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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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水筒と味噌汁

「にしてもやっぱあんたが班長やった方がいいんじゃないの?まとめ役も作戦考えるのもほとんどあんたやってるじゃない」


「能力がダメダメだから他で補うしかないだろ、苦労するのは中間管理職、責任とって人使うのがトップだろ、リーダー」


「なんか納得いかないわ」


高校一年の身ですでに働きづめのサラリーマンのような哀愁を身につけている静希を眺めながら鏡花はため息をつく


おにぎりを二、三個口に放り込んだところで陽太はみそ汁を飲みほして大きく息をつく


「これさ、今日の昼飯に持っていけないかな、一日動くかもしれないんだし、あったほうがいいんじゃね?」


「あぁ、確かに、おにぎりなら携帯も楽だな」


「じゃあお味噌汁も水筒に入れて持って行こうよ」


「でも普通に水飲みたくなった場合どうするの?水筒は一人一つしか持ってないでしょ」


皆が悩んでいるとその視線が鏡花に移る


「こんなところに都合よく生粋の変換能力者がいるじゃないか」


「なるほど、なんて都合がいい」


「なによ、何させるつもり?」


にやりと同時に笑った二人を嫌な眼でにらみながらも、鏡花は何とはなしに理解していた


「水筒作ってくれ、できるなら魔法瓶」


「はぁ・・・でもその質量はどっから持ってくるのよ、庭の土勝手に使っちゃだめだし」


「ふむ・・・俺のナイフをいくつか提供してもいいけど、これから使うかもしれないし・・・あ、そうだ」


気がついたように静希は陽太に耳打ちをする


「わかった、ちょっくらいってくる」


「・・・?何言ったの?」


「材料調達」


そうして数分後、庭で何か重いものを落とすような音がし、全員で見に行くと庭には直径五十センチほどの岩が用意されていた


「どっから持ってきたのよ」


「壊れたフェンスのところ、ちょうどいい石があったから持ってきた、あれなら誰も文句言わないだろ」


「お疲れ様、重かったか?」


「いやいや、能力使えば楽勝だ、これで頼むぞ鏡花」


「うへぇ、そこまでして味噌汁がほしいの?」


「ご飯ものには濃い味の汁物が必要なんだよ、あった方がテンションが上がるんだよ、お願い鏡花ちゃん」


雪奈にまで依頼されては断るわけにはいかない、鏡花はため息をついて岩の前に立つ


「誰かの魔法瓶貸して、構造理解して真似ちゃうから」


「はいよ」


静希は自分のオーソドックスな魔法瓶を渡す


手にとって数秒目をつむり集中を始める


触れた物に対して同調、内部構造と構成物質を理解し、目の前の岩をそっくりなものに変換する


目を閉じたまま岩に手を当てると岩の形が変質し、まずは水筒の形を作り出す、そして徐々にその材質が石から変質していく


数秒後には静希の魔法瓶と寸分たがわぬ物が出来上がっていた


「おおおおおお、ここまでできるとは思ってなかった!すごいなお前」


岩から切り取られた水筒の蓋は問題なく開き、内部構造もまったく問題なく使用できそうだった


「これ全員分できるか?」


「やめてよ、せめてあと一つは作ってあげる、最低でもチームに一つでいいでしょ」


そういって少し体積の減った岩から再度水筒を作り出す


「よっしゃ、俺はみそ汁入れてくるわ!」


「私もいく!」


「ったくもう、朝っぱらから構造変換させられるとは思わなかったわ・・・」


「わるいな」


まったく悪気のなさそうな顔で言われても嬉しくないわと鏡花は悪態をつきながら台所に戻っていく


「言っとくけど、その水筒、任務が終わったら元の岩に戻すからね」


「ええー!なんでだよもったいねーじゃん!」


味噌汁を温めて注いでいる陽太は不満を言うが、こればかりは仕方ない


ただの変換能力なら問題はない、ただ異常が生じないように形を元に戻せばいいだけだ


だが構造変換は違う、ただの石を金やダイヤに変えることもできるのだ


もしそんな能力が横行すれば確実に経済が破綻する


「しかたねえよ、諦めろ」


「もったいねえの」


陽太は納得していないようだが、今回は一時的な措置だ


今度から余分に空のペットボトルでもカードに入れておこうと何度もうなずく


まさかこんな所で予想外の事態に出会うとは、人の厚意とは計り知れないものがある


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