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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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指にかかる重さ

「よかったなって言われてもなぁ・・・まだ分かんないぜ?蓋を開けたら犯罪者の仲間が助けに来ました何てことになりかねないぞ?」


「武器持って?どっちにしろ無能力者なら楽勝、能力者でも数で押し切れるでしょ・・・ていうか陽太は面倒事に来てほしい訳?」


いんや全然、楽な方がいいなと手をひらひらさせる陽太は本心からそう言っているのだろうが実習内容に関しては妙に疑っているのだろう


もちろんそうまでして疑う理由もわかるし、静希達もまだ疑っている


マイナス方面にばかり鍛えられているせいで妙な疑心暗鬼に陥ってしまっているのだ


「スケジュールもなにもほとんど決まってるとなると、あとは当日までやることなさそうだな、事前準備も向こう行かなきゃできないし」


「そういえば関係ないけどさ、昨日の外人、あれって何だった訳?知り合いだったみたいだけど」


各自で必要なものを紙に書き出している中鏡花が思いついたように先日出会った不思議な外人エドモンドの事を尋ねる


鏡花からすれば初対面の人間が静希を探すなど面倒事以外に思いつかなかった為に僅かに警戒してしまうのだ


「そうそう、そのことでちょい朗報がある」


静希は喜々として自分の部屋に向かい三つの箱を取り出してくる


テーブルの上に置かれた箱を開けると三丁の拳銃が姿を現した


「ちょ!?これどうしたんだよ!?マジモンか?」


「あぁマジモンだ、試射はまだだけど、たぶん問題なく撃てるはずだ」


壊さないようにそして引き金には触れずにいじりまわす陽太に対して鏡花は驚愕になにもいえなくなってしまっていた


テンションのあがっている陽太を差し置いて大きくため息をついて額に手を当てて見せると、同じようにテンションのあがっている静希を睨む


「呆れたわ、なに?じゃああの外人は売人か何かだってわけ?」


「あー・・・いやあいつはそういうんじゃないんだ・・・まぁ話すと長いことながら」


かくかくしかじかと静希が八月の上旬にあった出来事をかいつまんで話すと鏡花はさらに驚愕の表情を濃くする


「信じらんない・・・要するに悪魔の契約者ってことでしょ?どんだけ面倒事に巻き込まれてんのよあんたは」


いやぁそれほどでもと静希は僅かに照れているが鏡花としたらまったく褒めているつもりはないのである


自分達は学生だ、能力者として確固たる実力を備えつつある未だ発展途上の未熟者だ


そんな定かではない実力の人間に任務を任せるというのは正気の沙汰ではない


静希が他の能力者と違う何かがあるのは認める


悪魔や神格、霊装に奇形種


そういった人外の存在などではなく静希には他の能力者にはない何かがある


それは能力的なものではなく精神的なものだろう


だからと言って命の危険があるような内容の任務に高校一年生を向かわせるというのはどうだろうか


「でもエドモンドさんいい人だったよ、悪魔のヴァラファールさんももふもふだったし」


「・・・もふもふってそれ褒めてるの?」


褒めてるよ、すごく気持ちよかったと明利は撫でまわした時のことを思い出しているのか満面の笑みを浮かべている


鏡花はその悪魔に遭遇していないためにそれ以上のことを言うつもりはないが、どちらにせよ悪魔という常軌を逸脱した存在に対してこうもフレンドリーに触れ合えるのも静希のおかげ、いや静希のせいといった方が正しいかもしれない


「ところでまさかそれ今度の実習に持っていくつもり?」


「は?当たり前じゃんか、せっかく手に入ったんだ、使わない手はないだろ」


許可なく所持すればそれだけで逮捕されかねないような武器を何のためらいもなく使用することができるあたり、この男は異常だと再認識しながら鏡花は大きくうなだれる


そのうち本当に逮捕されるのではないかと思えるほどに静希は躊躇いというものがない


何とかした方がいいのかもしれないなと思いながら鏡花はもはや恒例となってしまった心労を抱えながら大きくため息をつく


「静希、お願いだから人を殺すようなことはしないでよね?」

「当たり前だ、ちゃんと足や手を狙うって、それに普段は使わないからトランプの中に入れとくよ」


今の彼の主武装はオルビアの剣だ


最も扱っており、使いやすく、手慣れている武装でもある


手加減も簡単だし何より攻撃力が低いために重宝しているようだ


だが、銃というのは良くも悪くも手加減ができない


急所に当たればどんな人間だろうと九割九分即死するだろう


それが本人に殺す意志があろうとなかろうと、引き金にかかる指にほんの少し力を入れるだけで命を奪うことができる


学生にとって、いや一人の人間として他人の命を奪うというのは非常に重いものだ


それは恐らく静希とて例外ではないはず


敵と認識した人間には躊躇のない性格とはいえ今まで人の命を奪ったことはない


普通の動物の命を奪うことは静希を始め一班の人間は全員が共通して経験している


こういう言い方は語弊を生むため鏡花は嫌っているが、動物と人間では命の重さが違う


人間は強く他人と結びつく生き物だ


良くも悪くもその結びつきは多くの影響を産む


命を奪うということはその影響の中で最悪の状況を作り出しかねないのだ


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