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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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一日早いプレゼント

「久しいな、その節では世話になった」


「あぁ、そっちも元気そうで何よりだ」


静希や他の人外はまったくもって慣れたものなのだが、ヴァラファールを見たことがない明利は目を丸くしてゆっくり恐る恐る接近していく


そして彼が悪魔であると理解したのかゆっくりと横から手を伸ばす


「・・・あ、あの」


一応声をかけておくのが礼儀だと思ったのか震えながら声をかけるとヴァラファールは大きな顔を明利に向ける


「ん?なんだ?」


「・・・撫でてもいいですか?」


「・・・好きにしろ」


まったくもって渋い声で許可を出した悪魔はしばらく明利によって優しく、そして激しく撫でくりまわされていた


大型でライオンの姿をしていても動物は動物、明利からすれば愛でる対象には違いないのだろうか


これほど大型の生き物に対してまったく臆すことなく触れられるというのはある意味脅威的な精神構造をしている


「でエド、お前のプレゼントってのは?」


「あぁ、これだよ、いやはや、調整に苦労したよ」


エドモンドがアタッシュケースの一つを開けるとその中には三つの物体があった


その物体は静希も一度は見た事のある形状をしている


そう、そこにあったのは三つの拳銃だった


「『ワルサーp22』と『SIGSAUERp230』と『p238』それぞれ君の能力に入れられる様にちょっとだけいじってある、重量は装弾時に499gになるようにしてあるよ、弾はこっち」


もう一つのアタッシュケースを開けるとそこには大量の箱がある、その中はすべて拳銃の実弾だった


ワルサーp22は見た目は少し大きい、全体的にごつくてしっかりと握ることができる


逆にシグザウエルp230とp238の方は少し小ぶりだ、装弾数も恐らく関わってくるだろうが随分と軽い印象を受ける


何度か銃を握ったことがある静希としてはこんなに軽い銃があるのかと少し驚いていた


「弾は二種類、ワルサーはこっちの22LR弾、シグザウエルは32ACP弾を使用してくれ、一応シグシリーズのp238も同じ弾丸を使えるから持ってきた、この三丁は自由にしてくれて構わない、正直コルトポケットにしようか迷ったんだけどね」


淡々と物品を取り出して説明しているエドモンドをよそに静希は渡された銃をくまなくチェックしていた


整備の技術はあるために軽くばらして細部を確認していた


細かな部品、グリップやスライド、サイトも随分といじられているようだったが全く動きを阻害しない


それどころかスムーズに動く


どれも計算されつくしたカスタマイズだ


「これだけのもの・・・高かったんじゃないのか?」


「なに大したことないさ、喜んでくれたかい?」


「あぁ、日本じゃ手に入らないものだからな、ありがとうエド」


嬉しそうに整備を始める静希は新しいおもちゃを手に入れた子供のようだった


三つの銃を見比べて特徴を割り出そうとしながらトランプに入れられる様に調整を始めている


まさか日本にいながら銃を手に入れることができるとは思わなかった為にその喜びは尋常ではない程に大きい


今まで銃の取り扱いは学んできたというのに城島から欲しけりゃ自分で手に入れろと言われ続け何度枕をぬらしたことか


だがそれも今日までだ


攻撃手段が増えたことで静希としては非常に嬉しい武器が三つも増えたことになる


「そう言えばこの銃の登録番号は?一応管理するなら知っておきたいんだけど」


「ん?ないよ?」


エドのまったく悪意のない言葉に静希は絶句する


一瞬何を言っているのか理解できなかったのだ


「い、いやいや、この銃どっかで買ったんだろ?なら登録番号とか」


「いやいや、この銃は父の知り合いに頼んで特注してもらったんだよ、だから企業とかの登録番号はないんだ」


エドの言葉に静希は再度絶句する


銃は製造、販売に至るまでに必ず登録番号というものをつけられる


その登録番号で所有者が分かるようにしておくというのもあるがどこで製造されたかというのも重要な情報なのだ


その番号を所有する際に銃の所有などを取り締まっている機関に通告することで初めて所有が許可される


この登録番号のない銃は基本所有するだけで違法だ


「あ、安心してくれよ?ちゃんと所有許可はとってあるし所有者は僕になってる、細かい手続きはやっておくよ」


さすがに所有するだけで違法になるような銃を渡しはしないようだが、さすがに肝が冷えた


銃器取り扱いの免許を取得している静希としては肝が冷える内容だ、ばれたら一発で逮捕されかねない


せっかく得た武器で御用になるのだけは勘弁してほしいところである


「それとこれだけあれば当分は平気だと思うけど、もし弾丸が補充したくなったらメールしてくれ、一発一円で買って送ってあげるよ、さすがにこれはただにはできないんだ」


「いや、手に入れてくれるだけ有り難いよ、悪いないろいろと」


この国にいるうちはまともに弾丸の補充もできないかと思っていたのだがエドモンドが仲介に入ってくれるのであれば非常にありがたい


値段もかなり安めに設定してくれている、輸送量や原価を考えても破格であると素人の静希でも理解できた


「ちなみに弾倉は各銃に三つずつ用意したよ、装填数とか特徴とかはマニュアルを用意しておいたから確認してくれ」


「・・・本当になにからなにまで悪いな、ここまでしてくれるとは」


銃のリロードはもともと用意してある銃弾を込めた状態の弾倉と即時交換がベストである、要するに予備弾倉がなくては話にならないのだ


あまり銃を撃つつもりのない静希にとっても、三つも弾倉があるというのは有り難い


予備弾倉二つもあればそれなりに長丁場で戦えるだろう


「なに、気に入ってくれたなら何よりさ、その手付きを見るにある程度使い方は心得てるみたいだし、我ながらいいプレゼントになったよ」


拳銃の取り扱い方はこの夏に嫌という程教え込まれた


それこそ手から銃用の油の匂いが落ちない程に何度もいじり倒したものだ


三つの銃の駆動を確認しながらしっかりと機能していることが分かると静希はとりあえず銃を置いてエドの方を見る


「ところで父さんに会ったって言ってたけど、一体どこで会ったんだ?海外なのはわかるけど、あったのっていつ?」


静希の父親和仁は基本どこにでも行く


それこそ貿易のできるところであれば地球の裏側だろうが極寒の雪国だろうが南国だろうが砂漠だろうがどこにでも足を運ぶ


だからこそこの夏に世界へ足を踏み出したエドモンドが一体どこで出会ったのかが気になったのだ


「あぁ、会ったのは君と別れて二週間後くらいかな、ドイツで会ったんだよ、父と一緒にビールで乾杯したりした、いやなかなかの人物だった」


エドからすると絶賛の評価を得ているが一体どのような会話があったのか静希は全くイメージができない


そもそも和仁が仕事相手と対話する際にどのような態度をとっているか静希は全く知らないのだ


知っているのは思慮深く物事の全体と詳細を一度に見る事のできる人物であるという事だけ


自分で思っている以上に静希は自分の父親の事を知らない


週一で電話をかけてくる母親と違って父は全く静希の生活に介入してこない

基本傍観のスタンスだ


だからと言って特に不満がある訳ではない、こうして静希が人外達と伸び伸びとした生活をできるのも父の放任っぷりのおかげでもある、そういう意味でも感謝を忘れたことはない


「エドって今父親の仕事手伝ってるんだろ?運送業だっけ?」


「輸送って言った方が正しそうだね、陸海空、何でもやるよ、基本移動しながら寝たり書類作ったり、結構忙しい毎日さ」


軽く笑ってのけるが移動し続ける仕事というのはさりげなくきついものがある


一定の場所に留まらないということはそれだけ見ず知らずのところに身を置くということでもある


知らないところにいるというのは心理的に非常に強いストレスを受ける原因でもある


それをこうして平然としていられるということはそれなりに精神が強い証でもある


悪魔に遭遇して犯人に仕立て上げられてなおこうして普通に笑っていられるのだから、図太い神経をしているということは確かだ


「じゃあもしかしてあんまり長く日本にはいないのか?」


「あぁ、実は明日の朝にはもう出国するんだよ、今日の夜にはホテルに戻っておかないとね」


時間を見るともう十六時半、すでに夕方で日は傾き始めている


ゆっくりしていられる時間はあまりない、社会人は本当に大変だ


「さすがに日本に来てなにもしないってのはなぁ・・・なんかしたいことってないのか?または食べたいものとか」


偶然でも何でも日本に来たのだ、せめて少しでもいい思い出を作ってもらいたいがあまりにも時間がない


そうなると夕飯を一緒に食す程度のことしかできなさそうだ


事実日本が誇れるものと言ったら食文化と無駄に凝った独特な創作物くらいだ


「そうだな・・・日本ならスシやテンプラなどが捨てがたいが・・・普通の家庭料理なども食べてみたいな」


「それなら定食屋か・・・本当に普通のでよければ今から作るけど?」


「え?シズキは料理ができるのかい?」


「そ、それなりには」


もちろん静希の料理は最低限の一人暮らし用の料理でしかない、そう考えるとたいした腕ではないがこれでも結構長い間一人暮らしを続けているのだ、それなりの自信はある


それに今は明利もいる


二人で作ればそれなり以上の出来栄えにはなるだろう


それが海外から来た人物の舌を満足させるかどうかは別として


誤字報告が五件たまったので複数投稿


誤字が出始めるのは慣れっこ、だから気にしない


けどやっぱ少ないほうが読みやすいとは思うので気を付けている


微妙に矛盾した言い回しですね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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