再会
「どうしたんですか?」
「あ、あぁこの人がちょっとね、許可がないと部外者は入れられないんだけど・・・」
守衛が言うには会いたい人がいるから中に入れてほしいと言っているのだが許可証もなにもなしだという
親近者ならば生徒の名前を告げ確認が取れれば入ることもできるが、恐らく保護者などの家族ではないだろう
以前陽太がやったように職員の許可があれば入れないこともないが、あれは相手が子供だったからこそ通じた裏技のようなものだ、大の大人、しかも素性の知れない外国人に通じるかは怪しいところである
明利は困った様子の守衛を見かねて外人に同調をかけて少しでも言葉を通じさせようと試みる
「あの、誰に会いたいんですか?」
できる限りゆっくりと日本語で、そして紙に英語で誰かに会いたいのですか?と書いて男に見せると男は僅かに頬を緩める
「はい、会いたい、久しぶりに会いたい、ここにいると聞いた」
片言ながら自分が誰かに会いたいという事を告げている
どうやらそれほど気性が荒い人物ではないようだった
目の前にいる小さな明利を驚かせないように屈んで視線の高さを合わせたうえでしっかりと言葉を話している
その視線からするに幼い子供に話しかけるような慈愛に満ちた目をしている
子供という意味では間違いではないのだが全く別の意味で何かを間違っているような気がしないでもない
「えっと、会いたい人の名前はわかりますか?」
「わかる、シズキ・イガラシ、会いたい人、シズキ・イガラシ」
「・・・え?」
その名前を聞いた途端に明利と鏡花は目を丸くする
見ず知らずの外国人からまさか静希の名前が出るとは思ってもみなかったのか驚き僅かに混乱してしまう
そして二人は僅かに警戒した
先日訳のわからない外国人テオドールから暗殺されかけた静希だ、またどこぞの訳のわからない組織から狙われているのではないかと勘繰ってしまう
「明利、どうする?」
「んと・・・どうしよっか・・・」
明利も鏡花も面倒事への対応は慣れてきているが個人的に静希を指名してきた人間に対してどのように対応していいか非常に迷うところである
長い付き合いの明利といえどお互いに知らない交友関係くらいはある
もしこの人物が静希の知り合いだった場合問答無用で攻撃するというのは得策ではない
「呼んだ方がいいんじゃない?このままいくと守衛さんも困るし」
「ん・・・そうだね、ちょっと待っててください」
鏡花が男性の相手をしている間に明利が携帯で静希に電話する
すぐに校門に来てもらうように告げて切るとどうやら静希もすでに下校コースに入っていたのか数分と経たずにやってくる
「おーい、明利、何か用か?」
静希が遠くから手を振ってやってくると目の前の男性が突然走りだす
やはり敵だったのかと思いながらも鏡花が能力を発動する前に男性は静希の肩を掴んで思い切り揺らし始める
だがその行動には敵意もなにも感じられなかった
「シズキ!久しぶり!」
「ああぁあわ!?え、エド!?何で日本に!?」
肩を猛烈な勢いで揺さぶられる静希は動揺しているようだったが警戒は全くしていないようだった
むしろ目の前に現れた外国人に対し友好的な態度をとっているように見える
その様子を見た守衛も部外者ではあっても不審者ではないと察したのか様子を見ながらため息をついていた
そう、この場にいるこの白人男性はエドモンド・パークス、以前静希が任務でイギリスに行った際に知り合った悪魔の契約者である
「静希君、この人知り合いなの?」
「あ、あぁ、こいつはエドモンド・パークス、前イギリスに行った時知り合った奴でさ」
簡単に事情を説明しようと思ったのだがそもそもにおいて前提から悪魔が関わっているだけにこれ以上言葉を紡ぐのが難しい
「おぉ?なんだ?静希が外人に絡まれてんぞ?」
静希に続いてやってきた陽太もその様子を見て目を丸くしているのだがエドは全く気にすることなく静希の背を叩いたり抱きついたりしている
外国のスキンシップとしては特に問題ないことなのだがこの暑い中これをやられると非常に不快指数が跳ね上がる
「エド、とりあえず事情を説明しろ!なんで日本にいるんだ?」
「えと、あれだ、シズキの」
「あー、俺に対しては英語でいいぞ、ちゃんと理解できるから」
トランプ内のオルビアに翻訳機能をオンにしてもらい、未だ日本語が不自由であると思われるエドは安心したのか流暢な英語に切り替える
「実は先日、仕事中に君のお父上に偶然会ってね」
「父さんに?」
静希の父親は貿易商をしており、世界中を飛び回っている
日本だけでも問題ないのではないかと思えるのだが少しでも利益を上げるためには世界中回って見聞を広めるのだとはっきり言い張る人物である
父親として正しい姿かどうかは微妙なところだ、それについていっている母親も母親だが




