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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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朝の一時

時刻は午前四時、静希は予定通りに起床していた


まだ日は昇っていないが東の空がわずかに白んで来ている


まだあたりは肌寒く、わずかではあるが口から白い息が出ているのが見えた


大きく伸びをしながら欠伸をすると、かけてあった目覚ましが仕事を始める


「うぅん、もう朝かよぉ」


「さっさと起きろ、時間はあまりないんだ」


陽太のかぶっている布団を引きはがし、部屋の窓を開けて冷気を呼び寄せる


肌を刺す冷気が眠気をかき消して強制的に頭を覚醒させる


普段ならばこの寒さは忌み嫌うものだが、この状況ではありがたかった


「さっむいなぁ、この時間こんなに冷えるのか」


「あぁ、でも目が覚めるだろ?」


「朝か・・・寒いな」


冷気によって熊田も目を覚ましたようで布団からのそりと抜け出してくる


どうやら隣の部屋の女子たちも起き始めたようで衣ずれの音が聞こえ始める


「皆起きたか?」


「まってぇ・・・雪奈さんがまだおきてない・・・」


眠そうな明利の言葉がこちらに届くが、それと一緒に雪奈の寝言も聞こえてきた


「ったく、しょうがねえな、入るぞ」


「え!?ちょっ!」


静希は女子の部屋に入り布団をかぶったままの雪奈からぬくもりを奪い去り窓を全開にして部屋に冷気を呼び入れる


「ああぁぁあさぁぁむういいいい、なにすんだよぉ」


「とっとと起きろ、明利も鏡花も起きてるぞ」


寝ぼけ眼をこすりながら雪奈は頭を揺らしながら抗議するが、まだ覚醒していない頭が送る抗議は意味のわからない言葉の羅列ばかりだった


「ほれ顔洗ってこい、さっぱりするから」


「うぅ・・・ねむい」


雪奈を部屋から追い出して水場に向かわせると静希の顔にまくらが飛んでくる


「ちょっと静希!あんた女子の部屋に入ってくるとか何考えてるのよ!」


「入るって言ったぞ」


「いいとはいってない!第一女子の寝顔を見るとかあんた正気!?」


鏡花のその言葉を微妙に理解できていなかったが、数秒してようやく理解したのかあぁ、と手を叩く


「そうだった、今はお前もいたんだったな、悪かったよ、明利と雪姉の寝顔なんて見慣れてるから」


「見慣れて・・・」


鏡花が明利の方を見ると明利は顔を赤くして首をすごい勢いで横に振る


これ以上振ると首が取れてしまいそうな勢いだ


「べ、べつに変な意味じゃないよ!?昔は一緒にお昼寝とか、疲れて寝ちゃったりとかしたし、それだけだよ!?」


「ふぅん、怪しいわね」


「怪しくないよ!だよね静希君!」


「どうだったかな、もしかしたらいろんなことがあったかもしれないけど」


「ほう、明利?包み隠さず何もかも話しちゃいなさい!」


「きゃあああ!」


明利に襲いかかってくすぐりの刑に処している鏡花は置いておいて、静希も目を覚まそうと水場に行く

すると雪奈が頭から冷水を浴びていた


「ずいぶんとダイナミックな洗顔だな」


「あぁ・・・ちゃんと頭起こしておかないとな・・・もうヘマしないように」


先日の負傷を思い出しているのか、腕を抑えながら歯を食いしばっている


どうやらずいぶんとプライドを傷つけられたようで、その眼は目が覚めてすぐとは思えないほどに鋭い


「今回の目的は捕獲、殺しちゃいかんよ?」


「わかってる、だけどこの腕の借りはきっちり返さなきゃな」


そういって笑う雪奈の顔は明らかにこれから起きることを暗示している


このまま突っ走らせると本当に殺しかねない


今日の班分けは熟考するべきかもしれないと静希は冷水で顔を洗いながら考えていた


「おうお前ら、起きていたのか」


「先生、おはようございます」


洗面所にやってきたのは相変わらず目元の見えない女教師城島だった


頭を掻きながら大きく欠伸をする


「奥さんが朝食としておにぎりとみそ汁を作ってくれた、後で全員で食べておけ」


「本当ですか、有り難いです」


朝食は半分諦めてもいたのだが、どうやら先生か村長夫妻が気をきかせてくれたのだろう


「飯も食えば、一気に目が覚めるな!静、私は先に行ってるぞ」


「皆の分残しておきなよ」


「わかってるって!」


食事と聞いてスイッチを切り替えたのか、すっかり穏やかな目つきになって台所へと走っていく雪奈を見送って静希は顔を拭く


「お前と深山は昔からの仲だそうだな」


「はい、家が隣なので昔からよくしてもらってます」


実際どちらがよくしているかは疑問だが、よく遊んだのは事実だ


「あいつが暴走しないようにしっかり目を光らせておけ、さすがに殺してしまうと大問題になる」


「さすがに、雪姉だって物の分別くらいつきますよ」


「だといいがな」


一年以上自分たちよりも実戦を経験しているというのは大きな強みだ


感情的になりやすいとはいえ雪奈もその程度はできるだろうと思っていた


「マストオーダーの内容は変更してある、捕獲を絶対条件、ついでに監査の先生にも言ってあるから」


「あ、そういえば審査はいいとして、監査の先生はどこにいるんですか?本当についてきてるんですか?」


先日の集合時に気付かれずについてきて監視していると言われたものの、周囲にそれらしき人物も見受けられなかった、明利の探査にも引っかからなかったのに本当に自分達の近くにいるのか心配になってくる


「あぁ、ちゃんと定時連絡は来ているよ、問題ない」


「本当ですか?なんかあやしいな」


そんな話をしていると城島の携帯が鳴りメールが届いたことを知らせた


「その証拠だ、ほれ」


携帯を見てみるとそこには『現在幹原明利が清水鏡花にくすぐられ、悶絶している』と書かれていた


「言っただろ、監査の先生はお前達程度じゃ見つけられない、安心しろ」


「これって安心していいのか微妙ですよ」


全員が見えるまたは聞こえる状況か能力を持っているということだ、頼もしいのだが


何とはなしに納得しかねる状況に静希は苦笑した


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