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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」

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九月の始まり

九月


静希達の長いようで短かった夏休みは終わりを告げて二学期が始まってから数日が経とうとしていた


月が変わっても変わらぬ暑さと湿気、そしてまだ俺達の夏は終わらないと言わんばかりに叫び散らす蝉達


温暖化などと世間では騒がれているがただ単に季節がずれているだけなのではと邪推してしまいそうになるほどに暑い


二学期が始まってから高等部内で数少ない部活動が勧誘作業に勤しむのを華麗にスルーして静希と明利は教室へと向かう


喜吉学園、いや能力専門学校には基本的に部活動と言うものが義務付けられていない


その理由として能力者はスポーツなどの公式の試合に参加することができないというのがある


公式試合どころか練習試合さえも組んでもらえないことがほとんどではっきり言って趣味の域を出ないような部活ばかりがはびこっている


基本は文系部だが、中にはスポーツがやりたいからという理由で設立された部活もある


能力者とはいえ人間だ、スポーツ選手に憧れることだってある


絶対になれないとわかっていてもそれでも少しはやってみたいという気持ちがあるのも静希は十分に理解していた


だからと言ってやろうとは思わないが


何故二学期に勧誘が行われるか


それは高等部にあがってきた一年生の為の制度である


中等部から高等部に上がると生活はがらりと変化することが多い


習う学問もそうだが、日々の訓練と新たに始まる校外実習、これら全てを入れればかなりのハードスケジュールだ


新しい生活に慣れるという意味と急に生活を変え過ぎないため、そして少し慣れ始めた二学期に余裕のある者、及びこれをやってみたいというものに関しては部活動への参加が認められる


もちろん成績があまり良くない人間は入部さえできないが


「おはよー・・・今日もあっついわね」


「おっす、おはよー」


静希と明利が教室に入ると下敷きを団扇にして自分に風を送り続けている鏡花と特に暑いという表情を見せない陽太の姿がある


「おぉ、まだまだ暑いな」


「鏡花さん、すごい汗だよ?」


自分達の席について明利は鏡花の顔についている汗をハンカチで拭いながら苦笑する


基本この学校の教室にはクーラーなどと言う文明の利器はない


職員室には配備されているのだが教室にはないため、学生たちは自分の能力やら何やらを使って涼を得るしかないのだ


学費が少ないというのはこういったところに反映されると言っても過言ではない


「あんたら暑くないの?私死にそうだわ・・・」


「お前さすがに暑がりすぎだろ・・・まぁ今日は風がないしな」


窓を全開にしていてもまったく揺れないカーテンに対して入り続ける直射日光、これでは気温は上がるばかり、九月は夏だなと断言できるほどに強烈な日差しに鏡花は汗をたらし続ける


「無理ねえよ、こいつ夏休み家にいる時はクーラー全開だったらしいからな」


「あー・・・なるほど、そりゃきついな」


涼しい顔をしている陽太と対照的に鏡花は恐ろしいほどに衰弱しているように見える


陽太は能力のおかげか寒さや暑さと言った温度に対する耐性が異常だ


冬に半袖半ズボンでも何の問題もなく過ごせるらしい


ある意味うらやましいが、いい意味でも悪い意味でも季節を堪能しているのは間違いなく鏡花の方だろう


「私達はクーラー付けなかったもんね」


「帰るころには結構涼しかったからなぁ」


ほぼ毎日のように訓練にいそしみ身体を動かしてシャワーを浴びて身体を冷やし、帰る頃にはすでに日は傾きいい具合に気温が下がり家に帰った後も風が吹けばクーラーなどはいらない程に快適になる


そのおかげか今年は一回もクーラーをつけなかったのだ


「あんたらはいいわよ・・・こっちはこの暑いのと一緒にいるんだから・・・アイスやらクーラーは手放せなかったわ」


鏡花の指の先には褒められていると感じたのか胸を張っている陽太がいる


暑いというのは能力的な意味だろうかそれとも性格的な意味だろうかと僅かに勘ぐるが今この場では考えないようにしておくことにする


学校が始まってから数日、中には涼しい日もあったのだが今日は夏を思い出すかのような強烈な熱気が戻ってきている


戻ってこなくてもいいからすぐどっか行けと叫びたくなるほどに鏡花は暑さに参っていた


「そういやあんたの同居人達は暑さに文句言わなかった訳?暑苦しそうなのが一人いるけど」


「あぁ・・・あいつら基本暑いときはトランプの中に避難してるからな、この中快適みたいだし」


「へぇ・・・私も入れてほしいわぁ・・・」


この夏、確かに一番暑苦しそうな邪薙が一番苦労していたように思う


何せ顔面が毛に覆われているのだ、犬のように舌を出して息を荒くついていたのを思い出す


だがその度に静希がトランプの中に収納していたのだ


トランプの中に入れば不快感をすべてリセットという優れ物


そもそも人外のくせに暑さとか感じるのかとか気になったが、あの姿を見る限り人間が感じる程度の暑さはしっかりと感じ取っているらしい


メフィやフィアも時たま入れていたがオルビアだけはずっと外に出続けていた


どうやら主を差し置いて自分だけ快適に過ごすというのは許容できなかったらしい


人外達にもいくつかのパターンが出始めているあたり本当に大所帯になってきたなとため息をついた


今回から十一話開始です


長くなったなとか思いながらもようやく二学期です


これからもお楽しみいただければ幸いです

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