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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」

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連絡と監視

「でもその歳でここまで動けるっていうのはすごいことだよ、俺らが学生の頃はもっと四苦八苦してた」


「そうそう、何をどうすればいいんですかって先生に逐一聞いてたもんね」


大野と小岩は自分の学生時代を思い出して苦笑いする


確かに静希はいくつかの事件に遭遇したがその時に誰かに何かを聞くということはあまりしない、したとしても精々情報収集程度の意味合いで行動について意見を求めるということはあまりしない


そう言う意味では静希は実戦に強いタイプであるらしい


能力者専門学校において校外実習を行われる理由は主に実戦への対応力をつける事にある


机の上で勉強して知識だけを効率よく身につけるだけではなく、常に動き続ける状況に対応できるだけの柔軟さと思考の瞬発力をつける、それは能力者にとって重要な能力でもある


「っていっても、俺もできる事をするくらいしかしてませんけどね、俺のやれることって少ないし」


「そんなことはない、君がやっていることはそうそうできる事じゃないよ」


大野が朗らかな笑みと共にそんなフォローを入れるが、実際静希がやっていることと言えば状況整理と情報収集くらいのものである


そして自分の周りに多岐にわたる技術を有している人間が多いせいで強い劣等感も感じる


人間だけでなく人外もいるのがまた悩みの種にもなるのだ


またマイナス思考のループに陥りそうなのでこれ以上考えるのはやめるが、これからの実習において静希の行動の幅を広げるのは重要だ


今は単独行動をしているが静希の本来の役割は支援と援護


陽太、明利、鏡花の三人といかに連携して上手く自分の能力を活かしていくかが今後の課題だ


その後静希達が軽く食事をとった後、シャワーを浴びてゆっくりと身体を休めていると窓ガラスに何かが連続で当たる


最初は小鳥でもぶつかってきたのかと思ったがそうではないらしい


どうやら連絡が来たようだった


窓に近づくと突然窓の周囲に白い何かが映りだす


それは紙のような物を映し出しているようで何かが書かれているのがわかる、どうやら英語のようだ


静希と大野はそれがエドモンドの能力であると即座に理解できた


今どこにいるのかは分からないが、近くにそれらしい人影が見られないことからそれなりに距離があっても能力の発動は可能らしい


「小岩さん、これ読めますか?」


「はいはい・・・えっと・・・初めて会った場所で待つ・・・E・Pよりだって」


E・P、恐らくはエドモンド・パークスの略なのだろうが、随分と分かりにくい表現の仕方をする


いや、実際の場所を書くと特定される可能性があることを考えればこういうふうに本人同士でなければ分からないように書くのは適切な処置だろう


何かの用でこちらとコンタクトを取りたいようだがその内容もある程度予想できる


しばらくすると空中に映し出された映像は消え何事もなかったように窓からは外の景色を覗くことができる


時刻は十九時、すっかり日は落ち徐々に気温も下がってきているため行動するにはもってこいだ


「そんじゃ、行きますか・・・ってそうだ・・・どうしよあれ」


静希はホテルの玄関前にいる監視を見てため息をつく


四六時中監視されているというのはいい気分ではなかったがこうなってくると相当に鬱陶しい


「行くつもりかい?一人じゃ危険なんじゃ・・・」


「でも一人じゃないと信用されませんよ、ただでさえ形式上は敵対関係にあるんですから・・・」


窓から外にいる人影を眺めながら静希はどうしたものかと思案する


いっそのことばれる覚悟でフィアに乗って移動してしまおうかとも考えるが、それをやると後々面倒なことになりそうだ


「私たちが囮になる?」


「あいつらが監視してるのは俺ですよ?二人が注意を引いても意味ないと思いますよ?」


相手が重要視している人間でないのならそもそもそれほど相手にしない、たとえ相手にしてきたとしても、静希なら聞き流しながら本丸に注意を向け続けるだろう


「じゃあ外出ってことでどこかに行く?」


「そうなるとニコラスを呼ばれるじゃないですか、またあの人の監視から抜け出すのは面倒ですよ」


ただでさえ鬱陶しい監視をこれ以上増やすことはない、どうにかしてこのホテルから抜け出せれば後はどうとでもなる


問題はあの監視の目が一体どの程度まで配置されているかだ


エドモンドの捜索に感知系統の能力者を回しているため可能性は低いが、あそこにいる人物が感知のできる能力者である場合静希がどこにいるかなど一発で分かる


仮に感知できる能力でなかった場合、表玄関と裏口、二つを見張るのは定石だ、そうなると出口はもはや空しかないように思えるが、この中で空を飛べるのは悪魔だけ、しかも静希を背負った状態で空を飛べるかは試したことがない


それに空は晴れている上に月まで出ている、目のいい人間なら空中に何かが飛んでいればすぐに気付けるだろう


八方塞がりかと頭を抱える、大野も小岩も特にこれと言って打開案は無いようだった


「マスター、一つよろしいでしょうか」


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