分隊
全員を広間に集め、テーブルを出して作ってもらったおにぎりとみそ汁をごちそうになっているなか、徐々に空は明るく、わずかにではあるが日の光も入りだした
用意されたおにぎりは大皿にたくさん乗っており、中身もおかかや昆布、梅干し、鮭など具は様々、味噌汁も郷土野菜をふんだんに使った野菜たっぷりの味噌汁を鍋いっぱいに作られていた
「ねえ静希、今日はどうするの?昨日みたいな陣形で行動するの?」
「いや、今日は二手に分かれる」
さすがに目標を探すのに一丸となって行動していてはいい的だし効率が悪い
かといって分散しすぎても問題だ、互いの連絡を取りにくくなる
探知できる能力者が二名、ちょうど前衛も二名いることだ、二つに分けない手はない
「昨日と同じ、俺、明利、雪姉チームと陽太、鏡花、熊田先輩チームだ」
えぇー!と陽太と鏡花の二人が同時に不満の声をあげる
実はこいつら仲がいいんじゃないかと思いながらも予想通りの反応に頭が痛くなってくる
「陽太は前衛、雪姉も前衛、この二人は分ける、明利と熊田先輩は探知能力がある、よってこの二人も分ける、俺は明利の能力と相性がいい、そして陽太と鏡花の能力も相性がいい、だからこのチームなんだ」
「相性がいいってあんたはずっと言ってるけどさ、どう相性がいいのか教えてほしいわ」
「まったくだよ、変換と発現って相性悪そうだぞ」
性格の意味では確かに相性は最悪だろう
陽太の能力がただの発現などであれば相性はまったくの逆になっていただろう
「陽太は前衛で、一度発動すると仲間でも近付くことができなくなる、フォローだって難しい、でも鏡花の変換能力なら状況を見て足場や盾、陽動やらできる」
「それならあんただってできるじゃない、この前のチーム戦じゃ・・・」
チーム戦を思い出して鏡花は気付く
そう、静希は陽太の能力を助長したり、陽太自身から注意をそむけることはしていた、がそれ以上のフォローはできないのだ
「次に、陽太の能力は明利とは相性が悪い、使うのが木と火だ、相性最悪、それに引き換え、明利の同調を使ってもらえばこっちはトラップだの攻撃だの遠隔でし放題、相性は最高、鏡花と明利は、相性は悪くないだろうけど、まだお互いにカバーしあうことは難しいだろうし・・・」
それ以上に明利が鏡花に遠慮なく指示を飛ばしたり行動を補佐できるとは思えない
負傷者が出た時などのいざという時は明利は非常に強気になって指示を飛ばせるのだが、それ以外は臆病な女の子、それが明利の弱点だろう
「もう喧嘩を普通にできるくらいの仲になってるお前らの方が連携はしやすいと思ってな、お互いに遠慮なんかしないだろ?」
「私が陽太に?ないわね」
「こいつに遠慮なんて使ったって無駄だっつーの」
「言ってくれるじゃない」
「そっちこそ」
「はいはいそこまで、以上がチーム分けの理由だ、なんか文句あるか?」
全員を見回すが、異論は出てこないが、熊田が手をあげる
「二年生二人を分けたことには何か意味が?」
確かに前衛と後衛索敵の二人である二年生を分けることに意味はないようにもみえる、むしろ一緒にしておいた方が連携が活きるのではないかと思われるが
「一応あります、まず俺達が実戦はほとんど初めてってこと、実戦慣れしている二人を一緒にしておけば確かに実力は凄まじいでしょうけど、もう一方のチームの腰が引けます、できるなら経験者兼実力者も分配したいんです」
実戦の空気というのは訓練などとは違うだろう、それは昨日の件で嫌というほどわかっている
実際に負傷をした人物を見るまではっきりとしなかったそこにある実戦特有の空気、緊張感と言ってもいい
一歩間違えれば死と隣り合わせであることを無理やりにでも実感させられる
新兵同然の静希達には上手く緊張をほぐせる先輩の存在が必要不可欠だった
「異論はないよ、静が一緒ならナイフの調達も楽だしね」
「わたしも大丈夫だよ」
「わかったわよ、異論なし」
「了解したよ」
「うん、納得した、なかなか頭を使っている」
全員の了解が取れたところで、静希は味噌汁を口に運ぶ
「そうだ明利、皆に種を渡しておこう」
「あ、そうだね」
明利はカバンの中から一人二つずつ小さな茶色い何かの種を手渡す
「これは?」
「明利の能力のマーキングがされた種だ、発信機代わりだな」
「一つは、皆の位置を知るために、一つは目標と接触した時に、身体のどこかにとりつけてほしいの」
「あぁなるほど、保険ってことね」
一度接触しても、その場から逃がしてしまうこともあるかもしれない
そういう時のための保険だ
一度逃がしても明利の能力で態勢を立て直した後でまた捕獲に移れる
策は二重三重に張っておかなくては万全とはいえない




