表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

395/1032

十六になった日の違い

「悪いけど鬼は無理よ、漢字で入れて欲しいってんなら入れてあげるけど、センス悪くなるわよ」


「おぉぉぉ、これいいな、かっこいいじゃんか!気に入ったぜ、ありがとな」


どうやら陽太は満足したようで鏡花としても肩の荷が下りたようだった


あれだけの無茶ぶりによく応えたものだと心の中で鏡花をたたえる中、静希もいくつかの案を考えていた


「鏡花、次は俺のを頼む」


「はいはい・・・随分シンプルね」


「シンプルイズベストってな」


静希のデザインは左右対称、そして固定具がより機械的に見えるように引かれたラインだった


男の子としてこういう機械的な仮面を一度でいいから装着したいという欲求には勝てなかったのだ


シンプルな静希のデザインとは対照的に、鏡花の仮面に施されたのは複雑な幾何学模様


イメージは万華鏡、鏡花の能力名からとったらしいが、なんとも彼女らしい


静希は機械


明利は植物


陽太は炎


鏡花は万華鏡


それぞれが仮面に模様を描いたところで全員の仮面が事実上完成する


後は実際に使うだけである


「いいなぁ・・・ねぇ鏡花ちゃん・・・」


「あぁもうわかりましたから、作ってあげますからそんな目で見ないでください」


何度もお願いしてようやく言質をとると雪奈は嬉しそうにやりぃとガッツポーズする


年上としての威厳は欠片もないなと思いながら弟分である静希は僅かに情けなくなるが、ここで一つ気になることがある


「てか雪姉の実習って基本奇形種とか相手だろ?顔隠す意味あんのか?」


静希の言葉に雪奈は一瞬何を言っているのか分からなかったようだが、その意味を理解するとその表情を驚愕に染めていく


静希達が顔を隠すのは接触対象が犯罪者であるが故だ


いずれ釈放されたときに顔を覚えられていることのないように、仮に恨みを買っても問題ないようにするために顔を隠すのだ


だが雪奈が主に相対するのは奇形種などの動物、動物相手に顔を隠す意味はあまり、というかない


「あ、あれだよ、これからもっと大変な任務につくかもしれないじゃないか!万が一の為にも仮面は必要だと思うな!」


「まぁそこまで言うなら止めやしないけど・・・班員の人も説得するなら何かもうちょっとまともないいわけ考えておいた方がいいと思うぞ?カッコイイだけじゃだめだからな?」


恐らく仮面をつけたい理由はかっこいいからというものだけだったのだろう、ギクリという擬音が聞こえてきそうなほどに雪奈は身を強張らせた


長年一緒にいるということでよくわかるが、基本雪奈は思考回路が女の子よりも男の子のそれに近い


少年漫画の主人公の必殺技の練習をしたり、照明の紐でシャドーボクシングをしたり、やたらかっこいい言葉を知っていたりと女子らしいのは身体だけという欠陥っぷり


彼女と一緒に行動する班の人間はさぞ苦労することだろうとある種の同情さえ浮かんでいる


「だ、大丈夫だって、男の子はこういうの大好き、あとは紅葉さえ説得すれば問題ないさ」


紅葉、確か井谷紅葉という雪奈と同じ班の女子生徒だったと静希は記憶していた


会ったのは数える程度だが、雪奈に対して朗らかに接している明るい女生徒として記憶に残っている


熊田はこういう提案にはさして文句は言わないだろう、男子であれば高性能な仮面をつけてみたいというのは誰でも思うことだ


某ライダー系の仮面ヒーローの真似事をしたり変身系ヒーローのごっこ遊びをするのは男子なら誰でも通る道だと思っていた


故に男子はそれほど障害にはならないだろう


問題は井谷紅葉を納得させられるかという雪奈の説得にかかっているわけだ


「とにかく、これでひと段落ね、仮面も作り終えたし・・・忘れないでよね?作るの面倒だから」


「わかってるって、なんなら付けて学校行ってやるよ」


「やめなさい、不審者として通報するわよ」


相変わらず仮面をつけて変身のポーズをしている陽太に対し鏡花が突っ込みを入れている


どうやらあのポーズが気にいったらしい


昔からごっこ遊びでもよく変身のポーズをしていたなと思いだしながら静希も仮面をつける


頭に吸いつくように固定され、後頭部の突起を操作すると額部分から仮面本体が高速でスライドして出てくる


無駄にギミックが富んでいるが、実際仮面部分を収納できるというのは楽だ、必要な時に展開できるし、必要でないときにはしまっておける


「確かにこれは仮面部分にデータとか映ったらかっこいいな」


「将来できるかもね、十年くらいすればできるかな?」


「できたら学生の標準装備にしよう、データとか全部入れておければ楽だろ」


そんな未来に向けての話を盛り上がらせながらその日の静希の誕生日は終了した


十六になったその日、特に何の変わりもなく、静希は床につく


去年と何か変わったかといえば、家の中に人ならざるものがいるくらいだろう


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ