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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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契約に従い

「ったく・・・日本の学生は優秀で困る・・・うちにも欲しいくらいだ」


「スカウトでもするか?俺は高いぞ?」


「ごめんだね、生意気なガキは嫌いなんだ」


軽口をたたき合う中で静希は何度かテオドールを確実に倒す案を考えていたのだがどうにも思いつかない


静希が持つ武器や道具の中で相手を一瞬で気絶させる効果を持つのはスタンロッドのみ、他の武器はほとんどが殺傷能力を持つものばかりで有効的とは言えない


相手の能力が発電である以上、ある程度の電気に対しての耐性があると考えていいだろう


この状況で気絶させるための道具が役に立たない可能性があるのだ


しかもスタンロッドは結構大きい、懐から出せるレベルのものではないために取り出せば静希が収納系統であるとばれることだってあり得る


かといって組みついて首を絞めようものなら逆に静希が電流を流されて気絶させられる


残っているのは強打によって昏倒させるくらいのもの


だが実際に強打して誰かを気絶させられたことはない


脳震盪でもおこせればよいのだろうがそんなに的確に強打を放てるほど静希は体術を得意としていない


殺す手段ならいくつもあるのだが、さすがに人殺しはしたくない


何より事後処理が面倒なのだ


我ながら相手を気絶させる方法が少なすぎるなと反省しながらどうしたものかと思案を重ねる


相手の攻撃手段はほとんどわかっている、なのに一定の攻撃しかしてこない


何かを狙っているのはわかるのだがそれが何なのかが不明瞭だ


『ねぇシズキ、さすがに飽きてきたんだけど、さっさと終わらせない?』


痺れを切らしたのかトランプの中の悪魔が欠伸混じりの間延びした声を響かせる


こちらとしては命のやり取りをしているのでもう少し緊張感を持ってほしいのだが、そうもいかないらしい


『終わらせるってどうやって?相手を殺さないように気絶させるのがベストの状態でどうやって終わらせるんだよ、まともに触れもしないのに』


『いっそのこと能力くらいばらしてもいいじゃない、第一殺されかけてるのに殺さないって甘すぎない?』


『できるなら人は殺したくないんだよ・・・』


さすがに静希はただの学生だ、どんな理由があったとしても人を殺すのは承服しかねる


そもそもにおいてどんな理由があるにせよ日本で殺人なんて犯した日には確実にブタ箱行きだろう


それが外国人ならなおさら国際問題になる


この男がどのような方法をとってやってきたかは知らないが危ない橋を渡るべきではない


自分にできることをいくつも考えていると一つ思い出す


『なぁ、お前ってトランプの中に入ってても外に能力って発動できるのか?』


『なによやぶから棒に、邪薙にできて私にできない訳ないでしょう?まぁ多少出力は落ちるだろうけどね』


邪薙はトランプの中にいながら静希を守るために障壁を作り出すことができる


ならばメフィもと思ったのだが、どうやら何とかなるかもしれない


『メフィ、契約に従い、お願いをしたいんだが』


『ほほう?ご褒美は何かしら?それ相応の物を要求するわよ?』


メフィへのお願いは当然対価が必要だ

金銭的に余裕がない月末、これ以上の余計な出費はするべきではないが死ぬよりはまし、死ななきゃ安いものである


『・・・ケーキ三つ』


『・・・もう一声』


『・・・四つ』


『・・・もう一つ』


『・・・足元見やがって・・・わかった五つだ』


褒美が決まったところで静希とメフィは互いの利害を一致させて作戦に挑む


オルビアを正眼に構えなおしおおきく息を吸い込む


すると辺りに風が巻き起こり始める


いや風が起こるというのは少々違う


テオドールもその違和感に気が付いているのだろう、だが何が起こっているのかを把握できない


足場を確認して斬りかかると先ほどまでの戦闘が再現されているかのようだった


接近し攻撃し回避し反撃し


テープの繰り返しのように先ほどと同じような戦闘が続けられるのに対し一つだけ違う点がある


戦闘が続くにつれてテオドールの息が上がっていく


肩で息をしながら多くの空気を取り込もうと息を荒くしている


何が起こっているのかわからない、耳鳴りが聞こえ始め、さらには手足が震えだした


毒物の類でも散布したのかとも思ったのだが同じ空間にいる静希はなんともなさそうだった


一体何をされているのか、何をしているのかさっぱり分からない


だがこのままではいけないと察知したのかテオドールは勝負に出る


身体に装着していたすべての鉄の杭を取り出し上空に射出する


一瞬何をしているのかと疑問に思ったのだが、杭が全て落下してきたことでその意図に気付く


先ほどまで射出していた全ての杭、そして今落下してきた杭が全て等間隔で設置されている


これがなにを意味するのか静希は瞬時に理解した


「やっべ!」


「遅い!」


テオドールの能力が発動しその体から放たれた電撃は鉄の杭を経由しながら屋上全体に広がっていく


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