二学期最初の
静希の誕生日を過ぎ、時間は経過し週末
静希達の二学期で初めての校外実習が始まろうとしていた
早朝に学校の前に集まった生徒達はすでに慣れた様子で荷物の点検や各自コンディションの確認を行っていた
九月が始まったばかりなのでまだまだ暑い
だが早朝という事もあり少しは過ごしやすい気温になっている
これから暑くなることを考えると気が滅入るが、静希達が向かうのは山道、少しは涼を味わえるだろう
静希と明利はいつものように軽くランニングを終えた後、装備の最終チェックを終わらせて学校へと到着していた
「お、来たわね」
校門前で待っていたのは班長清水鏡花だった
いつも通りの凛々しい姿勢に加えその表情も普段より引き締まっているのが分かる
今回は自分達だけの実習、多少の緊張とプレッシャーがある
いくら才能に恵まれた鏡花といえどそのプレッシャーには抗い難い
「二人ともちゃんと仮面は持ってきた?」
「おうよ」
「ちゃんとあるよ」
カバンの中から仮面を取り出して見せるとよろしいと鏡花は朗らかに笑う
さて問題はこの班のバカの筆頭なのだが
「おっす、お前ら早いな」
「来たわね問題児、忘れ物は無いかしら・・・って・・・あんた本当に着けてきたの?」
特に緊張などもない、というか特に何も考えていないであろう陽太の頭部には先日作成した仮面が取り付けられている
どうやら家からここまでずっとこれをつけて歩いてきたようだ
一緒に歩きたくないなと心底思いながら全員はため息をつく
「これで全員そろったな、先生探すか」
「あ、そっか、今回から雪さん達いないんだっけか」
本当に何も考えていなかったのだろう、今更ながらにその事実に気付きそわそわし始める陽太を呆れを含んだ目で眺めている静希と鏡花
恐らく言わなければ出発の時になるまで気付かなかっただろう
生徒だらけの周囲を見渡すとこちらにあるいてくる前髪だけ長髪の教師、城島を発見する
「お前達、コンディションは万全か?」
問題ありませんと全員が答えると城島の視線は静希と陽太に注がれた
そして何か考えていたのだろうか僅かに口を開こうとして止めてしまう
「お前達二人は特に注意して行動しろよ、清水、この二人の制御は任せたぞ」
「任されても困るんですけど・・・」
今までこの二人の暴走を止めようとして止められた例などない
陽太はまだ暴走しても何とかなるが静希が暴走すると明利でも止められるか分からないのだ
それに今回の実習は護衛
自分が行動することはあれど、この二人が実際に活動することがあるとすればそれは迎撃の時だけだろう
そのようなことがないことを期待するしかなかった
「あ、そうだ先生、見てくださいよこれ!かっこいいっしょ!?」
陽太がポーズを決めながら城島に自らの頭に取り付けられている仮面を見せつけると一瞬何してるんだこいつという空気が流れたが、城島はその仮面の存在を正しく認識できたようで陽太の頭部を掴んで無造作に上下左右に動かしながらその構造を注意深く眺めていた
「ほう・・・なかなかの作りだな・・・これは清水が作ったのか?」
「はい、前作った仮面の改良版です、仮面部分を収納可能にしました、今回も素顔がばれるとまずいかと思ったんで一応作ったんです」
いい判断だと呟いて城島は後頭部についている突起を操って仮面を出したりしまったりしている
陽太がかなり無理な体勢になり首が少し無茶な方向に曲がっていたりするがそんなことはまったく気にも留めていないようだった
「資料には目を通してあるな?万が一、能力戦になることも考慮しておけよ」
「わかってます・・・でも相手は小学生と中学生でしょう?」
今回搬送される能力者は二名
一人は小学生、一人は中学生
どちらも普通の人間で特に変わったところもない
強いて言えば中学生を注意しておくべきだろうが中学一年生であればそれほど脅威となるとは思えない
「一応忠告しておくが、能力者は若いと突拍子もない事をすることもある、ろくに考えていない分自分も相手も危険になるようなことを平然とする、慢心はするな?」
「まぁ、油断ってわけじゃないですけど・・・」
全員が視線を合わせると城島もまぁしょうがないかという表情になる
何せここにいる全員が今まで能力者以上に厄介な存在と対峙してきたのだ
毎日のように訓練をこなし、時には教師とも拳を交えている静希達だが、異形の存在以上に苦戦するとは考えにくい
特に彼らの最強の設定は常に悪魔メフィストフェレスになってしまっている
策を講じても、全員で立ち向かっても敵わない圧倒的強者
それ以上の存在でなければ、そして策を講じて勝てるような相手であれば問題ない
静希達の認識は勝つことは可能であるなら問題ない
結果さえ選ばなければ相手を倒す手段はいくらでもあるのだから




