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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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解散 買い物 狙撃

「でもあれだな、静希が銃を使えるようになれば本格的に中衛後衛が盤石になるもんな、前衛がもうちょっと欲しくもあるけど」


前衛人間の陽太からすれば、今回の実習で雪奈たちがいなくなることを考慮に入れると、これからの前衛をすべて自分でこなさなくてはいけないことになる


今までは雪奈が一緒にいたために、ある程度陽動と壁役をわけることもできたがこれからはそうもいかない


これからは主に陽太が壁役、そして陽動もこなすようになるだろう


「一応・・・静希君が前に出る選択肢も考えた方が・・・いいのかな?」


「・・・できるなら断りたいけど、このメンバーじゃしょうがないよな・・・」


一班の中で接近戦ができるのは静希と陽太のみ


鏡花は能力の性質上近接戦闘が不得手であり、明利に至っては攻撃自体が苦手である


オルビアの剣やナイフ、スタンロッドと言った近接武器を持つ静希が積極的に前に出なければいけないかもしれない


「でも今までだって結構前に出てたじゃない、そのままじゃダメなの?」


「鏡花ちゃん、前衛っていうのは攻撃を引き受ける役目もしてるんだよ?確かに静は今まで前に出ることもあったけど攻撃を受けないように、攻撃対象にならないようにヒットアンドアウェイが基本だったからね、もし前に出るならこれからは付かず離れずが基本になるかなぁ」


それは以前尾道と戦闘した時のような構図になる


一心に攻撃を受け続けなおかつ反撃と状況判断をこなす、そうなるとこれから静希の負担は一層増えるだろう


何せ作戦を考え、状況判断しながら相手からの攻撃を受けるか、避けなくてはならないのだから


「普通に物理攻撃だったらある程度何とかなるかもだけど、現象系で来られると防ぐ手段ないんだけどなあ・・・」


「我々中衛か後衛の人間が前衛の真似事をすると面倒だぞ?かといって響一人に任せるというのも少々不安が残るか・・・」


なぜこの班に前衛が一人しかいなくて困るか、それは陽太の性格的なものがネックとなっている


このバカが代名詞の響陽太という人間は、基本的に行動が読めない上に何をするか分からない、しかも理論などではなく感情論で動く


前衛型によく見られる気質ではあるのだが陽太の場合は少々意味が異なる


陽太の能力ははっきり言ってしまえば攻略されやすい


それこそ初対面だったはずの鏡花にも簡単に攻略されたことがあるように、基本的な攻撃手段が少ない上にワンパターンだ


鏡花の訓練によってそれが変わったかと言われれば、鏡花自身首をかしげてしまう


攻略されやすい前衛程心細いものはないのだ


前衛が崩されれば真っ先に後衛が攻撃対象になる、それはチームにおいて一番の痛手である


今までは屈強な肉体を利用して陽太が敵正面に立って囮となり雪奈が素早く移動しながら攻撃をかけ、静希や鏡花、熊田達が撹乱する形だった


そのおかげで陽太だけに的を絞ることがなく何とかなっていた


これから先陽太だけに攻撃対象が集まると恐らくすぐに攻略されてしまう


以前鏡花にも教えたが単一の行動や攻撃よりもコンビネーションを利用したそれの方が圧倒的に威力も幅もあるのだ


「雪奈さんからしたらどうなんです?静希は前衛としてやっていけそうですか?」


「んんん・・・難しいなぁ・・・静が収納系統ってのもあるから目の前で行動されるとびっくりするっていうのはあるよ?でも静自身はただの人間だし、攻撃を受けることを考えると・・・あまりお勧めはできないなぁ」


炎によって身体能力が強化され極端に耐久力を上げる陽太と刃物を持つことによって身体能力を向上させる雪奈


どちらも身体能力の強化がかかっているために、速度、強度、攻撃力共に優秀かつ特徴的である


対して静希は雪奈とオルビアによって刀剣の手ほどきを受けているだけの普通の人間の身体しかない


前衛において身体能力の強化がないことは非常に危険だ、攻撃一発で行動不能になるかもしれないのだから


剣術指南役の二人がまず防御から教えたのはそれが理由でもある


まずは攻撃から身を守れること


これが前衛として最も必要な技術でもある


護身の一環として教えた剣術がこのような形で道を開くことになるとは、指導した雪奈としては嬉しくもあるが姉貴分として言わせてもらえば不安と後悔が少し残る結果となった


「清水の能力で鎧などをつけさせたらどうだろうか?それなりに防御力はあがると思うぞ?」


「着なれない鎧なんて着たって重しになるだけだ、邪魔にしかならないよ、静は強化がないからただでさえ遅いのに」


静希の走る速度はそれほど遅くはない、五十メートル走で六秒後半、平均より少し早い程度の速さは持っている


だが身体能力強化を持つ人間から言わせれば遅すぎる


能力使用状態の陽太や雪奈なら二秒とかからないかもしれない、実際測ったことはないため不明だが本気の二人ならそれくらい出しそうな気がする


強化があるかないかで耐久的にも攻撃力的にも、そして速度的にも差があるのだ、前衛として実績と経験のある雪奈からすれば静希が前に出ることは無謀としか思えない


同時に弟分である静希の努力を認めてやりたい思いはあるのだ


毎日のように自分に剣術を教わり、少しずつだがものにしていっている


だからこそ惜しい、なぜ静希が収納系統なのかと何度思ったことか


それは当の静希も同じなのである


「だとするとどうしようかしらね、今回で雪奈さん達はいなくなっちゃうのに・・・」


「これから戦闘のない実習ばっかりだったらそれでもいいんだけど、そううまくはいかないだろうしなぁ」


今までどこかに行くたびにそして実習を行う度にある程度の戦闘を強要されてきた静希達にとってもはや戦闘がない実習というのは考えられなかった


平和なはずの日本でどうすればこんなにも希少な不運を引き当てることができるのかむしろ不思議になってくる


悪魔に出会ったのが全ての始まりだった


そう考えると静希はメフィと会ったことで運気が急速に減少しているのではないかという気さえしてくる


「まぁ、私としても静にできる限り指導はするけど、正直本業には敵わないしねぇ、どうしよっか?」


「これは五十嵐達の問題だ、自分たちで解決するしかない以上、我々二年が干渉するのもよくないだろうな」


熊田の言い分ももっともだ、どんなに意見を賜ろうと結局は自分たちで決めることだ


どうにかしなくてはいけないのは静希達であって先輩二名ではない


前衛不足というのは本当に深刻な問題となって静希達にのしかかっていた


そんな話をしながら駅に到着しそのまま静希達の住む町まで戻ってくるとすでに日は傾き徐々に気温も落ち、涼しくなってきていた


何の気はなしにポケットに手を入れると中にメモが入っているのに気づく


「あ・・・しまった忘れてた」


今日はただのブリーフィングのつもりだったから買い物があるのをすっかり忘れていた


せっかく駅前に来ているのだから済ませておきたいものである


「先生、買い物してから帰りたいんで今日はこのまま解散でいいですか?」


「ん・・・そうだな、今日はお前達に無理を聞いてもらったしな、今日はここで解散とする」


よっしゃと小声で呟いて静希達はガッツポーズする


駅の改札前で軽く集まって諸注意を述べた後その場で解散となる


城島は解散の旨を伝えるとすぐに学校へと戻っていくことになった


「それじゃ皆、またね・・・陽太、あんたにはたっぷり話があるから」


「悪い・・・俺は二学期を迎えられないかもしれないわ・・・」


鏡花と陽太は反省会をやるということで学校へ、城島の後を追う形となる


二人の表情からかなり絞られることだろう、陽太に油断があった以上止める訳にも行かずに二人の姿を見送る


「ではな、全員気をつけるんだぞ」


熊田も颯爽とその場から去っていくかと思いきや駅の中に向かっていく、何か用事でもあるのだろうか

どちらにせよその場には静希、明利、雪奈の三人が残された


「静希君、買い物本当に手伝わなくて大丈夫?」


明利はしきりに買い物を手伝うと申し出てくれたのだがさすがに買うものが多い上に重い物ばかりだ


運がいいのか悪いのか必要な液体状の調味料や米がちょうどいいタイミングで切れたのだ


明利の非力さでは、それらを持つのは難しいだろう


「あぁ、今日は重いものが多いからな、明利じゃ持てないよ」


「あっはっは大変だね、それじゃ静、明ちゃん私はこれで「逃すと思ってんのか?手伝ってくれよ姉上」ですよねー」


首根っこを捕まえて満面の笑みを浮かべた静希を見て雪奈は悟る、逃げられないと


せっかく刃物を所持しているだけで身体能力を上げることのできる能力者がいるのだ、それを利用しない手はないだろう


「それじゃ明利また明日、気をつけて帰れよ?」


「うん、また明日ね」


明利は別れを告げて小走りで帰っていく


その場には若干涙眼の雪奈と静希の二人が残される


「うぅ・・・静はお姉ちゃんが嫌いなのかい?」


「そんな顔するなよ、何か一つお菓子買っていいから」


本当か!?と表情と機嫌を一変させて雪奈は駅前のスーパーへと歩を進め始める


年上として、いや高校生としてこの反応は少しまずいのではないかと本気で思い始めていた


何せこの姉貴分、反応が中学辺りから変わっていないのだ、大人になってきているのにこのダメさ加減はどうなのだろう


買い物をしている最中もあれやこれやと買う予定のないものを籠の中に放り込む


発想と行動が幼すぎる、いや幼稚すぎると言うべきか


年下にたしなめられるというのもよくないが、何よりもまずこの成長の無さ


陽太にも似たようなところがあるが、前衛組はどうしてこうも考えなしというか感情や欲求に対して素直に動けるのだろうか


戦闘の時は非常に頼りになるのにそれ以外がダメすぎる


もう少し姉貴分としてしっかりと、いやせめて年上としてしっかりとして欲しい


年上と言ったらもっと注意できて気が利いてそれでいて落ち着いているというイメージがある


というか熊田がそのイメージにぴったりなのだ


熊田のようになれとは言わないがもう少しだけ大人になって、いやおとなしくなって欲しいと望むことがよくある


弟分であり幼馴染である事実を否定するつもりはないがどうにかしなくてはいけないのではないかと少しずつ考え始める静希だった





彼は煙草を咥えて辺りに紫煙をまき散らしていた


この不快な気候を持つ国に送り出してくれやがった上への怒りと上手くいかない仕事にいらいらし出していた


だがその苦労も報われる


ようやく準備が整ったのだ


おおきく息を吸い準備を整える


どうしようもなくやるせないこの稼業、さっさと終わらせるにかぎる


荷物を取り出して彼は最後の準備を始めていた





「いやー買ったねぇ随分と」


「あぁ・・・セールにつられたな・・・ちょっと痛い出費だ」


四つの買い物袋を抱えながら静希は打撃を与えられた財布を見て自分の懐事情を嘆く


夕飯どきであるためか行われたタイムセールについホイホイと誘われるがままに商品を籠の中に入れてしまった


必要なものばかりだから問題はないのだが月末にこの出費は非常に痛い


「いやぁそれでもいい買い物で・・・ん・・・?」


「ん?どうした?」


突然立ち止まって辺りを見回す雪奈を不思議そうに見ていると当の本人は首をかしげて何やら眉をひそめて上下左右に視線を動かしている


何か思いついたのかそれとも忘れ物でもあるのか、本人もわかっていないようなのだが、どうにもむず痒そうにキョロキョロ視線を移している


「んん・・・いや、何でもないや」


結局自分の気のせいということにしたのか雪奈は自身が察知した違和感を放り投げてさっさと荷物を運び出す


荷物を持っているために多少路地裏などを通ってショートカットして移動することに


雪奈のおかげで楽はしているが予想外に荷物が増えたせいもあるが、ただでさえ実習を終えて疲れている、短期決戦だったからそれほどでもないがやはり実戦と訓練では疲労の度合いが違うのだ


『シズキ・・・止まれ』


「は?」


ビルの影から出た途端に発せられたトランプの中にいる邪薙からの言葉に静希は疑問符を浮かべながら一瞬体を硬直させる


次の瞬間、静希がこれから移動するであろう目と鼻の先を何かが通過した


通過した何かは静希のすぐ横にある建物の壁の足元に小さな穴を開ける


それが銃痕であることに気付くのに数秒を要した


切り替えが早かったのは雪奈だった


すぐに静希の首根っこを掴みビルの影に引き寄せ、その場に座らせる


その瞳は先ほどまでのダメダメな姉貴分ではなく、戦闘において比類なき攻撃力を持つ切裂き魔のものに変わっている


「な・・・なんだ?どうなってんだ?」


「攻撃されてる、どっからかは分からないね・・・少なくとも相手は銃を持ってる・・・」


混乱する静希を前に冷静に状況分析する雪奈を見て自分もまた落ち着かなくてはと頬を叩く


「銃声は聞こえなかった、遠距離狙撃か?それともサイレンサーか?」


静希は鏡を取り出してビルの影から表通りに続く道を軽く見てみる


だがその道には人影はない、表通りで何回か車が通り過ぎたりスーツを着た人たちが歩いているのが見えるだけだ


『おい邪薙、なんで気付けたんだ?俺ら全然分からなかったのに』


『腐っても私は守り神だ、殺気を読むのは得意でな・・・一瞬しか出なかったが強い殺意が向けられた』


何かを守る神というのはそれだけ悪意や殺意、そして強大な力に晒される


どれほど長い期間邪薙が守り神をしてきたのかは分からないが、彼には殺気などを感知する何らかの機能が備わっているようだった


それがどれほど当てになるかは分からないが、どちらにせよ彼の警告がなければ静希の頭部は撃ち抜かれていただろう


『位置はわかるか?』


『いや・・・この通りの先という事だけは察知できたが』


さすがに一瞬だけの殺気で位置を知るということはできないようだった


だが何者かが悪意を持ってこちらを襲ってきたのは明白


姿勢を低く軽くほふく前進の構えをしながらさらに鏡で周囲を警戒する


だが自分たち以外にこの路地裏や表通りに続く道にはいない


「ほふく前進上手くなったね静、お姉ちゃんは嬉しいぞ」


「褒められたのにこんなに嬉しくないのは初めてだよっと」


とりあえず状況の確認はできたがこの場から動くことができるのは誰なのかはっきりさせる必要がある


つまり、狙われているのが静希かそれとも雪奈かということだ


十中八九自分だろうと静希自身思っているのだが、このまま何もしないよりはましだ


「雪姉、とりあえず軽く強化かけて向こうまで走ってくれる?できる限り速く」


「オッケー、お任せあれ、荷物頼むよ」


持っていた買い物袋をその場においてナイフを数個手に持ち助走をつけて一気に駆け抜ける


ビルの影から影へ走り抜けた雪奈に対しては何のアクションも発生しなかった


「さてと・・・んじゃ行くぞ」


静希は走り出す前に買い物袋の一つを向こう側にいる雪奈に向けて投げる


今回もアクションは起こらなかった


もしかしたらもう狙撃ポイントを移したのではないかとも思ったが、万が一ということもある


『邪薙、ちょっとだけ顔を出すから防御頼む、この通路の先から飛んでくると想定して受け流せるように少し斜に設置してほしい、できるか?』


『容易な事だ』


静希の近くに障壁が発生したのを確認して静希はゆっくりと顔を出してビルの間から覗く大通りの方を注視する


瞬間、障壁に何かがぶつかり奇妙な音を立てて強制的に軌道を変えられ今度は地面に弾痕を作る


「あぁ・・・狙いは俺みたいだな」


「狙撃ってことは、二人組なのかな?」


「どうだろ、単独ってことも十分考えられるぞ?ていうか何で俺が狙われなきゃいけないんだか・・・だいたい見当つくけど」


狙撃は基本射手と観測手の二人一組で行われる


スコープを覗きこむと極端に視野の低くなる射手に変わり、観測手が周囲の状況を知らせるためだ


同等の技術を持っている射手と観測手ならその実力は何倍にも伸びるとされている


静希が狙われる理由など決まりきっている、ただの普通の能力者である静希ならば殺す価値などないが、不名誉ながら静希は悪魔の契約者だ


どこからその情報が漏れたかは分からないしどこからの回しものかもわからないが確実に静希を標的としている事だけは確認できた


「一応先生に連絡しておくか、このままだと能力を大っぴらに使うことになるし」


「面倒だけど仕方ないね」


雪奈もこの状況に困り果てながらとりあえず城島の携帯へとコールを飛ばす


数秒間呼び出し音が聞こえてきた後で携帯の向こう側から城島の声がする


『五十嵐か、どうした?何か用か?』


「どうもです、実はですね、今狙撃されてます」


『・・・は?』


城島の間の抜けた声というのは非常に珍しい、録音でもしておけばよかったなと思っていたのだが事はそう簡単ではない


今いるのは日本だ


イギリスでもなければアメリカでもなく日本だ


その日本で銃で、しかも狙撃されているとなるとかなり穏やかではない


『周りに人は?一人か?』


「いえ、雪姉がいます・・・弾道からして、たぶんビルとか建物の上から狙撃してるんだと思います」


先ほどから二発ほど狙撃を受けたが、どちらもやや上空から撃ち降ろすように斜めの軌道を描いている


近くの道にいないのが明らかで弾道が斜めしたともあれば近場のビルから狙撃されていると考えるのが普通だろう


『一応聞くが、相手の姿は見えるか?または相手に心当たりは?』


「見えないし、殺されるようなことした覚えはないですけど、心当たりっていうなら、先生もわかるでしょう?」


静希の言葉に城島はため息をつく


また書類仕事が増えると嘆いているようだったが、こちらとしてはデスクワークどころかデスワークになりかねないのだ


周囲を見渡したいが狙いを付けられている以上ここから出るわけにもいかない


静希がビルから出てくるのを狙われたということはこの辺りを歩いていた時点ですでに照準を合わせられていたと思うべきだろう


そして静希達が歩く速度を計算して狙撃


かなり技術がなくてはできない方法だ


ただでさえ動いている的、しかも見えていない状況から確実に狙いをつけてきた


シモ・ヘイヘも仰天の実力だ、できるならお目にかかりたくはなかったが


『お前はどうするつもりだ?打って出るのか?』


「当然です、ここまで露骨にやられて黙っていられないですよ、なので能力使用許可をいただこうかと」


そういうことかと唸りながら城島は大きくため息をついている


恐らく電話の向こうでは額に手を当てて、眉間にしわを寄せている事だろう


心労を増やすのはあまり良くないことだとわかっているがこちらも命がかかっている以上多少の無茶もしなくてはいけない


思えば純粋な殺意に向き合うのは初めてだなと、ある種の興味もわいていた


あまり恐怖を感じないのは相手が見えないからか、それとも自分を守っている人外達が頼もしいからだろうか


『わかった・・・できる限り早くそちらに向かう、場所はどこだ?』


「駅前のスーパーから少し歩いた場所ですね、裏通りで分かりにくいけど・・・そうですね・・・通りにガソリンスタンドの看板が見えます」


状況を伝え終えると静希はすぐさま携帯を切る


いつまでも相手がその場でじっとしてくれているとも思えない


ここは一気に急襲しなくては


「で?どうするの?」


「ちょっとビルの上まで行ってくる、ここら一帯を一望できるのはっと・・・」


静希は携帯を操ってここら一帯の地図を表示する


そして表示を切り替えてこの辺りで高く、なおかつこの場所を狙撃できるような建物を探す


重要なのは静希達の現在位置だけでなく、周囲全体を確実に見渡せることだ


でなければ静希達の位置を把握することもできなければタイミングをはかることもできない


「・・・ここだな」


静希は建物に辺りをつけて現在位置と比べて正しい位置を確認する


トランプの中からフィアを呼び出し能力を発動させる


「私も行こうか?」


「いいや、あのビルの高さだと二人乗せるとちょっと辛いな、俺一人で行くよ」


そう、気をつけてねと言って雪奈は近くの荷物を抱く


フィアの高速移動は確かに便利だが人が乗ればその分速度は落ちるし何より高く上がれなくなる、今回向かうビルはかなり高い、少しでも重さを減らす為には行動する人数も削る方がいい


「さて舐めた真似してくれたお礼はしっかりしてやらなきゃなぁ・・・」


とびっきりの邪笑を浮かべた静希はトランプの中からオルビアを取り出してフィアへと飛び乗る


まさかの十五件分の誤字報告をいただいたので四回分まとめて投稿



こんなに投稿することになるとは、少し予定が狂いましたね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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