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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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警察の空気

何度か乗り換え、目的の駅に到着しバスで移動すること数十分、静希達は今回協力することになる警察署にたどり着いていた


何人かのスーツ姿の人物が行き来する中静希達もその建物の中に入っていく


城島は堂々とした物なのだが警察にお世話になったことなどない静希達は僅かに萎縮している


そこには多くの一般市民もいたがやはり国家公務員の多いこの建物の中では浮いた存在となっている


それは静希達も同じだ


私服やスーツ姿の多いこの場で制服姿というのは非常に目立つ


「失礼します、喜吉学園の者です、明日からの搬送担当の方をお願いします」


部署に到着し次第城島が声を上げると奥の方から一人の男性がやってくる


どうやら彼らが今回の担当者のようだった


「こりゃどうもお疲れ様です、彼らが今回護衛を務めてくれる学生さんですか?」


穏やかそうな表情でありながら僅かに気崩したスーツと白髪交じりの髪、顎には無精ひげが蓄えられ、胸ポケットには煙草の箱が入っている


ベテランの刑事であることはうかがえる、少々軽率なイメージがあった


「えぇ、至らぬところもあると思いますがご容赦ください、他の方々は?」


「いや申し訳ない、他のは出払っていまして、当日は若いの含めて当たらせますんで、今日はまあよろしくとだけ」


相変わらず城島の敬語には慣れないなと聞き流しながら辺りを観察する


警察のイメージというと事務仕事を多くしているイメージがあったのだが随分と外に出ている人が多い様で使用者のいないデスクがいくつもある


今日の目的は顔見せというのもあったのだが、それはどちらかというと静希達が相手の顔を認識するということではなく、相手の方が静希達の顔を認識するという意味だったようだ


そういう意味では責任者だけが確認しておけば問題ないという考えなのだろう


「じゃあ一応自己紹介でもしてもらおうかな、元気良く頼むよ」


警察という重く厳格なイメージを覆すような軽さで笑うその人は静希達の想像していた警察とは全く違う存在のようだった


少し調子が狂うなと思いながらまずは班長の鏡花が一歩前に出る


「喜吉学園一年B組一班班長清水鏡花です、よろしくお願いします」


「同じく一班五十嵐静希です、よろしくお願いします」


「同じく一班幹原明利です、よろしくお願いします」


「同じく一班響陽太です、よろしくお願いします!」


「あいよろしく、俺は係長で警部の矢木です、明日以降、しっかり護衛して頂戴」


何と言うかしまらない物の言い方をした後に矢木は陽太の顔をじろじろと見ている


身長は陽太の方が高いため見上げていると言った方が正しいのだろうが、その視線は品定めしているようなものだった


「あの・・・なんすか?」


「君が響陽太か・・・思ったより細いな・・・竹中の野郎適当言いやがって・・・」


どうやら夏休みに関わった竹中とも面識があると思われる矢木は一瞬呆れたような顔を作るとすぐに笑顔になる


「いやいや、やたらと噂になっててね、戦車より強い攻城兵器ってな、どんな奴か気になってたんだけど、案外普通だな」


「あはは・・・恐縮っす」


相手が警察という事もあって多少気後れしているのか、萎縮しているのかいつもらしくない陽太の対応に鏡花が僅かに肩を震わせている


面白いとは思えないがこういう陽太の反応が新鮮なのだろう、事実結構珍しい

「さてと・・・あらかじめ資料で渡してある通り、君達には明日から本格的に動いてもらう、今日これからは自由行動だ、好きに動いてくれて構わない、あとこれね」


矢木が取り出したのは車のキーだった


教師である城島に預けると一緒にいくつかの書類も渡しておく


「今回使用してもらう車の詳細とか・・・まぁいろいろ、壊さなきゃ適当にやっておいてくれて構わない、駐車場に置いてあるから、それじゃ明日からよろしく」


そう言って矢木は奥の方にある自分のデスクに戻っていく


どうやらこれで顔見せは終わりのようだがなんとも感動もへったくれもない顔見せである


頭を下げてその場から離れ、駐車場に向かうと確かに資料に書いてある車が用意されている


少し大きな白いワゴン車だ、全員が乗れるスペースは十分に確保されている


「先生、あの人知ってます?」


「いや知らないな、随分と軽い人だったが」


見た目四十近くだった矢木はどうやら城島も知らない人物のようだったが、彼女から見ても態度が軽いことがうかがえたのだろう、悪印象は持っていないようだったが少々意外なようだった


「警察ってあんなんでいいんすか?かなり適当だった気がするんすけど・・・」


「適材適所だ、気まじめ過ぎると損をすることもある、そういうことだろう」


真面目な人間だけが警察を目指すわけではない、何か自分なりの美学や正義感など、いろいろな理由があって目指す


彼の場合それが何かは知る由もないが、それが間違っているとは言えない


「それより、陽太の称号が知られてるってのが驚きよね、戦車より強い攻城兵器だってさ」


「確か陽太の称号を進言したのがあの場にいた警察だったんだろ?不思議な事でもないけど、まさか名前まで覚えられてるとはな」


名前を覚えられるのは悪いことではないが、警察に名前を覚えられたと言われると少しだけ嫌な予感がしないでもない


犯罪を犯さなければただの噂にすぎないのだが、もし警察に追われる立場になった場合はマイナスに働くだろう


「良かったね陽太君、警察の人に名前覚えてもらえて」


「明利、それいい事って一概にも言えないからね?」


鏡花の突っ込みに戸惑いながら明利はとりあえずあてがわれた車に荷物を積み込み始めていた


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