表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/1032

対抗 見張り

「でも先生、捕縛はいいですけど相手の能力もわかっていないんですよ?確実に仕留めるならまだしも、生きたままとらえるというのは」


元来、何かを狩猟する上で最も難しいのは生かした状態で捕らえること


確実に弱らせなければいけないし、捕縛できるだけの状況を作り出す上に捕縛状態から抜け出されないようにしなくてはいけない


「気絶させるか、動けなくなるまで痛めつけるかってとこか?どちらでも私としては構わない、捕縛さえすればいい」


さすがに動けなくなるまでというのは全員の良心が痛む、暴走しているとはいえ十歳の女の子相手にそんなことはできない


だが捕獲難易度が高いのは身体能力もさることながら、目標の能力把握が依然として出来ていないのが原因である


「静希君、睡眠薬とか、そういう薬の類って持ってないかな」


「麻酔ならいくつか持ってるけど、睡眠薬だの人を眠らせるような物はないな、あれば楽だったんだろうけど」


静希はトランプの中身を大きく四つに分けて使用している


ハートシリーズには日用品を、ダイヤシリーズには貴重品を、クローバーシリーズには武器を、スペードシリーズには気体や薬物を入れていた


「麻酔って、もしかして前にナイフに塗ってあったやつ?」


「よくわかったな、それと同じやつだ、効力は薄いから動きを封じることはできないぞ?」


「確かに、脚の感覚がなくなるくらいだもんね・・・」


実際にその麻酔を使われた鏡花の顔がみるみる不機嫌そうになっていく、ナイフを刺されたことをまだ根に持っているようだ


「切札使えば何とかならないのか?」


「切札?」


鏡花が静希の方を見る、その様子に静希はバツが悪そうになる


「あれはだめだ、最悪死人が出るし、至近距離だと俺も巻き込まれる」


「へえ、そんなのがあるんだ」


「今回は使えないだろ」


捕獲が絶対条件なのに殺してしまうわけにはいかない


もちろん使える状態なら使いたかったが、今回ばかりはしょうがない


「陽太、この中じゃ目標の能力を喰らったのはお前だけだ、なんか気になることはないか?」


「え?気になるって、どんな」


話をまるで聞いていなかったのか、相変わらず料理に舌鼓を打っている姿に半ばあきれながら話を続ける


「相手の能力が分かればそれに越したことはない、何でもいいから気付いたこととか、気になったこととか」


「んんん・・・気付いたこと・・・気になったこと・・・あぁ、一応ある」


「どんな!?」


全員が陽太を凝視すると若干具合悪そうにしている


ここまで注目されることはあまりないのだから仕方のないこととも言えるが


「あいつ能力を使う前にちょっとタメが入るんだ、姿勢を低くしてこう飛びあがるみたいな」


そういえばやっていたような気がすると思い返して動画を振り返るが、その瞬間をとらえることはできていなかった、あの時はとっさに明利をかばってしまったために記録できなかったのだ


「あいつ俺に攻撃してきたときもおんなじことしててさ、俺の場合はジャンプじゃなくてこう、吠えるみたいな感じだったけど、吠えたかと思ったら身体を殴られたみたいな感じがあって、それで爆発みたいな音がしたら後ろに吹っ飛ばされてた」


全員がその話を聞いて唸りだす


切断、爆発、打突、跳躍


現在目標が使う能力と思わしき現象はこの四つ


「攻撃された時目標との距離はどのくらいあったの?」


「んと、二mか三mくらいあったと思う」


「何が飛んできたとか見えなかったの?」


「見えなかった、気がついたらやられてた」


「ダメージは?」


「ほとんどないけど、強化状態だったからなぁ、それなりだと思うぞ」


しかも距離があっても当てられるうえに攻撃が見えないときた


厄介極まりない、もう少しデータがあればわかるものなのにここまで来て足踏み状態とは


だがわかったこともある、陽太の強化状態であれば打突及び爆発に関しては耐えられるということだ


「じゃあ能力に関しては直線遠距離攻撃をイメージしておこう、射出されるタイプ、相手が攻撃の動作を取ったら目標から円を描くように移動して避けること、次は捕捉した後逃げられないようにするために、明利」


「なに?」


「一応種を作っておいてくれ、できるなら全員分」


「わかった、やっておくよ」


「行動はどうするの?」


「明日早い方がいいだろう、日の出とともに動きだそう、今くらいって日の出何時だ?」


「五時前後じゃない?山に囲まれてるけど五時半には日が昇ってるでしょ」


「よし、事前準備含め明日は四時起き、明利は明日の準備ができ次第寝ておけ、明日はフルで動くことになる」


「ちょっと待てよ、もうあいつが来ないとも限らないぞ?明利が寝たらそれこそ監視ができないじゃんか」


行動時間が決まったところで指示を出すが、陽太から異論が出る


たしかに明利を休ませておくと村の警戒は薄くなる、今日はもう現れたから来ることはないという保証はない


「なら交代でフェンスのところに見張りを立てるのはどうだ、もうすぐ二十一時、就寝を二十二時にしてそれから交代で見張りをつければ一人一時間ずつ見張りができる、明利は二十二時から二十三時までやってもらってそこからは寝てればそれなりに回復できるだろ」


「ま、万全ではないにしろ、そうするしかないでしょうね」


本当なら明日全力で動くのに対して、しっかりと休んでおきたいところではあるが、そんなことは言っていられない、これは任務だ、村を守ることも任務内容に含まれる

特に明日明利はずっと同調による索敵を続けてもらうことになる、一番長く寝させるべきなのは明利だ


「あ、あの静希君、私は大丈夫だからみんな寝てても」


「ダメだ、お前の力がなきゃ確実な捕捉ができない、しっかり休んで明日しっかり活躍してくれ」


「うぅ・・・」


活躍などという言葉は明利にはプレッシャーになりかねないが、こうでも言わないと明利は徹夜で見張りを続けるだろう、最悪無理やりにでも眠らせるしかない


「なんだったら村の若い者達を集めて見回りをさせますかな?」


「お気持ちはありがたいですが、奴らで手にあまりそうな物を貴方達に任せるのは無謀です、奴らに任せておきましょう」


「先生も手伝ってほしいんですけど」


「私は引率だ、指導はするが協力はしない」


もはやさすがとしか言いようがないこの対応に全員が落胆して手を合わせごちそうさまと音頭を取る


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ