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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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因縁の再会

ノーマン教授は病院の一室で窓から外の景色を眺めていた


先日やってきた日本人の少年静希の言っていたことが真実だとするならばこの国の軍や警察が自分に疑いを向けるのは時間の問題である


問題は山積み、やらなければいけないことも多く存在しているのに自分の周りにはこれ以上ない程の警備が存在している


警備は守られている分には問題ないがこういう状況においては邪魔な監視にしかなり得ない


どうすればこの警備を潜り抜けられるのかと悩んでいると病室の扉が数回ノックされる


入ってきたのは軍の人間だった


視線を向けると軽く会釈をして立ったまま姿勢を正し胸を張る


「報告します・・・先ほど容疑者エドモンド・パークスの拿捕に成功、協力員の要請により貴方を彼に引き合わせるようにと連絡がありました」


隊員は事件が解決に向かうことへの安堵、自分達の力だけで解決できなかった不甲斐なさと最後に教授とエドモンドを引き合わせることへの不安を合わせた微妙な表情と声音をしていた


その事実に教授は僅かに頬を緩める、事件が解決するということではなくエドモンドと接触する隙ができたということに


あの時五十嵐静希に対して会えるようにと願い出たのは間違いではなかったと確信しながら隊員の護衛を数人付けた状態でエドモンドが捕縛されているという大学へと向かうとあちこちで隊員が忙しそうに走っていた


だがどの場所でも静希の姿は確認できなかった


「ミスターイガラシは?今回の件について礼を言いたいのだが・・・」


「報告では彼は今回の戦闘で負傷し、我々と入れ違いに病院の方で集中治療を受けているとのことです、面会はできないかと・・・」


どれほどの戦闘が行われたかは分からないが集中治療室に入れられるということは相当の重傷を負ったということになる


引き合わせてくれたこと、そして自分の都合の良い方向に事を運んでくれたこともろもろ礼を言いたかったのだが、その機会はもうないかもしれなかった


「あぁ教授、いらっしゃいましたか」


「おぉ、今回は随分な活躍だったそうですな隊長、お疲れ様です」


部屋から出てきたテッドと軽い挨拶を交わしたところで護衛から教授の引き継ぎをしてそのまま二人はエドモンドの元へと向かう


二人の足取りは軽く、気負うそぶりなどなく、むしろその場へ向かうのをせかすかのようだった


「ところで、ミスターイガラシが入院したとか・・・」


「えぇ・・・彼がいなければ今回の作戦は成功しなかったでしょう・・・しっかり療養してもらわなければ」


どうやら先ほど護衛が口にしていたのは事実のようで静希は本当に重傷を負ったようだった


だがここで一つ疑問が残る


「ちなみに・・・エドモンドとともにいた悪魔は?まだ彼の近くにいるのですか?」


「いえ、エドモンドを確保してから姿を確認できません、恐らくはイガラシが何かしたのでしょう、彼の傍に悪魔はいませんよ」


そうですかと告げ教授はテッドに見えないように僅かに頬を緩めた


彼らがたどり着いたエドモンドの捕縛されている場所とは事件の発生した実験室だった


何の因果か何の意味があるのか、召喚陣の真上でエドモンドは椅子にしばりつけられたままにされている


口には猿轡をされ、しゃべることもできないでその場にいた


その様子を見て教授は僅かに目を細める


確かに周りに悪魔はいない、そして誰もいないように見える


部屋の様子を確認するとどこも変わったところはない


壁、天井、機材、何もかも自分が最後に見た時のままだった


「・・・隊長・・・一つわがままをいいだろうか?」


「・・・なんでしょう?」


「私と彼を二人きりにしてほしい・・・彼には聞かなければならないことがある」


「・・・いいでしょう・・・五分間だけですよ」


感謝しますと述べ教授は部屋の中に入りドアを閉める


何度か確認した後に教授は表情を崩す


その顔は今までの神妙な面持ちから一変し邪悪を体現したような表情をしていた


腹を抱えながら僅かに声をもらしながらエドモンドに近づいていく


「やぁエドモンド・・・数日ぶりだな・・・こんな形で出会えて本当によかったよ」


近付いてくる教授に対してエドモンドは敵意をむき出しにし唸りながら何かを訴えようとしているが、


それが言葉になることはなかった


「はっはっは・・・少し話をしようじゃないか、これは邪魔だな」


教授の計らいか、それともただの気まぐれか猿轡を外されたエドモンドは息を荒くしながら教授に食ってかかる


「よくも・・・!よくも僕の前に顔を出せたな!」


「こちらの台詞だ・・・エドモンド・パークス・・・私の実験を台無しにしておいてよくもそのようにしていられるな」


ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら教授はエドモンドの周りをゆっくりと歩く、まるで品定めしているかのように全身を眺めながらふんと鼻を鳴らす


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