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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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くつろぎ堕落する

「ならせっかくだ、シズキの手料理を頼むよ、テーマはそうだな、日本の家庭料理、どうかな?」


「まぁいいけど、明利手伝ってくれるか?」


「え?あ、うんいいよ」


先ほどまでずっと幸せそうにヴァラファールを撫でまわしていた明利は我に返ったのか名残惜しそうに巨大な獣型悪魔から離れて台所へと向かっていく


その様子を見てエドは静希と見比べてニヤニヤしている


「いやぁ・・・それにしても、シズキも隅に置けないなぁ、あんなに可愛いガールフレンドがいたなんて」


「なんだよそれ、ひょっとしてバカにされてるか?」


ニヤニヤと笑うエドに対して静希は呆れ半分のため息をつく


静希も台所に向かい軽く食材を確認したうえで調理を開始する


そんな中エドは軽く静希の部屋を物色していた


いや、物色というのは少しいい方が悪い


軽くなにがあるのかを見に行ったとたんに目を疑う


それは初めて静希の部屋を見た鏡花と同じ反応だ


どこを見ても刃物刃物刃物、軽装備用の武具が大量に飾られている光景にエドは自分にこれが向けられなくて本当によかったと思いながらおとなしくリビングで待つことにする


「そういや明利、飯作るなら食ってくか?作り終えると結構な時間になっちまうし」


「んと、そうだね、久しぶりに食べてくよ、あとでお母さんに連絡しとかなきゃ」


少し迷ったがすぐに快諾し明利は少しだけ恥ずかしそうに笑って見せる


二人で着々と料理を進めていく中リビングにいる人外と一人の人間はのんびりとしている半面いろいろと話し合っているようだった


「それにしても、メフィストフェレス、君は随分とくつろいでいるんだね、いつもそんな感じなのかい?」


「あらいけない?自分の家にいたらくつろぐのが常識でしょう?」


ソファに寝転がりテレビのリモコンを占有して自分の見たいものを見ている彼女は、まさに自宅での立ち居振る舞いだ


この家に住んで早半年近く、堕落という言葉が一番似合うこの態度に近くにいた邪薙とオルビアが僅かにため息を漏らす


「最近はやたらと我らが動くことが多くなってきたからな、僅かながらにシズキも奴の態度を半ば容認しているのだが・・・さすがにな・・・」


「エドモンド様からも何とか言っていただけませんか?最近のメフィストフェレスの態度は些か目に余ります」


この人外達の中で最も多く活躍しているのはオルビアだ


常に静希の基本装備としてその手に握られることとなり、なおかつこの家の家事の八割を担っていると言ってもいい


次点としてフィア、移動方法としてのフィアの能力は非常に有能であり、牽制や行動制限などにも有効だ


そして最も危険な状況に対してはメフィと邪薙が登場する


攻撃面ではメフィが、防御面では邪薙が、それぞれ最強の矛と盾となり静希を守護している


八月に入ってから静希はこの二人に頼ること増え、多少のわがままも見逃してやろうという気になってしまっているのだ


さすがに見ていられなくなったのか、何度か口を出したことがあるのだが、静希に止められてしまった


主の意向とあれば従者であり剣であるオルビアがそれ以上口を出せるはずもなく、邪薙としても特に口を出す理由もなかった


だが同じ同居人としてさすがにこの態度は許容しがたい


いや、元よりメフィの態度は堕落しきっていたものであったが、エドの介入によりこれがどれほど凄惨なものであるかを実感させられたのだ


その理由としてエドの近くにいるヴァラファールの存在が大きい


先ほどまで明利にいいように撫でまわされていてもまったく文句を言わず、ある種の風格さえ漂わせながらその場に鎮座している


同じ悪魔にも関わらずこの差は一体何だろうか


悪魔が全て堕落した存在だというのならまだメフィのこの行動にも納得できたのだが、流石に実例として目の前に他の悪魔がいたのではその言い訳は通用しない


同居人として、そして静希の傍らにいるものとして、これ以上の怠惰な態度を続けさせるわけにはいかなかった


「確かに、随分と気が抜けているね、どちらかというとメフィストフェレスの方がこの家の主みたいだ」


「ふふん、それもいいけど、この家はシズキのひいてはカズヒトのものよ?さすがにその位の分別はわきまえてるわ」


この生活は変えないけどねと付け足してメフィはニュース番組を見ながらニヤニヤと笑っている


彼女からしたらこの世界の変動ほど面白いものは無い


今まで多くの人生を見てきた、多くの動乱を見てきた


その中で契約者がどれほどの無理難題に関わってきたかもしっかりと覚えている


この世界に起きるものすべてがメフィにとっては見応えのあるエンターテインメントのようなものなのだ


飾り気のない映画、自分が実際に参加さえできてしまうノンフィクションの物語


これほど面白いものがあるだろうか


だからこそメフィはこうしてテレビを見続ける


今の契約者、五十嵐静希がこれからどのような動乱に巻き込まれるのかを見定めているかのように頬笑みを浮かべて


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