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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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趣向と少数

「ヴァルからしたらこの生活はどう?やってみたいと思う?」


「・・・いや、さすがにあそこまでの堕落は好みではないな・・・我々にも良し悪しというものがある」


やはり悪魔の外見的特徴が大きく異なるようにその趣向もかなり異なるようだった


少なくともヴァラファールはメフィのように堕落しきった生活は好まないようだ


悪魔にもいろいろいるのだなと実感しながらオルビアはおおきくため息をついた


「あんたは頭固すぎなのよ、もっと柔軟に考えなきゃ損するわよ?」


「・・・その忠告は千年ほど遅い、今更性分など変えようもないだろう」


二人はかなり昔からお互いを知っているようだったが、どうやらそこまで深く互いを知っている訳ではないようだ


だが同族であるが故か、妙な親しさを醸し出している


メフィが静希に向けるものとはまた別の、信頼にも似た何かであるとオルビアは理解していた


それはエドも同じだ


それほど長い付き合いではないとはいえ、死線を潜り抜けた二人にはそれ相応の信頼関係が結ばれている


だがメフィとヴァラファールの間にあるそれはまた別


口では表現し辛い、何かがそこにはある


空気にも似た知覚できない何かが


「エド、お前って何か食べられないものって・・・何してんだお前ら?」


料理の途中で抜け出してきたのか、手をタオルで拭きながらリビングにやってくる静希はその場の空気に僅かに違和感を覚えていた


なにを話していたかまでは聞こえていなかったのか、不思議そうな顔をしているとメフィは軽く笑って見せる


「何でもないわよ、悪魔と悪魔のお話してただけ」


メフィの言葉に興味なさそうにふぅんと視線をエドに戻す


「で?何か食えないものとかあるか?アレルギーとかあるなら注意するけど」


「いや、苦手なものは無いよ、いろんなところに行ったからね、大概のものは食べられるつもりさ」


「そっか、なら安心だ、明利、何でもオッケーだってさ」


また台所に戻っていく静希を眺めながらメフィは僅かに笑う


何か思いついたという表情で、それがなにを指し示すのかを知っている邪薙とオルビアは僅かに怪訝な表情をする


「ねえ、エドモンドは私達の中で誰が一番シズキに信頼されてると思う?」


その言葉に邪薙とオルビアの眉が僅かに動く


言葉の意味は正しく理解されている


第三者の視点から、そして同じ悪魔の契約者としての視点から、静希が最も信頼していると思われる人物


「メフィストフェレス、その問答に何か意味が?」


「なによ、あんただって気になるでしょ?今まではメーリ達みたいに私達の事情を知ってる人間しかいなかったんだから、私たちがどう見えるのか、知りたいじゃない」


明利、陽太、鏡花、そして雪奈や熊田、城島


静希の周りに存在する人外の事情を正確に把握している人間は少ない


そもそも静希が人外をひきつれているということ自体を知るものが少ないのだ


それ故に今まで周りからどのように見られているかなど考えたことがなかった


そして今、目の前に自分達の存在を認知しながらも詳細な事情を把握しない人物が目の前にいる


「エドモンド様は客人です、そのような興味本位の事に」


「あら?なに?自信ないの?シズキに信頼されてるって思えないの?」


メフィの軽口と品定めするような視線を前にオルビアは目を鋭くしながら鼻を鳴らす


「・・・安い挑発に乗るつもりはありませんよ、邪薙、貴方からも何か」


「せっかくだ、聞いてみてもよいだろう」


「な・・・」


少しは常識的であると思っていた邪薙の同意が得られなかったオルビアは僅かに驚いていた


他人の意見に流されるような軽い思考を持つ様な神ではないと思っていたからこそ同意を求めたのだが、存外この神格は流されやすいようだった


「なに、あくまで第三者からの意見だ、我々がどのようにシズキと関わっているか知らぬ者に聞くのは決して無駄ではないだろう」


それは実際とは関係のない評価、それこそ参考程度にしかならない


何せエドは静希の事をほとんど知らないのだ、そしてその傍らにいる人外達の存在についても


だからこそ、この異様な日常を前にどのような結論を出しても問題はない


「オルビア?多数決って大事よ?せっかくだし聞いておきましょうよ」


「・・・わかりました、私だけ反対していても話は進まなそうですね」


自らが少数であることを自覚したのかオルビアは大きくため息をつく


真面目型思考を持つオルビアとしては他人の意見とはいえ静希との信頼度を測られるのはあまり良い趣向とは言えなかった


自らが忠誠を誓った人への信頼を推し量るなど他人にできるものではないという考えから来るものでもあり、第三者の意見など聞いたところで自分の忠誠は変わらないという意味合いも含まれる


だが心のどこかで自分を信頼して欲しい、また信頼されているように見られたいという気持ちがあるのも事実だ


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