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J/53  作者: 池金啓太
十話「壁と屋上と晩夏のある日」

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槍の威力

明利のカウントは三十秒から始まった


鏡花と熊田はいつでも突入できるように集中を高め始める


静希と雪奈は室内を鏡で観察し、それと同時に正門を視界の隅に収めていた


そして陽太は大きく深呼吸し炎を滾らせて鏡花の言っていた言葉を反芻していた


『あの門は戦車の主砲でも壊せない・・・つまりあれをあんたが壊せたら、あんたは戦車以上の攻撃力を持つってことが立証されるのよ』


人によってはそれはプレッシャーにもなる言葉だっただろう


だが陽太は緊張するよりもまずワクワクしていた


自分ひとりの力でそんなことができれば一体どんな気分だろうか、一体どれほど爽快だろうか


興奮が収まらず炎は産みだされ猛り続けている


深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す


身体の隅々まで酸素をいきわたらせていつでも動きだせるように全身の筋肉に指令を送る


攻撃対象までの距離は約三十m、助走距離も十分、気力も炎も充実している


周りにいる警官隊がその様子を見守る中、カウントは進んでいく


明利のカウントが十秒を切ったところで陽太はゆっくりと動き出す


重たい右腕の槍を持った状態で徐々に加速していく


地面はその重さに耐えきれず僅かに形を変えているがその程度は障害とはなりえない


足に全ての力を込め身体を前へ前へと押し進め加速していく


「・・・3・・・2・・・1・・・」


明利のカウントがゼロになる瞬間、陽太は槍を正門へ向けて叩きつける


辺りに響き渡るのは衝突事故でもあったかのような大きな衝撃音


一瞬炎が揺らめいて視界がぼやける、周囲に静寂が訪れた時陽太はそれを見た


閉ざされていた門の中心に叩きつけられた槍はその分厚さをものともせず貫通し、大きく変形させている


門の片側の固定具が衝撃によって外れたのか不安定に揺れる中陽太は確信した、自分のこの槍は戦車砲よりもすぐれた威力を持つと


「・・・よっしゃぁ!」


警官隊の驚愕の声が聞こえる中、陽太は小さくガッツポーズをした


それがいけなかった


歓喜と安堵によって集中を乱してしまったせいか槍はその形状を保つことができなくなってしまう


「あ・・・やべ」


陽太がそのことに気付いた時にはもう遅かった


膨大な量の炎を押し固めてできた槍はその制御から解き放たれ辺りに一気に炎をまき散らし大爆発を起こす


轟音と共に外れかかった門は吹き飛び何度もバウンドして地面に転がる


辺りは炎に包まれ門は完全に破壊されている


近くに植えられていた芝生などにも燃え移り爆心地たる陽太の周りから放射状に炎が巻き起こっている


十分離れていた明利や警官隊に被害はないが外壁や近くに植えられていた植物には多大な被害を出している


惨状と言うにふさわしい風景だった


「やっべ・・・鏡花に怒られる・・・」


異常を察知してやってきた無人機を前に陽太は気持ちをリセットして戦闘態勢に移行する


あらかじめ資料を見てどのような武装があるかはチェックしている、今の自分の仕事は派手に暴れること


咆哮を上げながら陽太は無人機に襲いかかった


陽太が心配し始めたのと同時に鏡花はちょうど近くを通りかかった無人機を急襲していた


こちらが視認される前にカメラのない上部に飛び乗り内部の形状を変換して回路ごと役に立たないただの鉄の塊に仕上げていく


それと同時に熊田は廊下に仕掛けられている監視カメラを破壊、自分たちの姿をできる限りみられないようにしておく


「何やら爆発音がしたが・・・上手くいったのだろうか」


周囲を索敵しながら熊田がつぶやく中鏡花は明らかに苛立ちを抱えた表情をしていた


「いいえ、あれはあいつが集中切らして暴発させた音ですよ・・・あれほど集中しろって言っておいたのにあのバカは・・・!」


壁を殴りながら近くの囚人たちが騒ぎたてる前に廊下と牢屋の間に壁を作りこの階全員の囚人の安全を確保する


怒りを燃やしながらもその対応は非常に適切だ、そのあたりは鏡花らしく状況を冷静に判断できている


もっとも陽太の今後に関しては冷静な判断ができるかは不明である


「向こうから一人走ってくるな、怯ませるから拘束は任せるぞ」


「了解です」


曲がり角からやってきた男が二人に気付き銃を向ける数瞬前に熊田は能力を発動、犯人に爆音を浴びせ三半規管を一時的に麻痺させ身体の自由を一時的に奪うと同時に鏡花が床や壁を変換して男の体を拘束していく


「まず一人と一機・・・次は地下一階に向かうとするか」


「そうですね。明利、これから地下一階に向かうわ、相手の動きはどうなってる?」


『地下の無人機は先ほどと同じように行動中、ですが犯人は地上へと移動中です、今行けば無人機だけを攻撃できるかと』


地上正門部の異変に気付き人員をそちらに割いているのだろうがこちらからすれば大助かりだ


鏡花と熊田は即座に地下一階へと移動を開始した


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