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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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贈り物とペット

「おおぉぉぉ、こりゃすごいな!他のも似たような感じなのか?」


「全部構造が違うだけよ、これのどれかに統一しようと思ってるんだけど、どれがいいか確認しようと思って」


テーブルの上に並べられた仮面を確認してみるとそれらはすべて違う構造でできているようだった


一からすべて考えたのかと思うと驚愕を通り越して呆れさえ覚えるほどに精巧な作りだ


なるほど、鞘よりずっとこっちの方が苦労しそうだ


「うっわいいなぁ・・・なにこれすごいハイテク」


上級生の雪奈が興奮しながら仮面をつけて遊んでいる中静希は真面目に仮面の選別に入っていた


どれも特徴的ではあるがいくつかは機能的に問題が見受けられるものもある


「とりあえずこの挟み込む奴はアウトだな、長時間つけること考えると圧迫感の強いのはいろいろ面倒そうだ」


「まぁそうだろうと思ってたけど、じゃあこれはボツね」


仮面を支える上で身体のどこかに必要以上の圧力や負担がかかるような物は長時間の装着には不向きである


ヘッドホンやイヤホンを選ぶ時もそうだが僅かでも違和感があると長時間の使用に向かないことがあるために構造的にも注意が必要なのだ


挟みこんで支えるということはその分、加圧されているということでもある


実習中は一日中動くことが多いためにできるなら装着していると感じない程のものが最適である


「俺としちゃ、これがいいと思うんだけど、どうよ?似合ってる?」


陽太がどこぞの変身するヒーローのようなポーズをしながら仮面を強調しているのだが似合うかどうかといわれれば正直微妙だ


そもそも秘匿性を求める仮面に格好よさを求めるものではないと思うのだ


「まぁ、シンプルだよな」


「あれ一番簡単だったやつよ」


陽太が付けているのは額に仮面部分が収納されており、額と後頭部全体を覆う形で支える最もシンプルな仮面だった


覆い隠す部分が多い代わりにもっとも各所への負担は少ないだろう


その分通気性は悪いという欠点があるが


「ちょっとまってて、全員分それに作り直すから」


「ねえ鏡花ちゃん、私にも作ってくれたりは・・・」


「有料で承りますよ?」


「え!?ただにしてよ!?」


最近鏡花の雪奈に対する態度が静希達に近づいてきたなと思いながら全員で最もシンプルな仮面を装着する


なるほど、全体的にほんの少し暗くなる程度、それもほとんど支障がないレベルだ


夜間に装着すると多少の問題はあるかもしれないがその程度であれば鏡花がその場で修正を加えるだろう


こういう時に練度の高い変換能力者がいると本当に便利である


「それじゃ仮面はこれで統一するわね、もし成長して合わなくなったらすぐに言って頂戴、微調整するから」


全員の仮面の調整を終えた時点で各仮面に名前のイニシャルを入れておき誰が誰のであるかをすぐにわかるようにしておく


「まぁ明利はこれ以上成長しないかもしれないけどね」


「酷いよ!これでも少しは!」


「成長したの?」


「・・・してない・・・けど・・・まだ成長期は終わってない!・・・・はず・・・」


もう数年全く伸びていない身長にまだ希望を抱いている明利を見ながら鏡花と雪奈はほろりと涙を流して同情する


女性として背が低いというのは珍しい訳ではない


だが明利の身長は低すぎる


鏡花も雪奈も百六十半ばあるために、その身長差が明確に出てしまっている分強い同情が生まれるのだ


「で?そんな明利の誕生日プレゼントは?どんなもの贈ったの?」


「えっと、これか」


静希が残った箱を開けるとそこにはメタリックな銀色の時計が出てきた


それほど装飾がこっている訳ではなく無骨というわけでもない、シンプルなアナログの腕時計だ


「おぉ、腕時計か」


「うん、時間とか結構気にすること多いし、あったら便利かなって・・・自動巻きだから電池もいらないし、防水で水圧も十mくらいなら平気みたい」


さっそく左腕に装着してみると少しゆとりがあるがそれほど不快ではない


しっかりと秒針は動き続け機能していることが分かる


自動巻きということは常につけていれば動き続けるということでもある


「腕時計って結構高いのもあるって聞いたけど、これいくらくらいしたんだ?」


「あんまり大したものじゃないよ、気にしないで」


実際腕時計は物によっては数十万するものもある


もっとも高校生の経済事情でそれほどの物を購入できるとは思えないが


「そうか?これはありがたいな、大切にするよ、ありがと」


「ふふ・・・よかった」


二人の様子をニヤニヤと見ながら鏡花と雪奈は二人の付けているアクセサリーを見比べている


静希は明利から贈られた腕時計、明利は静希から贈られたチョーカー


二人はこの意味を分かっているのだろうかと思いながら微笑ましそうに眺めていた


「これで一班の中で誕生日迎えてないのは鏡花だけか、たしか十二月だっけ?」


「そうよ、もちろん何かくれるんでしょう?」


私だってプレゼントあげたんだもんねと笑みを浮かべながら品定めするように三人を眺めると全員が苦笑いする


「それはいいけどさ、お前んちってどこなんだ?そういえば俺らお前のこと全然知らないような気がするんだけど」


「あぁ、そう言えば静希は家に来た事無かったっけ?普通の一軒家よ?特に変わったこともないし・・・」


「でも犬飼ってたよな、でっかい奴」


「え?陽太君って鏡花さんの家行ったことあるの?」


おぉあるぞと当たり前のように言う陽太は全くいつもと変わった様子はない

女子の家に行ったことがあるのにこの反応


明利の家によく行っている静希もそうだがこの班の人間はもう少し女子に対してそれ相応の反応をするべきではないかと思ってしまう鏡花である


「夏休みにね、こいつの宿題見る為に帰りに家に呼んだのよ、こいつんちでやるのはダメだって、地味に傷ついたわ」


「あー・・・確かに陽太の部屋じゃな・・・」


鏡花は未だ知らないが陽太の部屋は部屋とは呼べない


少なくとも高校生が住まうような部屋ではないのだ


「親は何やってんだ?確か両方能力者って言ってたな」


「陽太には言ったけど父親は公務員、母親は専業主婦よ、普通でしょ?」


あぁ、なるほどと静希と明利は鏡花を眺める


能力者の公務員の娘、道理で理屈めいておりなおかつ能力が天才的に上手な訳だ


基本的に能力者がなれる公務員というのは限られている、その限られた中に入れるというのは非常に優秀である証だ


人にものを教えるのが上手いのも遺伝的なものがあるのだろう、恐らく鏡花の父親は相当の人格者であるということがうかがえる


「犬ってどんな奴だ?俺ら飼ってないから見てみたいな」


「写メであればあるけど、こんなの」


鏡花が携帯の画面を見せるとカメラに視線を向けて舌を出している黒と白の体毛を持った犬がいる


大型犬のようだが静希はその犬種までは分からなかった


「あ、これってアラスカンマラミュート?」


「明利よくわかったわね、ベルっていうのよ」


明利が可愛いと連呼しながら携帯の画面を幸せそうに眺めていると横からのそりと犬顔神格邪薙が覗きこむ


「ほう、なかなかの毛並みをしているな、面構えもいい」


「なに張りあってんのさ、でも確かに可愛いなぁ」


明利、雪奈は携帯画面を見ながら撫でまわしたいなと呟いている


邪薙はどうやらこの犬に何かしら感じるものがあったのだろうか興味深そうに携帯画面を眺めている


「今いくつなんだ?」


「四歳、元気盛りでね、陽太が来た時は大変だったわ」


鏡花はため息をつきながら苦笑いを浮かべる


元気であることは嬉しいのだが元気すぎるのも困ったものなのだ


夏休みのある日、陽太と共同で宿題を終わらせるために訓練終了後に鏡花の家に来た時に陽太は幸か不幸か清水家の愛犬ベルに遭遇した


最初こそ警戒して距離をとっていたものの敵意は無いと察知したのかしきりに陽太の匂いを嗅ぎながらこの人物は誰だろうかと陽太の周りをくるくると回るベル


そしてせっかく初めて動物にふれ合うのだから散歩でもさせてみるかと提案した


その時に問題は起こった


今までペットなど飼った事のない陽太がリードを持って散歩するのを引き受けたのだが、そこは動物初心者の陽太である


ベルが自分の気分の赴くままに走り出そうとするので陽太もそれについていく、だがそれがいけなかった


陽太の身体能力は一班の中でも随一だ、短距離、長距離ともに走力に対しては高い数値を叩きだしている


対してその散歩についていった鏡花は運動能力は平均よりは高いものの男子に勝るはずもなし


てっきり歩きながら散歩をするものとばかり思っていた鏡花に対し陽太とベルは競い合うかのような全力疾走


もはやどっちが動物でどちらが散歩しているのか分からない勢いで走るのだがそこはやはり犬の方が走るのは速い


いつもの散歩コースをほぼ全速力で走り終えること約七分


その後息も絶え絶えの鏡花が二十分ほど遅れて帰宅する


陽太に対し鉄拳が下されたのはいうまでもない


「なにがあったかは聞かない方がよさそうだな」


「えぇそうして、もう二度と陽太にはリードは握らせないわ」


鏡花の表情からあまりいい思い出ではないことを察し静希が苦笑いする反面陽太は朗らかに笑っている


いやぁあいつはなかなか骨のある奴だったよなどと宣っているがおいてけぼりに加えて無駄に走らされた鏡花は相当の苦痛を被っただろう


「私も会いたいな、今度鏡花さんの家行ってもいい?」


「いいわよ、明利なら大歓迎」


「私も!私も行きたいよ鏡花ちゃん!」


「いいですよ、ただし刃物はもってこないでくださいね」


いつの間にかガールズトークを繰り広げている三人を眺めて静希は僅かにため息をつく


ペット、そういう存在は静希にもいる


ケージの中で滑車を延々と走り回し続けているフィア


奇形種で静希の使い魔、なんだろう、自分にもペットはいるのにこの違い


もっと平和で癒される存在が欲しいなぁと思いながら鏡花の携帯に表示された犬をうらやましそうに眺めていた


累計pv3,000,000を記念しての複数投稿


2,000,000を突破してから約2か月半での突破ですね、やっぱ時間かかるなぁ


確認すればわかることですが累計ユニークは300,000ほどです


まだまだ先は長いですね


これからも拙い文章と内容ではありますが、お楽しみいただければ幸いです

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