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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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生首説教

鏡花達は地下二階を制圧した後すぐに地下一階に向かい、難なく地下一階も制圧していた


制圧中に上の階から銃声がいくつか聞こえたが何の問題もない


囚人たちの安全を確保したうえで一階へと向かうと無人機は床に転がされ正面玄関は悲惨なほど無残に破壊されていた


通路の一部には大きく変形した銃が二丁転がっている


「どうやら響がすでに制圧した後らしいな、急いだ方がいいかも知れん」


「あのバカ・・・!片付けるの誰だと思ってんのよ!」


陽太が放置していった無人機を改めて無力化し鏡花と熊田は二階へと急ぐ


ところどころに焼け焦げた床や壁が目立ち陽太が暴れて行ったのだと理解できる


後片付けが面倒だなと思いながら鏡花は無線をつける


「明利!二階から上の状況教えて!」


『現在陽太君が二階中央部で無人機と交戦中・・・今終わりました』


どうやら陽太は指示通り本当に派手に暴れているらしかった


それにしてももう少しスマートにやれないものかと悪態をつくのだがこの速度は目を見張るものがある


『後全員に報告します、陽太君が倒したと思われる犯人二名が表で警官隊に拘束されました、現状において敵勢力はすべて排除したと思われます』


「了解、あとは陽太にそのことを伝えるべきね」


陽太は今無線機をつけていない


そのことを知っている鏡花はさらに移動を速める


敵がすでにいないと分かれば迷う必要はない


鏡花達が二階にたどり着くとそこもひどい有様だった


どうやら扉やロッカーなどを盾に使ったのか、辺りには大きく変形したり焼け焦げた器具が目立つ


「これは・・・何と言ったらいいのか・・・」


「・・・あの・・・あの・・・バカ陽太がぁぁぁ・・・!」


鏡花は怒りを隠そうともせずに全力で走りだす


冷静に索敵を続けている熊田とは対照的に鏡花はかなり感情的に前進を続ける


そして三階へと走っていくとちょうど三階にたどり着いたと思われる陽太の姿を見つける


どうやら通路に敵がいないか観察しているようでこちらには気付いていないようだ


「このぉぉぉバカ陽太ぁぁぁぁ!」


「え?うぎゃああぁぁぁ!」


鏡花の絶叫と共に陽太に向けて壁と床を使って作られた鉄拳が襲いかかり陽太をかなり遠くまで殴りとばした


その音は管制室で待機していた静希と雪奈にも聞こえ、恐る恐る扉から様子をうかがうと鬼のようなオーラを纏った鏡花が陽太に向けて延々と攻撃を仕掛けているのが見える


「うっわ・・・静、あれどうする?」


「俺は知らん、もう勝手にやらせとけ、とりあえず明利に状況終了を伝えなきゃな」


静希はあの惨状に加わるような気分にはなれず、手早く明利に連絡をつけて作戦が終了したことを告げる


それと同時に正面玄関から何人もの警官隊が突入していき、拘束されていた犯人を次々と逮捕していく


元より囚人だった人間を逮捕すると言うと酷く違和感を覚えるが、そのことは今は置いておこう


静希達は城島と明利の待つ仮設本部に戻ってくると自分の顔を隠していた仮面を脱いで顔の汗をぬぐう


「暑かった・・・さすがにこの暑さに仮面はきつい・・・」


「そだね、次はもうちょっと通気性を良くしてくれると嬉しかったりするんだけど」


雪奈がチラリと製作者の方を向くと、鏡花は陽太を正座させて延々と説教を行っていた


内容は先ほど陽太が行った槍の失敗に対してと施設内の器物破損について


なぜあそこで集中を切らしたんだとかもっとスマートにできなかったのかなど怒る内容には事欠かないようだった


しかも説教は陽太にもわかるように理路整然としたわかりやすい解説付き


陽太が反論しようものならその眼光と能力で強制的に生首ルート


この夏休みで陽太は完全に鏡花の尻に敷かれてしまっているようだった


口論するどころか発言権すら与えられていないように見える


「きょ、鏡花さん、とりあえず上手くいったんだし、その辺で、ね?」


さすがに見ていられなかったのか明利が恐る恐る激昂している鏡花に歩み寄るのだが、怒りと苛立ちを表情に出しまくっている鏡花のその顔に恐れをなしてすぐに静希と雪奈の後ろに隠れてしまう


まるでライオンと仲良くしようとしているウサギのようだ、対等に話すことができるような状況ではない


「おい鏡花、そろそろその辺にしとけ、この暑いのにいつまでもここにいたくねえよ」


「あー・・・それもそうね、後片付け始めちゃうか」


さすがの鏡花もこの暑さの中いつまでも怒り続けていたくはないのか額の汗をぬぐいながら大きくため息をつく


帰ったらみっちり説教と特訓よ?と言い残して陽太は生首の状態のままその場に放置される


「助かったぜ静希、あの状態になると長いんだよ」


「お前その状況で助かったって言えるのか?」


首から上だけが地面から出ている状態で助かったと言えるとは、どんな訓練を鏡花と行ってきたかは知らないがその苦労が言動からにじみ出るようだった


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