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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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剣と銃

「そういや先生、今回のレポートっていつ提出なんすか?」


「ん?そうだな、今週中に提出だな」


「げ・・・意外と早いな」


帰りの電車の中で今回の実習の報告書について聞いた陽太の顔が歪む


今日何の準備もなしに駆り出された校外実習だったのにもかかわらず提出は今週中


実習現場や状況、発生した事件内容など詳細資料を軽くしか目を通していないために満足なレポートができるとはいい難い


しかも実際に取った行動もスピード解決重視だったのでかなりぼろが出ている


「にしても先生・・・あの銃・・・やっぱ貰っちゃだめなんですか?」


「当たり前だ、あれはもともとあの施設の備品扱いだ、個人で扱っていいものじゃない」


静希が管制室で拾った犯人が使用していた銃、拾ったついでにばらして持ち帰ろうとしたのだが分解する前に城島に見つかり回収されてしまったのだ


せっかく銃器を手に入れるチャンスだったのだが、さすがに備品は持ち出し不可らしい


確かに静希としても盗人扱いはされたくないが、この日本だと入手するのさえも非常に苦労するのが面倒だ


静希の攻撃手段は決して少なくない


ナイフ投擲、オルビアの剣、釘射出、水素酸素、硫化水素にスタンロッド、そして今回攻撃手段に加わった光線


どれも非常に有用な攻撃ではあるのだがもう一手か二手ほど手段が欲しいのだ


特に実際に装備できるものが欲しい


今静希が装備している武器はナイフかスタンロッド、それかオルビアの剣くらいのもので現状飛び道具で装備できるものは一切ない


どれもこれもトランプから射出するタイプのもので、目に見える脅威としては非常に弱い


実際に銃を持つことができればそれだけで牽制になるし相手への圧力もかけやすくなる


攻撃手段が増えるだけでなく状況的に優位に立てることも多くなるだろう


だがいかんせん静希の住んでいる国は非銃社会日本、銃器の入手や持ち込みに関しては非常に厳しい国なのだ


「何とか先生のコネで買えたりしないんですか?」


「教え子に銃を持たせる教師がどこにいる、欲しけりゃ自分で手に入れろ」


相も変わらずつれない返事に静希はうなだれるがその会話を聞いていた雪奈は僅かに不機嫌そうにしている


「静、剣よりも銃の方がいいの?」


「あ?そりゃ見える凶器としては銃の方がランクが上じゃないか?」


何の気もなしにそう答えると雪奈はさらに不機嫌さを増す


どうやら自分が手間暇かけて教えている剣よりもちょっとかじった程度の銃器に静希の関心が移っていることが気に食わないらしい


そのことに気付いたのか静希は面倒くさそうにため息をつく


「雪姉は刀剣の類だけで最強になれるけど、俺はいろんなものに手を出さないといけないんだ、少しでも手段はあった方がいいだろ?」


「だけどさぁ・・・」


雪奈自身静希の心理も理解できるのか複雑そうな心持をしているようだった


事実静希はどの分野で最強になれるというわけでもない


この班で一番中途半端な位置にいるのが静希だ


変換等の補助や工作なら鏡花、前衛の戦闘なら陽太、後衛の治療や索敵なら明利


この班において各分野で地位を確立している三人に比べ静希は未だどの分野で活躍できるかを見定めている最中だ


だからこそいろんな武器や攻撃手段に手を出し、自分に何が適しているのかを模索する上で手札を増やしていくのは重要なことだ


それはわかっている、雪奈とてそれは十分理解している


「五十嵐よ、深山はお前が浅野のようになるのが嫌なんだ、ある意味こいつの天敵だからな」


「浅野さんのように?」


以前交流会で雪奈と対峙した浅野青葉、それほど静希も親しいという訳ではないが雪奈と犬猿の仲であることは重々承知している


さすがに会ってすぐにあれだけ殺気を振りまいていれば誰でも二人の関係は理解できてしまう


「彼女は深山と違って銃器を専門に扱うからな、彼女に似るかもしれないとでも思っているんだろう」


「うっさいぞ熊田、今すぐ口閉じないと口裂きの刑だ」


強制的に話を終わらせようとする雪奈におぉ怖いと呟いてそのままその話は強制的に終了してしまう


確かに今まで静希が使ってきた武器は刃物関係ばかりだった、それが訓練を経て銃器などを実際に使えるかもしれないという可能性が出てきたおかげで選択肢が増えた


どうやらその選択肢のせいで雪奈は思い悩んでいるようだ


訓練と並行しながらも雪奈やオルビアとの剣術訓練も継続している


だがこれからもそれが続くとは限らない


雪奈はそれが不安なのだろう


はっきり言ってしまえば僅かな嫉妬と強い不安だ


自分が長い間をかけて伝授してきた剣術よりも優先される銃器への嫉妬


ずっと一緒だった弟分が成長して自分から離れてしまうのではないかという不安


自分が教えてきた技術が全く使われなくなってしまうのではないかという不安


ひいては自分が必要とされなくなるのではないかという不安


静希からしたら雪奈への恩は忘れようがないしこれからだって剣術を多用していくつもりである以上その不安は杞憂でしかないのだが、雪奈は良くも悪くも静希を気にかけ過ぎる


良い姉貴分を持ったものだと僅かに呆れを含み雪奈の頭をくしゃくしゃと撫でまわしながら静希はため息をつく


雪奈は最初こそ抵抗していたがすぐに抵抗をやめる


僅かに伸びた身長と、少しだけできた身長差に雪奈は弟分が少しずつ姉離れをしている事を実感していた


365回目の投稿


一日一回ペースなら一年経過したことになる、なのに一年経っていないどころか二カ月近い誤差があるのはどういうことだろうね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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