運用とこれから
「城島先生、ちょっと手伝ってもらえませんか?」
内部の片づけが終わったのか鏡花が本部近くまで戻ってきて静希達と話していた城島を捕まえる
「なんだ?自分たちのケツは自分たちで拭けよ?」
「いえ・・・私たちじゃあの門の移動がちょっと」
鏡花が指さす先には陽太が吹き飛ばした片方の門が転がっている
陽太は力任せに壊しただけであれを持ち上げることができるかといわれると微妙なところだ
鏡花が地面を変換して移動させてもいいのだが非常に手間がかかる上に正しい位置まで持ち上げなくてはならない
やろうと思えばできるだろうが一言で理由を上げるなら面倒なのだ
「わかったわかった、ほれ」
城島が指を弾くと変形し転がっていた門はゆっくりと宙を浮き正しい位置へとはめ込まれていく
その様子を見て鏡花は礼をいい、そのすぐ後に静希がおぉと納得しながら手を叩く
「先生ってひょっとして重力操作できるタイプなんですか?」
「ん?よくわかったじゃないか」
今まで静希は城島の能力を発現系統の念動力だと思っていたのだが、先ほどの門を簡単に動かした様子を見てそれは違うと確信した
念動力は文字通り念じれば動くような力を発現する力だ、重く大きいものを動かすにはそれだけ力がいる
だが城島にはそれほど消耗した様子はない、むしろまったくと言っていいほど意に介していない
重いものを簡単に動かすことができるとすればそれは重力を操っている可能性が高い
ものが下に落ちるのも、静希達が今地面に立っていられるのも、いうなればこの星の重力が働いているからだ
例えばその重力を反転させたり、操作できる能力ならばそれほど大きな消耗をせずに巨大なものを動かすことも容易である
「ふむ・・・なるべくばれないように扱ってきたつもりだったが、さすがにお前の目はごまかせんか」
悔しそうに、それでありながら少しだけ嬉しそうに城島は静希を見る
能力を見破らせてしまった自分の不覚を認めると同時に、見破った生徒の観察眼に感心しているようだった
能力者でありながら教師でもある彼女からしたら正しい反応かもしれない
「終わったぁ・・・ようやく後片付け終わったわよ・・・」
全ての修復作業を終えて鏡花が疲労を引きずりながら帰ってくる
それと同時に城島が無線で管制室にいると思われる職員に連絡を入れる
今まで切っていた電差処置をオンにするためだ
鏡花が直す以上電差処置を入れているわけにもいかず、一時的に停止させていたのだ
「お疲れさん、今回は大変だったんじゃないか?」
「そりゃそうよ・・・地面とかを直すのと違ってちゃんと元の形があるものを戻さなきゃいけないから神経使ったわ・・・」
どっかの誰かさんが派手に暴れすぎたせいでねと付け加えて首だけ地面から出ている陽太を睨む
鋭い視線を浴びる陽太は眼をそらせて口笛を吹いている
指示に合った通りに派手に陽動をしてくれたのはいいのだが少々やり過ぎた
今回の場合壊さなくても済むような施設内の備品まで破壊してしまっている
その惨状を見ている静希からすればフォローしようがない
「あんたが集中を切らさなきゃあんなとこにもならなかったでしょうに、あの鉄回収するの面倒だったんだからね」
「あぁそういえば、鏡花、あの爆発って結局どうやったんだ?俺ら全然見てなかったんだけど」
静希の言葉に実際に陽太の槍を見ていなかった雪奈と熊田も興味ありげに耳を傾ける
説明するのも面倒になったのか鏡花は埋まっている陽太を解放して実演してみせることにした
数分かけて作りだされた陽太の槍を見て静希達はおぉと声を漏らす
「なるほどな・・・じゃああの鉄はこの槍の中に仕込んでたのか・・・道理で威力があるわけだ」
槍を実際に見ることでそれがどういう性質を持っているのか、そしてどのように運用したのかを瞬時に理解した静希は何よりもまずその発想に驚いていた
陽太の能力が炎の鬼の姿をすることに何の疑問も持っていなかったからこそだが、まさか炎に形を持たせる訓練をしていたとは驚愕の一言である
「まだ実戦じゃ使えないけどね、準備に時間がかかるし、何より使用回数は低い・・・たった一回で暴発させるんだから」
鏡花の言葉に陽太は申し訳なさそうに頬を掻いている
確かに実戦において技の準備時間というのは短いほどよい
瞬時に用意して即座に使用できるくらいでなければ実戦で使えるとは言えない
数十秒であれば静希達で時間を稼ぐことくらいはできるかもしれないが数分間かかるとなると前衛を失う時間としては長すぎる
そして使用回数も重要だ
一回使ってまた作らなければいけないようでは効率が悪すぎる
せめて一回の発動で十回前後は使えるようになりたい
陽太がこれから槍を使うに当たってもっとも重要視されるのはその発動に必要な準備時間の短縮と使用回数の増加だろう
逆に言えばそれができるようになれば陽太の戦いの幅は一気に広がることにもつながるのだ




