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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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人外密度

「イガラシという珍しいファミリーネームだからもしやと思ったんだがまさかお父上だったとは、話をしたらそろそろ君の誕生日だと言うじゃないか、それで仕事で日本に来ることがあったからついでにプレゼントでも渡そうと思ってね」


朗らかに笑いながら二つの大きめのアタッシュケースを見せるその姿は、一回り以上年上の男性とは思えない


エドモンドの父親は確か運送業をしていると聞いた、そして静希の父親は貿易商、物品を運ぶという仕事上、関わるところもあるだろう


だが世間は狭いものだ、父親である和仁もまさか息子が救った人物と仕事で関わることになるとは思ってもみなかっただろう


「父さんは何か言ってたか?」


「あぁ、もう随分と話しこんでしまってね、僕の父に怒られてしまったよ、君の様子をしきりに聞いてきて、『無事ならそれ以上は望まない』ってさ」


父さんらしいなと呟いて静希は軽くため息をつく


「ねえ静希、そろそろ守衛さんが困ってるからその人、外に出した方がいいわよ」


「あ、すいません」


生徒の知り合いとはいえ肉親でない人間を許可なく校内に入れるのはさすがに問題があるのか、守衛は何やらしぶい顔をしていた


静希としても彼にこれ以上の心労をかける訳にもいかず一旦エドに外に出るように促す


「お前らどうする?今日も特訓か?」


「えぇ、このバカについてなきゃ、それじゃあね」


「んじゃな」


鏡花と陽太は軽く手を振って早々に演習場へと向かう


さすがに見ず知らずの白人男性がやってきては多少委縮するのか、僅かに急いでいるように見えた


「とりあえずうちに来いよ、ヴァラファールは?」


「あぁ、彼は僕の中にいるよ、所謂憑依状態ってやつだね、もっとも魔素は流してもらってないけど」


悪魔としっかりと契約関係を結んでいるために魔素のやり取りなども完全に取り決めができているようだ


もっともエルフでない静希とエドは魔素のやり取りなど全くないのだが


「明利はどうする?今日は帰るか?」


「え?えと・・・じゃあ寄ってく」


わかったと返事をして静希と明利、そしてエドは三人で帰宅することにする


マンションの中に入るとすぐに人外達がトランプから抜け出して各々のベストポジションへと移動していく


メフィはソファに横たわり、邪薙はフローリングで座禅をし、オルビアは静希と明利、エドの荷物をそれぞれ持ってリビングまで運ぶ、フィアは静希の頭の上だ


「いやぁ、相変わらずこうして人外達がそろうと壮観だな・・・というかすごい部屋だなここは、研究所か何かかい?」


「俺の私物だよ、適当にかけててくれ」


静希が着替えてくると同時に明利は台所に向かいお茶を入れ始める


思えばこの家に幼馴染、学校関係、家族以外を上げたのは初めてかもしれないと思いながら静希は私服に着替えて戻ってくる


すると明利がエドに紅茶を出していた


片言ながら英語で話す明利と片言ながら日本語で話すエドは見ていてとても微笑ましい


「いやぁ、シズキ、君にこんな可愛い妹さんがいたとは、まったく隅に置けないなぁ」


「なんだよそれ、つか明利は妹じゃないぞ、俺の幼馴染で同級生だ」


傾けていた紅茶のカップごとエドの動きが停止する


数秒固まった後に静希と明利を何度も見比べて目を見開く


「はぇ?同い年?」


エドは静希の言葉を正確に理解したのか慌てふためきながら言葉にならない英語で騒ぎ始める


「ま・・・まってくれよシズキ、君確か今年で十六になるんだったよね?この子が十六?冗談だろう?スクールガールじゃないの!?」


スクールガールとは英語で小学生の意味である


その意味を明利も知っていたのか軽いショックを受けてうなだれてしまう


「立派なハイスクールの生徒だっつーの、それ以上言うと明利が泣くぞ」


「あ、ああぁぁあ、ごごごごめんよ、とても小さかったものだから、ほ、ほら日本人は童顔だからさ、間違えてしまったんだよ」


必死に謝罪と言い訳をしているが、そんなに早口の英語でしゃべっても明利はほとんど理解できないだろう


同調による言語のニュアンス理解のおかげで、まぁ謝罪しているということは理解できるだろうが


若干泣きそうになっていた明利は大丈夫ですよと言ってちょっと落ち込みながら台所へと戻っていく


「ねえエド、そろそろヴァラファール出してやったら?人の中に入ってるのって結構窮屈なんだからさ」


先ほどから傍観していたメフィが静希の元へと浮遊してくるのと同時にそうだねと同意してエドは身体に憑依していた悪魔ヴァラファールを室内に顕現することにした


大きな獅子の顔と身体、ところどころ別の生物の混じったキメラのような悪魔ヴァラファールがリビングに現れる


人口密度ならぬ、人外密度が非常にあがっている


この部屋だけで人外が五人だ、もはや一つの家族と言えるのではと思えるほどの大人数


この家いったいどうなってるのと言われても全く反論できない状況となってしまっている


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