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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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突入

陽太の槍が正門を破壊し暴発した直後、屋上にいる静希達はその様子を直にその目で見ていた


「うっひゃぁ・・・たまげたなぁ・・・まさかあんな大きさの物を壊しちゃうなんて」


「あのバカ・・・派手すぎだ、あれじゃマスコミに餌与えるようなもんだぞ」


雪奈は陽太の一撃に感動しながら一種の対抗心のような物を覚えていた


それは前衛の先輩としてのものか、それとも年下の幼馴染に負けたくないという思いか


複雑そうな表情をしている姉貴分に対して静希は冷静に慎重に室内の様子を観察していた


先ほどまで呑気にあくびまでしていた犯人達の表情は一変、モニターをしきりに監視し始めたり無線で連絡を始めたりと慌ただしい


窓から外を見ていたのも数秒だけ、その後は画面と無線にかかりきりになっていた


突入するなら今がベストだろう


「雪姉、いくぞ」


「あいよ、カウントは任せるよ」


腰のベルトから伸びたロープを手に取り、長さを調節しながら屋上の端まで移動しお互いに視線を交わして合図する


「3、2、1、GO!」


静希の合図と共に後方に飛び遠心力を利用して窓へと身体を叩きつける


窓と身体が接触する瞬間、雪奈は刀で窓を切裂き、静希はトランプを飛翔させて円形に釘を打ち壊れやすく工夫する


ガラスの割れる音と同時に破片をまき散らしながら侵入していく静希と雪奈は犯人達の視線が自分達に向く前に動きだしていた


静希は画面を監視している男に、雪奈は部屋の入り口で無線に怒鳴っている男に直進する


画面を向いていた男が銃をとる前に静希はその手に釘を打ち込み、痛みに顔をゆがめている間にトランプの中からスタンバトンを取り出して首筋に当てる


瞬間男の身体が大きく痙攣してそのまま動かなくなる


一方雪奈は無線に怒鳴っていた男に急接近し手に持っていた銃器と無線を斬撃でいとも容易く破壊、そして刀の峰打ちを首筋にお見舞いし身体ごと壁に叩きつけ気絶させる


万が一ということがあるので即座に静希がスタンバトンで無力化しトランプの中からワイヤーを取り出して拘束する


「明利、こちら管制室、制圧完了、これからここを防衛しながら待機する」


『了解、無人機の操作はできそう?』


明利の提案に静希は近くのコンソールをいくつかいじってみるものの、訳の分からない単語や求められるパスワードなどが分からずに断念する


「パスワードとかが必要だな・・・ここにいた職員はどこにいるんだ?」


管制室にいたのは犯人だけ、この場にいたはずの職員がこの部屋の中にはいないことはすでに確認済みだ


近くにあるのはモニターや管制用の制御や通信を行えるメインコンピューターのみ


その場に捕縛されている人間をしまうスペースなど見当たらない


『たぶん一般の囚人と同じように牢屋に入れられてるんだと思う・・・鏡花さん達に探してもらってもいいけど・・・』


「だめだな、残念だけど無人機は全部破壊した方が早い」

『了解、管制室の入り口付近に二体の無人機が確認できます、注意してください』


明利との通信をきって静希は落ちていた銃を拾ってすぐ撃てる状況かを確認する


どこも歪んでもいないしきちんと整備もされているようだ、残弾も確認できる


これで少しは楽になるかなと思いながら扉近くの壁に張り付いたままの雪奈の近くに行く


「表に二体、どうする?」


「片方は雪姉、片方は俺で片付けたいところだけど・・・一撃でやれるかなぁ・・・」


この二人は基本生物に対しての攻撃は得意だが無機物、特に機械への攻撃はあまり得意としていない


雪奈は装備さえ換装すれば万全に戦えるだろうが今彼女が装備しているのはナイフ数本と刀二本、一撃で倒すことができるかと聞かれると少し首をかしげるレベルだ


これで無人機の装甲がほとんどないというのであれば問題はないだろうが、そこは暴徒制圧用の機械、多少の装甲は持ち合わせているだろう


雪奈の剣撃がいくら鋭く強くとも直径六十センチの鉄の塊を一撃のもとに切裂ける確率は如何ほどのものだろうか


恐らくは雪奈自身そのことを理解できているのだろう僅かに不安な表情を浮かべている


そしてそれは静希も同じ、いや雪奈以上に不安要素が多い


静希の持つ攻撃はナイフ投擲と釘打ちとオルビアの剣撃


どれも物理系の威力は持ち合わせているが一撃のもとに鉄の塊を粉砕できるほどの威力は無い


そもそも機械を相手にする想定をしていなかったというのもある


スタンバトンと釘とワイヤーを利用して内部に電流を流して破壊することもできるかもしれないが細工に時間がかかりすぎるし何より無人機に気付かれるだろう


相手の武装は実弾に制圧用ゴム弾、そして催涙弾


ゴム弾はまだ撃たれても痛いで済むかもしれないが実弾はそうはいかない


催涙弾に関しては室内に入れられただけでアウトだ、何よりもまず静希達の動きが封じられる


悩んでいると爆発音にも似た轟音が建物内に響く


どうやら正面玄関を陽太が突破したらしい、何度か銃声も聞こえてきていた


「もういっそのことこのまま陽が来るまで待機してる?」


「それもいいけど、二階にいる奴がこっちに来る可能性もあるしな・・・ここの無人機は破壊しておきたい・・・けどなぁ・・・」


静希達には二体同時に破壊できるだけの攻撃がない


入口は一つ、敵は二つ、有効な攻撃手段なし


どうしようと悩んでいる間に銃声や破壊音は強くなっていく


どうやら相当派手に暴れているようだ、犯人が死んでいないか心配になってくる


そんな中静希は自分のトランプの中身を確認していた


自分に何ができるかを確認しているとふと二枚のトランプの中身に意識が集中する


それは夏休みの間ずっと仕込み続けていた、太陽光を収納したトランプだった


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