表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

376/1032

撮影終了後の後片付け

時間は一週間ほど遡る


「カット!いいよいいよ、良く撮れた」


場所はダムの近く、テオドールに持たせるための映像を撮り終えた静希達はワイワイとその場で騒ぎ立てていた


何せ今まさにメフィによる大破壊が行われたばかりだ、全員妙なテンションになっているのである


悪魔の力を実際に目の当たりにした事のある人物ばかりだったが、圧倒的なまでに強力な力を見ると恐怖を通り越して感動を覚えるものだ


城島は暗殺されかけたその日に、実習の内容の一つとしてあがっていたダムの解体作業の実習を受けられるようにしてもらい、明後日に周囲の人の出入りを完全に遮断した後でメフィによる悪魔の力実演とビデオメッセージの録画を行っていた


「にしても、実際に見てみると圧巻ね・・・」


「あぁ、俺達と戦った時はほんとに手加減してたんだなぁ・・・」


鏡花と陽太が崩壊したダムだったものを眺めながらおおきくため息を漏らしている


実際に攻撃を受けた陽太からしてもこの威力はけた違いだ


むしろ良く手加減していてくれたものだと感謝すら言いたいほどだ、能力発動時だったとはいえこの威力をまともに受けたら陽太の身体は木端微塵に吹き飛んでいただろう


「メフィ、これって手加減したのか?」


「ん?一応ね、これで三から四割くらいかな」


「これでもまだ半分いってないんだ・・・」


静希と明利が驚き呆れているがメフィは得意げではないどころか若干苦笑いしている


「いや・・・さっきの能力はね威力が高すぎると制御できないのよ、最悪暴発しちゃうから、制御可能範囲での最大威力って感じかしら」


「あー・・・そういやお前の能力って再現だっけ?制御と操作性がオリジナルより落ちるって言ってたな」


メフィの能力は発現系統の再現、その再現率は高くても八割


威力に関しては悪魔特有の大量の魔素を使用すれば元の能力者が使うよりも何倍も何百倍も強く使うことができる


だがその威力を扱えるだけの制御性を再現できないのだ


強い能力になればなるほど制御性は求められ、複雑な動きになればなるほど操作性が求められる


メフィの能力はあくまで再現、威力は出せてもそれをまとめ導けるだけの技術を習得できないのだ


それ故にメフィは最低限の動きでしか能力を使わない


特に一方向に向けての射出という形を好む


これはもっとも単純かつ能力を生かせる形であるからだ


無論その気になれば複雑な操作もある程度は可能だろう、だがそうなれば確実に威力を出せなくなる


オリジナルよりも力を強く使うためにはより簡単な動きで使う必要があるのだ


「ちなみにさっきの能力は?今までの光の弾とも消滅とも違ったみたいだけど」


「あら?対価もなしに知りたいって言うの?何かくれないと教えないわよ?これでも私の秘蔵の能力の一つだったんだから」


メフィはカラカラと笑いながら静希と明利の周囲をくるくると回って見せる

どんな風貌でどんな存在であろうと能力を他人に教えることはかなりのリスクを背負うことになる


メフィはより単純な動きしかできないために再現という内容以外に、再現できる能力もできるなら隠しておきたいのだ


事実静希もメフィがどのような能力を再現できるのか全てを把握できていない


否、してはいけないのだ


「それならいいよ、さっさとあの惨状何とかしないとな・・・」


ダムのあった場所を見て静希はため息をつく


そこにあったはずの石の壁は見事に崩れ、辺りには砕けた石材が大量に転がっている


破壊するよりもこっちを撤去するのに時間がかかりそうだ


「先生、あの石材ってどっかに使えたりするんすか?」


「いや、あれはそのまま土にでもしてくれると助かる、元よりコンクリートだからな、まともに再利用はできんさ」


状況を見ながらいくつも書類を書いている城島は先ほど大破壊が行われたというのにまったくと言っていいほど関心を示していない


それなりに場数を踏めばこんな風に無関心でいられるのだろうか


「ってことで鏡花姉さん、後片付けおなしゃす!」


「あーあー・・・結局こうなるのね結局最後は私なのね・・・」


「さーせん鏡花姉さん!よろしくお願いします!」


静希と陽太の三下芝居を受けて鏡花を含めた一班は崩壊したダム付近にやってくる


未だに自重に耐えかねて落下してくる岩の塊がある中、鏡花はまず落ちてきた石材を使って断面に軽いコーティングをしてこれ以上岩が落下してくることを防いだ


「確かにこりゃ私たちの出番ないね、こっちにしなくてよかったかも」


「完全に清水の独壇場だからな、こちらとしては楽でいいのだが」


二年生も含めてその場にたたずんでいるのだが本当にやることがない


鏡花が崩落していない壁に手をついて集中しその形を変えていく


高くせりあがっていた石の壁を時間をかけて石の床へと変えていく


「はぁ・・・はぁ・・・ったく、こんな量の変換初めてよ」


さすがの鏡花もここまでの大質量を一度に変換した経験はないのか額に汗を浮かばせながら荒く息をついている


これだけの多さを一度に変換するのは余程集中力がいるだろう、むしろ一度に変換できる事が驚きである、さすがに時間はかかるようではあるが


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ