休息と信頼
その後時折電車の通過する地下空間にてエドモンドと今後の活動について綿密に打ち合わせをしたあと時間を確認するとすでに二十一時を過ぎていた
ホテルを出てからすでに二時間を軽く経過してしまっている、そろそろ戻った方がいいかもしれない
「それじゃあなエド、俺はホテルに戻るよ、明日はよろしく頼む」
「あぁ、気をつけて」
こっちの台詞だと言って静希は自分が降りてきた道を戻っていく
また埃で体中が汚れるがもはやそんなことを気にするだけの余裕もなくなっていた
地上に出て格子を元に戻し移動を開始すると何人か巡回している警察に遭遇しそうになる
何とか姿を見られることなく自分が出てきたマンホールまでたどり着きまた地下へと移動する
下水独特の腐臭がする中、移動を開始しホテルの地下まで戻ってくる
時刻は二十二時過ぎ、こんなことはもう二度とやりたくないと思いながらだれにも見つからないように、監視カメラの位置を気にしながら自分達の部屋まで戻ってくると大野と小岩が出迎えてくれた
「お帰り、首尾はどうだい?」
「上々です、後は実行するだけですね」
「よかった・・・でもすぐにシャワー浴びた方がいいわ、匂いが付いちゃうわよ?」
僅かに苦い顔をする小岩に自分の身体の匂いを嗅ぎながら服を脱いですぐさまシャワーを浴びる
日本の下水にだって入ったことがないのになんで海外まで来てこんな悪臭を身につけなくてはならないのか
念入りに身体を洗って匂いをとり、静希は今日できることをすべて終えた達成感と強い疲労感を味わっていた
これが日本だったら湯船につかってゆっくりと疲れを湯に溶かすのだろうが、それができないのが残念だ
シャワーを浴び終え軽装になってベッドに横たわるとすぐに疲れによって眠気が襲いかかってきた
「今日はさすがに・・・疲れた・・・」
「一日中動きまわっていたからね、今日はもう休んだ方がいい」
「確かに、結構ハードなスケジュールだったわね、私もちょっと疲れたかも」
ほぼノンストップで動いていただけにその疲労は大きい、明日の行動に影響が出なければよいのだが
「マスター、よろしければマッサージなどいかがですか?」
「お?できるのか?んじゃ頼むよ」
静希をうつ伏せにさせオルビアは失礼しますと告げてその体に手を当てちょうどよい力加減で圧力をかけていく
疲労した筋肉を適切に揉みほぐしなんともいえない感覚を与えていく
「あぁああぁ・・・お前ほんとに何でもできるんだな・・・最高だ・・・」
「お褒めにあずかり光栄です、この程度であればいつでもお申し付けください」
一体いつの間にこのような技術を取得していたのだろうかと疑問に思う事さえも放棄してしまう程に心地よいマッサージに静希は全身の筋肉を弛緩させながら言葉にならない間延びした声を上げていく
「まったくうらやましい、あんな美人にマッサージしてもらえるとは・・・」
「あんたそんなこと言ってるからモテないのよ・・・それにしても・・・」
「ん?何よ」
まるで長年付き添い続けた存在のような雰囲気を醸し出している従者に比べ、オルビアよりも付き合いが長いはずのメフィは静希に対してなにもしようとはしていない
マッサージとまではいかないがねぎらいの言葉くらいはあってもいいのではないかと同じ女性として小岩は思慮の目をメフィに向ける
「なんというか・・・彼女に比べて貴女は随分とマイペースなのね」
「そりゃそうよ、私は悪魔よ?自分のやりたいことをやりたいときにやるの」
特に気にすることもなく、そして改善する気もなく今日も悪魔は自由気ままだ
この性格は恐らくこれからずっと変わることはないだろう、悪魔らしいと言えば非常にらしい性格をしていると言える
「でもあの二人はなんかこうはたから見ても強い信頼があることがわかるけど、君達は・・・何て言うか・・・」
「そうね・・・邪薙さんもそうだけど、どっちかっていうと・・・」
「ドライな関係っていいたいのかしら?」
二人の心を読むかのようにメフィは呟きながら空中をふわふわと浮いている、そう思われて然るべきという行動をとっている自覚はあるようだった
だがそのことを言われても顔色一つ変える気はない、それはメフィも静希も同じだった
「そもそもあの二人は主従関係だし、オルビアはもともと人間、シズキのことだってよく理解できるだろうし配慮もできるのは当然、それに比べて私達はまったく別の存在なんだから」
「まったく別?」
大野の言葉にその場で座禅していた邪薙も僅かに耳を立てて会話を聞こうとしていた
悪魔と同列に扱われたことに不快感でも覚えたか、それともメフィの意見に同意しているのか
だが人外の中で一線を画す悪魔と神格、この二人の心境はこの二人にしか理解できない
オルビアと違いがあるとすれば、人であったか否か、その一点だろう
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その為反応が遅れますのでご了承ください
これからもお楽しみいただければ幸いです




