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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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思考と実行

静希とフィアの連続攻撃を前にテオドールは高速での回避を繰り返していた


その回避行動を見ながら静希はまず能力の解析から始めていた


テオドールが行っているのは攻撃を向けられてからの緊急回避、この際おおよそ人間ではあり得ない速度で急加速してその場からいなくなる


目で追えない程の速度ではないがその初動が速すぎる


そして回避しながら時折射出される鉄の杭


相手も様子を見ながらの為か一発ずつしか放ってこない


正直に言えば静希は相手の能力を測りかねていた


時間制限のある肉体強化ではないかとも考えたがそうなると放たれる杭の理屈が説明できない、そして何より瞬間的な肉体強化と言うのであれば何故静希に攻撃する際に強化を使わないのか


あれだけの速度で移動しながら攻撃されれば、さすがの静希も反応できない


そして重力や念動力といった力場を発生させるあるいは操作する系統でもない


もし静希が微弱とはいえその能力を持っているのであれば、まず相手の身体を空中に投げだしてそれから杭で集中砲火する


フィアがいるとはいえ、持ち上げてすぐに集中砲火すればまだ当たる可能性はある


一度邪薙の障壁を見せているとはいえ有効な攻撃手段も行わずに防戦一方と言うのは理屈に合わない


形勢を変えるという意味でも一度でも試すべきものなのに行わない、それはつまり行えないということでもあると静希は考えた


物体を加速することができる能力かとも思ったが、停止状態の杭を射出させていることからそれも考えられない、何より攻撃手段が少なすぎる


ではどんな能力か


自分の身体にも作用させることができ、何より杭を打ち出せる能力


静希は眉をひそめる


状況的に考えられる能力を取捨選択し可能性を手繰り寄せていく


こちらの手の内をばらさないように相手の手の内だけを晒すにはどうすればいいか


静希はテオドールから見えないように背中にある何かをとるふりをしながらトランプの中からワイヤー付きのナイフを取り出す


フィアが攻撃を仕掛けた瞬間テオドールは加速しその場から移動し転がるように体勢を整えようとするその瞬間、静希は先回りしてワイヤー付きのナイフを投擲する


先ほどまで接近して攻撃ばかり繰り出していた相手が、突然飛び道具を使用したことにテオドールは驚きこそするものの対処を誤ることはなく最小限の動きでナイフを回避する


だがそれが仇となる


静希が投擲したのはただのナイフではなくワイヤー付きナイフ


そして投擲された先にはフィアがいる


フィアは静希と意志を疎通させ投擲されたナイフを口でキャッチし高速でテオドールの周りを円を描くように移動していく


細いワイヤーが巻かれている事に気付けずに初動が遅れ、対処する機会を逃したテオドールの身体にワイヤーが何重にも巻かれる


静希とフィアが力をかけることでその体は締め付けられ自由を奪う


「どうだ?動けないだろ・・・これで・・・」


「捕まえたとでも思ってんのか!?」


静希の言葉を待つ前にテオドールが全身に力を込める


するとその体から僅かに電流が迸りワイヤーを通じて静希とフィアに向けて襲いかかる


フィアが驚いてナイフを口から離すと、テオドールの身体が自由になる


しかもフィアは身体がしびれているのかその場から動くことができなくなっているようだった


その様子を見てテオドールは笑う、何せ一番の脅威が去ったのだから


「はっはっは、ガキ相手は楽でいいな、勝手に能力を勘違いしてくれるんだから、これでゆっくりと」


「始末でもできるってか?」


自分の攻撃を受けて近くにいる巨大な獣同様痺れていると思っていた静希は平然としながら笑みを浮かべている


テオドールは理解できない


静希は素手だ、ワイヤーを握っていたのなら確実に感電するはず、数分は痺れて動けない、それだけの電流を流した、なのに静希は平然としている


「発現系統の電気か・・・でも発生範囲が狭いな・・・自分の身体から半径一m・・・いや自分の体内あるいは身体に触れていないと発電できない・・・ってとこか?」


自分の能力をほぼ言い当てた少年にテオドールは僅かに眉間にしわを寄せる


静希はナイフを投げた時からテオドールの能力が電気の発現などに属していると山を張っていた


それに気付いていないふりをして拘束するためにわざわざ金属製のワイヤーを使ったのだが、それに見事に引っかかってくれた


気付いていないと勘違いしたテオドールはまんまと能力を見せて静希を気絶させようとしてきた


対して静希はテオドールに見えないようにしながら、ワイヤーを持っていたのではなくワイヤー全てを放出せずに僅かにトランプの中に残した状態で、トランプを持っていたのだ


ワイヤーはトランプの中へと通じ電流もその中に流れていく


フィアが犠牲になってしまったが、数分程度で痺れも収まるだろう、恐らくテオドールは小規模から中規模程度の発電しかできない


人間を殺すことはできるだろうがフィアは使い魔だ、多少しびれる程度ではフィアは殺せない、いや元より死んでいるフィアの体を殺すことなどできない


「はっはっは、自分が格上だと勘違いしている奴の相手は楽でいいな、こんな簡単な策に引っかかってくれるんだから」


とびきりの邪笑を浮かべながらそう言い放つ静希に対し、手の内をさらしてしまったテオドールは僅かに歯を食いしばりながら静希を睨んでいる


サングラスの下からでも静希に殺意を向けているのがありありとわかる、強い視線だった


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