養のバランスもほとんど問題ないんだけど、ビタミンCだけが不足してる、今はまだ問題ないけど、長期にわたってこれが続くと怪我に繋がるかもしれないから注意した方がいいかも」


「ビタミンC・・・って何食べればいいの?ていうか何で怪我?」


栄養の話はあまりしたことがない、というかあまり興味がなかったために今まで考えてこなかったのだが今こうして専門家一歩手前の人間が目の前にいるのだ、質問しておいて損はない


だがビタミンをとらないとなぜ怪我に繋がるのかが理解できなかった


「えっとね、ビタミンCは腱や靭帯の材料や強化に必要な栄養素なの、これが欠如してると日常で使用する関節部や筋肉の動きで摩耗してる靭帯の再生ができないことがあって怪我につながっちゃうの」


「へぇ・・・でも今は問題ないの?」


「うん、一日の摂取量もそこまで多くないし、私たちは毎日走ったりしてるからどちらかというと怪我の危険性が少し高まる程度のものだと考えて」


なるほどなるほどと頷きながらとりあえずビタミンCが足りないと起こることは理解した


だが問題はそれをどのように摂取するかである


家庭科の授業はある程度覚えているが、そこまでしっかり記憶しているというものでもない、知識と実生活を結び付けるというのは大変だなと感じながら鏡花は何とか思い出そうとするのだが記憶をたどっても五大栄養素の含まれる食材程度しか思い出せなかった


「で、そのビタミンCはなにで摂取できるの?レモンとか?」


「うん、このビタミンCって他のビタミンAやB群と同じで日常で摂取するのは難しくないんだけど基本的に足りなくなった場合は柑橘類や白菜、キャベツ、ブロッコリーとか緑黄色野菜を食べるといいかも、それでだめならサプリメントかなぁ」


足りないものが判明するだけで食べるものがそんなにポンポンと出てくるあたり専門知識を持っている人というのは恐ろしい


鏡花もあまり人のことは言えた義理ではないがここまですらすらと解決策を出されると目の前にいるのが同級生であることを忘れそうである


「ねえ、明利って調理師免許とかもってるの?」


「え?まだ持ってないけど、いつかはとりたいなぁ、医師免許と、調理師免許、栄養士の資格も取りたいなぁ」


目の前の小さな同級生がどんどん専門知識を蓄えて将来のビジョンに具体性とその足掛かりをつくっているのを見て眩しくて何も言えなくなってしまう


明利のすごいところは興味のあることをとことん突き詰めてそして実用性を高めることができるという点だ


能力の性質上、身体と同調することで実際と知識の結びつけが楽だというのもあるのだろうが、この知識量は驚嘆に値する


「あ、あと少しだけだけど鉄分も足りてなかったよ、こっちは・・・はいこれ」


「なにこれ?サプリメント?」


明利がカバンから取り出したプラスチックの箱の中には白い錠剤がいくつも入っている


僅かな甘い香りと共に鏡花の手のひらに出されたそれを何の疑いもなく口に放り込み噛み砕く


「鉄分や亜鉛とかはどうしても摂取しにくいからこういうのがよくあるの、他のビタミンの錠剤もあるから今度持ってくるね」


「それにしても用意いいわね、こんなの持ってるなんて」


鏡花の言葉に明利は少し困ったような顔をしながら照れてしまう


今までの実習でもこんなものを持ちこんでいただろうかと記憶を頼りに回想してみるがそれらしいものは浮かんでこない


今回だけだろうかと考えていると、ふとあることが気にかかる


今までこんなことをしてもらったことはなかったが、彼らはどうなのだろうか


隣の部屋にいるであろう静希と陽太の事を思い出し彼らの食生活を想像してみる


静希は明利が時々食事の面倒を見ているから問題ないだろう、だが陽太はどうだかさっぱり見当もつかない


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